それでは、2回戦を振り返っていきます。この試合もまた高校野球の歴史に残る試合となりました
第100回大会は初日の第1試合に勝利(大分県代表 藤蔭高校)して、そこから次の試合までは1週間という開きができます。
気持ちも身体も調整していかなければならないので、監督はじめスタッフもいろいろと工夫をされていました。
トレーナーサポート編で書かせていただきますが、私は試合後二日間選手をサポートして、一日だけ金沢へ帰らせていただき、再び大阪の宿舎に帰ってくるという、いつもながらの弾丸の予定でサポートをさせていただきました。
今年の夏もさらに気温が暑かった 他校の選手がよく足の痙攣を発症し、試合が中断しているのをテレビで観ていて、身体とくに足の疲労だけはしっかり除去するように心がけていました・・・
(左)試合前の甲子園 (右)甲子園へ入る前の練習風景
8月12日 第3試合(大会第8日目) 済 美(愛媛) 星 稜
試合時間:2時間55分 観客数:約42000人
一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 十一 十二 十三 合 計
星 稜 5 0 1 0 1 0 0 0 2 0 0 0 2 11
済 美 0 0 1 0 0 0 0 8 0 0 0 0 4 13
2018/8/12 星稜 vs 済美 ダイジェスト
信じられない! 済美対星稜 サヨナラ逆転満塁ホームラン(史上初)12回裏からノーカット
この日も茹だる様な暑さの日でした。試合も第3試合と一日の最高温度を記録する時間帯にあたります。
そんな日、星稜高校野球部はまたしても高校野球史に残る試合を展開しました。できれば勝って名を残したいところではありましたが、今回も負けて名勝負として名を残しました。
でもそれは、甲子園という場で、3700を超える全国の高校野球部の頂点を目指すためしのぎを削ってきた、両チームの努力の結晶であり、そこに様々な条件が加わり、集中し、熟成され、ドラマがつくられるのだと私は思っています。
そこに関係した全ての人が次へのステップ、成長への糧として、このような体験が生まれるのではないかと・・・
こんな球場が深く大きく広くどよめく雰囲気を味わったのは、規模こそ違いますが、2014年の夏(第96回大会)、石川県立野球場の決勝戦で感じて以来の空気だったと思います。9回表まで小松大谷高校に8-0で負けているところからの、まさかの9回裏9点をとっての逆転サヨナラゲーム・・・選手たちが作りだす無限の可能性・・・それに惹かれてここまでトレーナー活動ができるというのも一つの真実のように感じます。
さて、どこうをどう切り取ったら良いか、いろんな要素が詰まった試合でした。初回の攻防を見た全ての人が、あの延長13回の光景を想像もしなかっただろうと思います。
星稜は初回、相手のミスも絡め相手、好投手の山口君から5点を先制します。私はこの回の攻撃が素晴らしいと感じたことは、全ての打者が前夜に行ったミーティングしっかり実践していたということです。
監督、コーチの話の内容を理解し、落とし込み、それを行動で実践する。それは昨日今日という世界ではなく、今までそのような姿勢で野球に取り組んできた成果が出たのだと思いました。私は連打がどうのこうの、大量点がどうのではなく、その点に驚嘆し、チーム星稜の素晴らしさを感じました。
そして、このいい流れ、いい伝統は後輩がしっかり引き継いでいくわけです・・・
星稜は5回までの7点を挙げますが、終盤は済美のペースになりました。その大きな要素は7点を取られながら、淡々とした表情で自分の投球ペースを乱さずにゲームを作り上げた済美の山口投手の力が大きいかなと思いました。ストレートも後半になっても球威は衰えずスタミナを感じましたし、スライダーとチェンジアップを絡めて、星稜打線を後半から延長にかけてタイミングをずらせ要所をおさえていました。
打者としてデッドボールに当たりながらも表情を変えず、チームメイトを不安がらせないように熱のこもった投球をする山口君を大いに称えたいと思います
あきらめない姿勢は両校ともに素晴らしいものがありました。
星稜の9回の同点劇。鳥肌が立ちました1年生の内山君も足を痙攣しながら集中力でよくヒットを打ちました。南保君が繋いで、竹谷君と鯰田君の3年生トリオで同点に追いつきました。この頑張りを下級生が見ていないわけがな~いいい伝統を残してくれました。
攻撃面では、中盤のあと一本、9回のあと一本、延長13回のあと一本、勝ち進んでいくチームと言うのは、この”あと一つ”ができるチームなのかなと私は感じました。
先発はエースの奥川君(打者16人 41球)。
立ち上がりは上々、ストレートはやや高いものの、スライダーのキレはありました。1回の大量点と打線の好調を考えると、ほぼ勝利は確実と思っていましたが、3回途中から奥川君がしきりに足を気にし始めたのが分かりました。ま・さ・か・・・
5回まで何とか投げますが、やはり足の痙攣で5回でマウンドを降りました。トレーナーとしては反省しきりです。
二番手は、佐藤君(打者7人 27球)。
佐藤君は、途中からアンダースローに変わった投手。真面目によく練習していました。5回、6回をほぼ完璧に抑え、その仕事をやってのけました。大きな自信になったと思います。奥川君とはガラッと雰囲気も球速も変わった投手。うまく相手のタイミングを外し手玉にとっていました。
三番手は、星稜の山口君(打者3人、11球)。
彼もいろんな紆余曲折があり、投球について悩んだりした日も多かったと思います。しかし、投球数、投球回は少ないものの、これまでの自身の集大成のピッチングやってくれたと思います。そして、佐藤君とともに3年生の投手陣が後輩エースの後をきっちり繋げてくれました。
四番手は、竹谷君(打者7人、20球)
監督の談話にもあった通り、竹谷君を投げさせるのはプランにあったよう。前日の動きも悪くなかっただけに、マウンドに上がってからの力の抜けたような、軸が定まっていないようなすっぽ抜ける球が多く感じました。そんな球を相手打線が逃すはずもなく、4得点を奪われました。
後で聞くと彼も足が痙攣していたようで、トレーナーとしてはどんどん落ち込んでいくのでした。
五番手は、寺西君(打者4人、15球)
もう失点が許されない中、そして、相手がググーッと流れを引き寄せる中でのリリーフは相当プレッシャーがあったのではないでしょうか。だから余計にここので登板は彼にとって財産となるのだと思います。いい球を投げ三振もとりました。1失点はしましたが、いけるかなと思った矢先、相手打者で本日好調だった政吉君に投じた球・・・高めに浮き甘かった、そしてそのストレートを予測してのスイング。一塁ベンチ上から見てると、あの角度が素晴らしい弧を描くイヤな角度でレフト方向へ飛んでいきました。4失点。
寺西君の心の揺れ、力み、その隙を政吉君が逃さなかった。彼は延長13回にもセーフティーバントを決めてドラマの下地を作りました。
六番手は、寺沢君(打者18人、77球)
星稜としては総力戦。最後の砦である寺沢君。春のセンバツ大会 準々決勝( 三重高校)で、終盤同点に追いついた9回、相手に得点され、もう勝つためには抑えなくてはいけない場面でマウンドを託されたのが彼。その場面は満塁。そこで加点されはしましたが投げ切りました。第90回の春から精神的に一番大きく成長したのは寺沢君ではないかと私は思っていました。
9回からマウンドを任され、この試合では一番長く投球することになりました。そして、もっとも熱い展開となりました。特に延長12回、1アウト満塁からの2者連続三振のシーンは、今見ても涙が出てくるほど胸が熱くなり、興奮します。成長した姿を遺憾なく見せてくれました。
そして、野球の神様は彼にもう一つ大きな試練を与えました。
13回よりタイブレークに入り、星稜は表に2点を追加し盛り上がります。その裏、ノーアウト満塁。ここで済美の中でも要注意人物の筆頭である矢野君に回ってくるという巡り逢わせ。
そして、逆転サヨナラ満塁ホームラン・・・ただただ・・・ただただ・・・
この刺激がもしかして令和最初の夏の戦いに繋がったのかもしれません。寺沢君の鬼神に満ちた投球は忘れることはできません
相手の済美の山口君は13回を完投し、打者58人に184球を投じました。今後の高校野球では、このような試合は見られなくなります。星稜高校の投手リレーは時代を読んだものだったのかもしれません。
守備でも、ショートの内山君(1年生)、セカンド山本君(2年生)が難しい打球にも軽快に対応していました。ここも二人とも足に痙攣がある中でプレーしていたということを聞き、トレーナーとしては追い打ちをかけて落ち込む材料となりました
友人たちがライトアルプススタンドやポール際のスタンドで応援してくれてました。
そう、史上初の満塁弾は甲子園の浜風の影響もあり、大きく押し戻され、ライトポールに当たったのです。その周辺にいた友人や後輩や先輩は、あの音が頭から離れないと話しておりました。
この音をかき消すためには、後輩たちが頑張るしかありませ~ん
この試合は本当に、いろんな示唆を与えてくれるものでした。
試合後、宿舎に帰ってからの最後のミーティングでも2年生をはじめ下級生が本当に悔しがっている姿がありました。3年生はこれで最後なので、そりゃ~悔しいでしょうが、後輩たちがこれだけ悔しがる姿は、やはりいいチームだったんだな~としみじみ思うところでした。
その日の夜、太陽の下、試合を観ていて疲れてはいるのですが、久しぶりに寝ることができない自分がいました。翌日は、車で金沢へ帰らないといけないのに・・・と思うのですが、やはりトレーナーとして足の痙攣を防げなかった思いが悔しくて悔しく、たまりませんでした
そんな思いも込めまして、次回はトレーナ活動 サポート編、さらに練習編&番外編を書いて、第100回大会の回想は終わる予定です。
8月12日 大会第8日目の他の試合結果
第1試合 : 二松学舎 5-2 広 陵
第2試合 : 浦和学院 9-0 仙台育英
第4試合 : 慶 応 6-12 高知商業
最後までお読みいただき、ありがとうございます
二葉鍼灸療院(金沢)