二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

鍼灸師 田中良和 ~新たなる旅立ち~ 師匠ってなんだ?!を辿る物語 ☆第6話 鍼灸臨床の姿勢☆

2022年08月23日 | 鍼灸

 お盆が過ぎ、夕方や早朝の風に少し秋の匂いがうっすら感じられるこの頃です・・・が、まだまだ暑い日は続いております

 皆様、体調はいかがでしょうか

 

 このシリーズ、少し間が空きましたが書き続けていきたいと思います。

 今回は、黒野保三先生の鍼灸臨床に対する姿勢です。

 自分がここで師匠である黒野先生の臨床姿勢を話すには表面しか見えていない面が多くありますが、私なりに修行時代に感じたことや、その中で見聞きしたことを書籍等も参考にしながら書いておきたいと思います。師匠は奥が深すぎますもので

 先生はよく「真実の探求」という言葉を言われたり、書かれたりしています。

 俳句ではありませんが、黒野先生の鍼灸に対する臨床姿勢はこの言葉に尽くされているのかなとも思います。

 生体制御療法という治療方法を確立されはしましたが、これが全て、これが正解ではなく、鍼灸という摩訶不思議な効果をもたらう医療技術の真実を突き詰めるため、50年以上にもわたり臨床研究に打ち込まれてきました。

 患者さんのため、病める人たちのためであることはもちろんですが、鍼灸業界全体がどうあるべきか、どうなっていくことが鍼灸が医療として活かされていくことなのか、そのためには鍼灸師や業界全体がどうあるべきか、ということを真剣に取り組まれてきました。

 業界全体というと臨床姿勢とは話が離れるのかもしれませんが、業界全体がより良い方向へ進んでこそ、鍼灸師・鍼灸院の位置づけや国民への認知度、また他医療職種の皆様へも理解や認識が深まると考えられ(と思いますが)、気力を込めて活動されていました。

 写真は、(社)全日本鍼灸学会(現(公社)全日本鍼灸学会)の法人設立総会および法人設立記念学術大会の写真です。

 黒野先生は、鍼灸学会設立・法人設立に向けて陰に日向に獅子奮迅のご活躍で、それも臨床の傍ら尽力されました。

 どうしても話がこっちに行ってしまうので、軌道を戻しまし臨床姿勢の話をいたします。

鍼灸臨床がきっかけ

 臨床家なら当然かと思いますが、臨床研究を始めるきっかけはやはり臨床です。

 鍼をうつことで症状が改善され、摩訶不思議な現象が起こったこと、同じような効果が多くみられた時に、そこから、「なぜ良くなったのか」「この効果のメカニズムは何なのか」ということを考察されます。
 普通は文献などを調べて、”そうなのか~”ですよね。でも、その鍼の打ち方やその文献の記載は実際に自分が行っている鍼と同様なものなのかという部分など、さらに”どうしてだ??!!”と思考されるわけです。

基礎研究から鍼の効果メカニズムを

 そこから自分自身でマウスなどを使っての基礎研究の必要性を感じて研究にに入るなどは、相当な志がないと出来ないことです。

 そして繋がりも。

 先生は、全日本鍼灸学会の賞の名称にもされている初代会長の高木健太郎先生(名古屋大学・名古屋市立大学名誉教授 生理学者)の鞄持ちをされていました。

 そこから名市大の解剖学教室の渡 仲三先生との繋がり、また、痛みやポリモーダル受容器の研究で多くの著書を出されている名古屋大学環境医学研究所の熊沢孝朗先生など、多くの医師や研究者と繋がり、鍼灸の基礎研究を進められています。

 その情熱と探究心は、すごいという一言では語れませんし、私は金沢で開院して今年で24年となりましたが、先生の人生を100mとすると1mm進んだかどうか・・・ここを起点として、気合いを入れ直し、私も人生をすすんで行きたいなと思います。

鍼灸臨床で検証・集積

 臨床での疑問から基礎研究と来ました。

 ここまで得た知見から、今度は再度、臨床に戻し、臨床において研究や症例を積み重ねていかれます。

 その成果または結果は、全日本鍼灸学会や自律神経学会等で報告され論文として残す作業もされます。

 この臨床の疑問から始まり、臨床研究にかえってきた結果をまとめる作業をされ、現在、私や東洋医学研究所®グループが患者さんへの基本的鍼灸治療として行う生体制御療法があります。

 ここには、さらに鍼の深さや、使用する経穴の位置(黒野式全身調整基本穴)併用治療などの研究も加えられ、生体の統合的制御機構を効果的に活性化する治療方法が構成されてきました。簡単に言ってしまうと全て研究された結果をまとめて一つの体系とされています。

鍼灸診療の真髄

鍼灸医学の第一義:外界や内面の影響により生体に歪みが生じた時、それを鍼灸治療により調整して生体の自己統御により恒常性を保たせること。古典で言う「未だ病まざる病を医す」です。

鍼灸医学の第二義:一端疾病に侵された時に治癒させるか、それ以上悪化さあせないこと、それを生活習慣病と言われる疾病から合併症を引き起こさせない鍼灸治療を行うこと。

鍼灸医学の第三義:外科領域においては術後の回復、入院や重い病に侵された後の社会復帰を目的とした鍼灸治療。

 「これら等の疾病や状態をいかに診断し、いかに治療計画を立て、それに基づいていかに治療を行い、その結果どのような経過を経て病が改善されたかを実証医学的に証明していかなければならない。その手続きが的確に行われていない鍼灸診療の結果は、鍼灸治療の正しい有効性とは認められない」。とも話されています。

 やった、効いた、治った、患者さんにとってはそれで良いことかもしれません。でもこの技術を後世に残し、日本での正統な医療としての評価を集積していかなければいけません。ここが先生が重視されてきたことです。それが「今」約1400年続いている伝統医学である鍼灸を扱う鍼灸師、鍼灸業界にとって重要なことなのかなとも感じます。

 また、技術や評価というものだけではなく、鍼灸を行う者の心構えなどもまとめられています。

1.自然を崇拝し、人と自然を一元論的に把握するとともに、信仰心と宗教的感覚を持つことができる精神を養わなければならない。

2.情意学(人間学)を学び、実践経験を積んだ人生哲学を有し、実証医学的研究や全人的診療が行える自然科学哲学者でなければならない。

3.患者の気持ちを受け入れ、病気・生活・家族・社会活動・経済に至るまで、患者に適切な指導ができる心理学者でなければならない。

 以上、三点を実践することができれば、複雑多岐にわたる鍼灸診療の真髄を理解することができ、かつ、技術や技能を容易に体得でき、高度な鍼灸診療を行えるようになると話されています。

 さらに、

※新しい発見のアンテナを意識し、臨床鍼灸の研究に取り組む姿勢と近代医学の先端知識を常時取入れ応用する。

 そうすれば診療効は一層深まることだろうとも言われています。

 先生は、鍼灸診療を行うためには、東洋の自然思想および東洋哲学の理論に基づく人間性の豊かさが必然的に要求されると考えられていました。このような人間性の豊かさを保つための三項目が上記となります。

 

 翻って自分の鍼灸臨床を考えると、先生のところ(東洋医学研究所®)で10年間住込みで修業をさせていただきましたが、欠落している部分、忘れていた部分、実践できていない多くの部分をこのブログを書くことによって再認識できたなと感じています。

 師匠を持つということは、自分がこれでいい、こんなもんでいいと限界をつくり、また妥協してしまう弱い心を打ち砕けることにあることも大きいと思います。
 師匠とお会いするといつも感じていましたが、91歳で旅立たれるまで進化、成長されていましたから、追いつけることが出来なかったわけです。笑 それほど無限に鍼灸を、人生を探求されていたということでしょうか

 鍼灸界には様々な流派がありますし、流派とならなくても、自分の研究会を立ち上げてやっているところも無数あります。
 それはそれで悪いことではないですし、まとまっていないように見えますが、鍼灸の効果や価値の可能性がまだまだ多くあるのではないかと私は理解しています。これでなきゃいけない!というものは今の所ありません。

 しかし、国民に鍼灸が理解され、認知され、広まっていくためにはエビデンスや実証医学的に証明された、理解しやすく効果のある鍼灸の側面を打ち立てる必要もあるのかと思います。いわゆる現代医学でいうところの標準治療的なものも必要なのかもしれません。

 

 長くなりましたが、本日より、自分の鍼灸臨床の中で、「なぜそうなるの」「なぜ上手くいかないの」という部分にアンテナを張り巡らし、より正確で効果のある鍼灸の真実の探求をしていきたいと思います。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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