毎日新聞の土曜日の朝刊には、毎週『今週の本棚』という書評欄がある。その中に「なつかしい一冊」というコーナーがある。今週は脳科学者の茂木健一郎さんが選んだもので『人を動かす』(D・カーネギー著 山口博訳・創元社)だった。著者のD・カーネギーは、アメリカの作家で1936(昭和11)年に原書が出版され、日本語版は1937年に出版されロングセラーとなった。と紹介されていた。
茂木さんは、小学5年生の時にこの本をたまたま家の本棚で見つけ読んだそうだ。私は、原書ではなく「友をつくり人を動かす法」を訳し、1958(昭和33)年に初版が出た全訳版『人を動かす』で、いつどこでどういう風に手に入れたかの記憶はかすんでいるが、教師として一歩を踏み出してからずい分参考になった。退職して5年経ったとき一念発起して40年間ほど持ち続けていた本を9割方処分した。その時、どうしても処分できなかった本の中の1冊だったので茂木さんの書かれていることに心が惹かれた。
茂木さんが一番印象に残っているのが、パーティに行ったカーネギーが相手の話ばかり聞いて自分のことを一切口にしなかったら、かえって「話がうまい」と褒められたというエピソードだと書いている。私は第一章の「盗人にも五分の理をみとめる」という話。犯罪を犯したりして世間から極悪人というレッテルを貼られている人達の言動を例にあげながら、彼等自身は自分が悪いとは思わず、あくまでも自分の行為を正しいと信じている。ということを説いている。そしておよそ人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはならない。相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということをよく心得ておかねばならない。と警告している。その上に立って相手のことを理解することの大切さを強調している。職場の同僚や生徒や保護者と接していくうえでカーネギーの言葉で視野が広くなったことが多々あった。
それ故に、表紙も黄ばんで、もう手にすることもなく本棚の隅っこにあったこの本を処分することはできなかったのである。
茂木さんも、今回の原稿を書くにあたって50年ぶりに再読してなつかしさとともに、やはり名著だなと感じたそうだ。私も再読してみようかなと思った。70歳を過ぎた今、また感じ方が違うかもしれないし、今後の人生に新たなヒントを与えてくれるかもしれないという期待もある。
茂木さんは、小学5年生の時にこの本をたまたま家の本棚で見つけ読んだそうだ。私は、原書ではなく「友をつくり人を動かす法」を訳し、1958(昭和33)年に初版が出た全訳版『人を動かす』で、いつどこでどういう風に手に入れたかの記憶はかすんでいるが、教師として一歩を踏み出してからずい分参考になった。退職して5年経ったとき一念発起して40年間ほど持ち続けていた本を9割方処分した。その時、どうしても処分できなかった本の中の1冊だったので茂木さんの書かれていることに心が惹かれた。
茂木さんが一番印象に残っているのが、パーティに行ったカーネギーが相手の話ばかり聞いて自分のことを一切口にしなかったら、かえって「話がうまい」と褒められたというエピソードだと書いている。私は第一章の「盗人にも五分の理をみとめる」という話。犯罪を犯したりして世間から極悪人というレッテルを貼られている人達の言動を例にあげながら、彼等自身は自分が悪いとは思わず、あくまでも自分の行為を正しいと信じている。ということを説いている。そしておよそ人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはならない。相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということをよく心得ておかねばならない。と警告している。その上に立って相手のことを理解することの大切さを強調している。職場の同僚や生徒や保護者と接していくうえでカーネギーの言葉で視野が広くなったことが多々あった。
それ故に、表紙も黄ばんで、もう手にすることもなく本棚の隅っこにあったこの本を処分することはできなかったのである。
茂木さんも、今回の原稿を書くにあたって50年ぶりに再読してなつかしさとともに、やはり名著だなと感じたそうだ。私も再読してみようかなと思った。70歳を過ぎた今、また感じ方が違うかもしれないし、今後の人生に新たなヒントを与えてくれるかもしれないという期待もある。