暑い暑い中、全国高校野球選手権大会(夏の甲子園大会)が開催されています
我が母校、星稜高校野球部は1回戦で姿を消しました。しかし、その1回戦で対戦した相手が愛工大名電高校で、私が名古屋で鍼灸の修行をさせていただいている時に、金沢で開院するまでの3年半の間、選手の身体を施術させていただいてました。
その愛工大名電高校は2回戦も勝利して久しぶりの夏2勝をあげ、現在も躍進中です。
どちらも応援していたというのが本心かもしれません
当院では、そのような関係上、成長期の野球選手がよくスポーツ障害で来院されます。私は、この成長期のスポーツ活動をできる限り、ケガなく、痛みを早く改善、ケガを深刻化させないための予防などに力を入れています。
身体をみるスポーツは野球だけに限りませんけど
私が日頃、話を聞いたり、身体をみたりしているポイントや成長期の身体の認識について簡単に書かせていただきます。
当たり前のことが多いかもしれませんが、お付き合いください
成長期の身体は大人の身体とは違う
・小学校高学年から身体の発達が著しい。
・骨、筋腱、靱帯組織に脆弱な部分が存在。
・成長や発達が個人差が非常に大きいということ。身体の大きな選手と小さな選手が試合を行う。体重別に分かれているスポーツもある。
骨
・身長の伸びに直接関わるのは長管骨で、骨端、成長軟骨板、骨膜で成長(身長の伸び方は重要な問診事項)。
・成長に伴い、軟骨は増殖。骨によって差はあるが二次骨化中心が形成され、成長が終了し軟骨が骨化していく。
・成長軟骨板の骨端核と成長軟骨部は力学的ストレスの脆弱。繰り返しのストレスにより疲労骨折や剥離骨折に繋がる原因。
・身長増加のピークから半年ほど遅れて骨量増加がピークを迎える(このタイムラグで一時的な骨密度低下が起こるとの報告がある)。
筋・腱
・筋肉は柔軟性があるが、骨と比較して成長が遅い。
・急激に身長が増加(骨の成長)すると筋肉の柔軟性が低下し、腱を介して骨付着部に過度なストレスがかかる。
・これを繰り返すと骨端症にかかりやすくなるので、筋肉の柔軟性の維持や筋肉の緊張状態をみること、施術することは大切。
靱帯
・成長期は靱帯を傷めることよりも骨付着部に負担が大きい。
・靱帯損傷を来す場合は、かなりその部分に長期にわたりストレスがかかっている場合や、あるいは急激に大きな力に引き延ばされた状態で発症(混合する場合が多い)。
身長の増加について
・個人差は大きいが、経過については大きくなる子も、それほど伸びない子も同じ。
・最大身長増加加速度年齢(peak hight velocity age PHVA)
※身体成熟度の指標の一つ
~首都圏の日本人小児男女を対象とした身長成長速度曲線 成長区分分類では~
男子;急激に成長が始まるtake off age 10.38歳
PHVA;12.89歳
成長が終わるfinal height age;16.91歳
女子;TOA 8.34歳
PHVA;11.04歳
FHA;15.46歳
・これら身長のピークを把握することは、その周辺に起きる身体的要素の変化も予測して身体をみることができる。
・身体的要素とは、パワー系能力、バランス能力、スプリント能力等であり、PHVA時期に向上するとの報告がある。
上記を理解するだけでも大人と成長期の子ども達の身体はまったく違うものだということが理解できる。
このようなことも身体をみるための一つの情報として把握しながら、現在の身体の状況で必要なことを選手(または保護者、指導者)へ的確にアドバイスできることが大切。
成長期のスポーツ傷害の特徴
・成長期では急激に身体の変化が起きる。
・その状況の中で、個人差もありながら学年が上がるに従って練習量や強度が上がっていく。
外傷と障害
・簡単に言うと、一回の外力によって組織が損傷する状態を外傷、繰り返しの軽微な外力によって時間をかけて徐々に組織が損傷していくことを障害という。
・軽微な外力が徐々に加わり、1回の外力で組織損傷する場合もあり、一概に区別することはできない(身体観察と問診が大切になる)。
・主な外傷;骨折、脱臼、捻挫、靱帯損傷、脳震盪、肉離れなど。
・障害の代表例;肘内側上顆剥離骨折・離断性骨軟骨炎(いわゆる野球肘)、リトルリーガーズショルダー、腰椎分離症、オスグッド病、踵骨骨端症、下肢の疲労骨折など。
学校管理下のスポーツ障害
・この場合、保険の特性上、障害ではなく外傷が対象となる。
(独立行政法人 日本スポーツ振興センターのデータ H29版)
・中学において骨折が多く、中学から高校にかけて下肢外傷が多くなる。
・発生頻度は男女で差は無い。
・学年別発生頻度は、高校2年、中学2年、高校1年の順。
・部位別では、足関節、手・手関節、頭部、膝の順。
・疾患別では、骨折、捻挫、挫傷、打撲、筋腱疾患の順。
・種目別では、バスケットボール、サッカー、野球、バレーボールの順(競技人口の多いものが上位)。
身体成熟度の違いとスポーツ障害
・指導者の皆さんは工夫して練習メニューなどを考えているが、どうしても学年別の分け方でメニューが分かれていることが多い。
・PHVAの平均よりも早くピークを迎える場合を早熟型、遅く迎える場合を晩熟型という。
・(報告)晩熟型の選手が早熟型と比較して有意に障害発生率が高い。
・(報告)女性においてPHV期とPHV後に膝外転モーメントが増加しACL損傷リスクが増加する。
・個々人の身体成熟度によって発生する傷害が違うことを理解。
・身体成熟度をどう把握してトレーニングや指導を行っていくかが傷害発生リスクを減らす。
これらの統計や指標を理解することも、成長期の身体をみる時の全体的把握として大切であると感じる。
成長期のスポーツ傷害の予防
・成長期の特性を知ることで、練習やトレーニングでケガを予防するためにはどうしたら良いかの大切さが分かってくる。
・今の傷害を取り除くことに全力は尽くすが、その傷害がなぜ起きたのかを選手といっしょに考え、同じケガをしないように、何をアドバイスするかということも同じくらい重要となる。
障害予防の重要性
・原因が筋力にあるのか、動作にあるのか、またトレーニング方法や練習内容にあるのか、あるいは睡眠などの生活習慣にあるのか、競技に対する強い自尊心など心にあるのか、身体的要因、外的要因、精神的要因など様々な方面からケガの要因を推察する。
・足関節捻挫の例(発症危険因子の調査);①body mass indexが高い ②捻挫既往歴あり ③足関節背屈角度の低下 ④遠心性底屈筋力の左右差 ⑤股関節伸展筋力の低下 ⑥静的安定性の低下 ⑦star excursion balance testの内側方向の低下 などがあげられている。
・一次予防;傷害の発生する原因やリスクを改善すること。傷害を起こしていない選手が対象。
・二次予防;無症状や軽度な症状を発見し未然に進行を防ぐ、早期発見・早期治療が目的。
・三次予防;傷害を発症した選手の後遺症を残さないように治療し、再発予防のために危険因子を改善。
・理想的には、一次、二次予防で対応することが望ましく、これらの考え方による危険因子の研究や予防プログラムの実施も近年実施されるようになっている。
スポーツ団体での取り組み
・サッカー;国際サッカー連盟(FIFA)とFIFA Medical Assessment Research Centerが作成した外傷・傷害予防プログラム「FIFA11+」がある。
・バスケットボール;バスケットボール女子日本リーグ機構(WJBL)が作成したトップアスリート向けの「WJBL 外傷予防プログラム」がある。
(公財)日本バスケットボール協会が作成した「ジュニア向け外傷予防プログラム」がある。
中学校バスケ選手の下肢外傷予防プログラムを実施し、足関節捻挫発生率の減少効果を示した報告もある。
・野球;日本臨床スポーツ医学会では「青少年の野球障害に対する提言」を示している。
〈練習日数・時間〉
小学生・・・週3回以内・一日2時間を超えない
中学・高校生・・・週1日以上の休養日をとる
〈全力投球〉
小学生・・・一日50球以内・試合を含め週200球以内
中学生・・・一日70球以内・試合を含め週350球以内
高校生・・・一日100球以内・試合を含め週500球以内
学童少年野球選手の肘を対象にした投球障害予防プログラムの報告では、野球の肘障害で最も多い内側型肘障害の発生率減少が報告。
スポーツ人口の多い種目を紹介。しかし、オリンピック種目など、競技人口の少ないスポーツでも傷害予防プログラムが作成されている。
これからの競技を盛り上げていく素晴らしい能力を持つ成長期にある選手たちを、身体や心をどう守りながら、育てていくかが近年になり重要視されてきている。
成長期のスポーツ選手の身体をみるということ
私は鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師という立場でスポーツ選手の身体と心をみながら施術をします。どんな立場であっても、成長期の子どもの身体がどう変化していくのか、また、そこには個人差があることを全体的に理解しながら症状をみていくことが大切だと感じています。
骨や筋・腱損傷状況を画像で検査することはできないので、適切なスポーツ整形外科医への受診も重要です。
そのような中で、関節を動かし、筋の状態をみて、身体全体のバランスをみて身体観察し、できればフォームなどをみて、症状の原因を探っていきます。
問診では、そこに至った経緯を聴取して、身体症状を発症するその選手の物語からも原因を確認していきます。
話にも出てきました「予防」という観点ですが、痛み等がとれたから、治ったからそれでヨシではなく、なぜその痛みが発症したのかを考え、理解し、痛みなどを発症させないように取り組んでいくことが重要です
大前提は、大人の身体と子どもの身体は違うものだということを理解し施術しながら、様々な判断をしていくことが重要であると考えます。
若い選手たちが、そのスポーツを楽しく、いつまでも続けていけるように、今、この苦痛の症状を出来る限り早めに改善できればと思い、私も精進しております。
長くなりましたが、最後までお読みいただき、誠にありがとうございます
コロコロが始まってから ほとんどグラウンドに見に行ってなく
仲良しだった常連さんたちとも疎遠になってしまいました…
ところで先生は今、星稜のトレーナー活動はやっておられないのですか?
帯同の記事も上がってないようなので、、(ToT)
田中監督率いる新生星稜も応援したいのに 状況が見えず
もやもやしています
コメントありがとうございます。
お久しぶりです。
私は2019年夏の甲子園大会以降、いろいろありましてトレーナー活動を休止しておりました。
先日、久しぶりにグランドに顔を出し、これから少しずつ再開していこうかなと思っています。
只今、高校野球部は山下監督代行がまだ指揮をとっている状況です。どのようになるかは分かりませんが、私は今後、また星稜高校野球部を見守っていきたいと思います。
コロン星人がまた数を増やしておりますが、まったくもってコロン星人は風邪ウイルスの一種ですから今後、落ち着いてくと思います。
また応援よろしくお願いいたします。