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悲しい嘘の連鎖「球体の蛇」by道尾秀介

2016年07月11日 | 小説レビュー
~あの頃、幼なじみの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった……。狡い嘘、幼い偽善、決して取り返すことのできないあやまち。矛盾と葛藤を抱えて生きる人間の悔恨と痛みを描く、人生の真実の物語。「BOOK」データベースより


すごく、ほのぼのとした書き出しからは想像も出来ない、「暗く重く切ない嘘」、そして、勘違いや自分勝手な思い込みから、後戻りできない袋小路に迷い込んでしまう、ミステリー小説です。

ジャンル分けとしては「ミステリー」なんですが、主人公の心や頭の中で、大どんでん返しが起こるため、ドーン!とした盛り上がりはありません。

また、「そうやったんや!」ではなく、「そうやったんか?」という、どちらにでも取れるような展開をしていくため、少しモヤモヤします。

でも、不快感があるモヤモヤではなく、登場人物がとる行動、言ってしまった言葉をとらえてみても、「そうやなぁ・・・、誰だって、きっと、そう思うやろうな」と、同情的に読んでしまいます。

クライマックスからエピローグに移るあたりで、少しホンワカとした気持ちにさせられ、「このまま終わるのかな?」と、思わせておいて、最後の5行ほどで、「むむっ!?これは!?」と、考えさせられ、最後のページをめくると、一行だけ書いてある文章に、じわ〜っと、何とも言えない余韻を残し、幕が降ります。

人は誰しも、小さな嘘やごまかしを内包して生きています。

それによって、誰かを傷つけたり、その刃で自分自身が致命的な痛みを受けるという、とても深く悲しい物語であります。

文中に『星の王子さま』の引用が多く出てきます。『星の王子さま』の内容は、あまり覚えていませんが、ものごとを「大人のいう当たり前(固定観念や思い込みからくる)」に捉えていると、本当の真実や大切なもの見失うということやったように思います。

確か、家にもあったと思うので、大人になった今、改めて読んでみたいと思います。

球体の蛇の評価ですが、色々と考えさせてもらう機会をいただいたので、
★★★3つです。
コメント
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