二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

日本鍼灸師会青年部北陸ブロック合同学術研修会 参加②

2010年03月29日 | 鍼灸
さてパート①に引き続きまして、富山県で開催された学術研修会の続きを書きたいと思います。

講演2では、東京で開業されている(確か東京だったと思いますが…)、杉山 勲 先生(杉山鍼療院 院長)が「今、何を為すべきか」という演題で講演して頂きました。先生は経絡治療をされているわけですが、これまでの経験から、鍼灸臨床を志し開業したての鍼灸師、あるいは、学校を卒業したばかりの鍼灸師が、この素晴らしい仕事を業として、成り立たせて行くには「今」何をしなければいけないか、という内容のお話でした。


 講師の 杉山 勲 先生

経絡治療とは、脈診を中心として、腹、皮膚などあらゆる患者の情報を観察して、それを陰陽五行説にあてはめ治療方法を探っていく治療です。でも、これが全てかというと違うんですよね。実は大家と言われる先生方はしっかりと筋肉の圧痛や硬結を診ています。理論を展開する場合、ここの局所的な部分は省いていることが多いので、実は形だけ真似しても、なかなか良好な効果が現れないんですよね。

酔耀会では、いつもそんな話題になるんですよ。実は、大家の先生方が残した書籍には、治療効果を出す秘訣は隠されているんではないかってね。

そんな中、話の冒頭では、今の日本の鍼灸界は、二重構造をなしている。と話されていました。理想論と現実論がかけ離れているということです。理想論を唱えるだけの学会や研究団体、その内容と、技術の修得が追い着かず日々苦闘する臨床現場という現実論が混在しているのが現状であると。確かに一面はそうかもしれませんね。

しかし、理想なくして現実に現象として形にはなりません。また理想ばかり唱えていても、それを実践し、向上する信念や情熱がないと、それも現実には形になりません。理想があり、臨床の現場で遭遇する、日々の現象を注視し、自分のできる技術を生かし、そこに反省を重ね、成長していく。そして、その成長が理想への階段を一歩一歩登っていくことになるのだと思いますね。批判だけでは何も生まれませんね。

「鍼灸医学は気の動きを対象にしている」とも話されていました。だれも電気を見たことがないのに、人々の生活には今や電気は欠かせないように、人間を動かすのに「気」というものは存在すると思います。しかし、患者さまの立場としては、何でもいいから苦痛を取り除いて欲しいわけですが、鍼灸師側が説明する際には、しっかり現代医学的用語を中心として、患者さまに納得して、理解して頂けるように説明しなければいけません。
確かに治療する際は「気」というものは重要ですが、患者さまとのコミュニケーションの中では、バランスが大切なのです。ここが鍼灸師に欠けてる点と言えば、そうなのかもしれません。ですから、自分たちだけの研究会、勉強会だけで固まっているのではなく、学会に参加し、さらには、西洋医学の知識を取り入れ、いろいろな引き出しを持つことが大切なのだと感じます。現代の最先端医学は東洋医学に繋がるところや、東洋医学の考え方と共鳴しあう所もあるんですよね。

東洋医学では前述したように「気」を重要視しています。人間が健康で活発に活動するには、細胞中にあるミトコンドリアという部分でのエネルギー生産、熱生産が、重要なカギを握ります。このミトコンドリアは、糖質から、あるいは脂質を利用したエネルギー系です。エネルギーは、質量のある物質(形がある)の反応により生まれるわけですが、そこから生まれるエネルギー、体を動かす原動力であるエネルギー(形なく、目に見えない)は実は捉えられないのです。

まあ、そんなところにも、最先端科学と東洋医学の共通点、共鳴点なんですな~

話を元に戻して、

偏らずにいろいろ勉強せよということですね。

先生は、長年、経絡治療をしてきて、大家から教えて頂ける治療方法は、それなりに効果はあるのですが、いやらしい話、それだけでご飯を食べていけるかというと…そんな甘いものじゃない。だったらどうしたらいいか。ということで、もう一度、鍼灸の古典を紐解き、勉強し直したところ、「まず、患者の表面に現れている苦痛を取り除くことが大切なんだ」ということで、陽経治療を編み出しました。
身体には陰と陽があり、自然界で言うと、昼が陽で夜が陰、男が陽で女が陰、夏が陽で冬が陰、身体にもそれぞれ陰と陽があるというふうに考えます。経穴や流注(ルチュウ:経穴の繋がり)にも陰と陽があり、陰経は”臓””奥”、陽経は”腑””表面”に属します。
そこで、この陽経に属する経穴の反応点に施術することで、治療効果が一気に向上して、年間の新患数が2~3倍に増加したということでした。

この陽経治療というのは、主に筋筋膜性の痛みや痙攣などを主に行う治療であり、鍼灸師のレベルからいくと下工の治療にあたり、この下工の技を身につけることが、この仕事をまず業となし、そして鍼灸治療の上工を目指すためには必要な要素であるということでした。

下工・中工・上工とは、鍼灸の古典に書いてあるところの鍼灸師のレベルです。

下工とは、表面に現れている症状(ことに痛みなど)を、圧痛や硬結などを検出することのより治療点とし、痛みを取り除く技術を持っているレベル。
中工とは、下工の技術にプラス、その病や痛みが、どこの異常が原因で発症しているのかを、患者の身体情報を駆使して、その病を鑑別しその根本から治療できる診断能力と技術を持つレベル。
上工とは、病が身体に現れてない段階でそれを察知する能力がある。また、病を発症する前にそれを予防する方法(養生法)に長けていて、病を発症させない身体づくりを実現できる。また、患者が来院した時には、脈診を中心とした、身体所見で何も聞かずとも、その人の病の所在を把握することができ、病を根本から治すことができる能力を持つ、鍼灸師としては最高レベル。

簡単に言うと、こんなところですかね。

また、杉山先生は、自分の今の技量を知り、その技量の中での患者を診察する枠組み(基準)を明確に意識しておかなければ、間違いをおかすもとであり、患者を治癒に向かわすことができないと言われていました。大事なことですね。

自分のレベルにおける患者の適応と、鍼灸治療が患者の病に対し適応であるか、そのようなことを常に意識し自覚することは、患者さまのためにも、鍼灸師自身のためにも大切です。

最後の30分ほどは、先生の陽経治療の実技を見せて頂きました。




 実技の様子

最後にレジメより、「理想論を語ることは別に悪いことではないが、そこに至るまでの道筋を言うことの方がもっと大切である。理想論だけ述べて、道筋を何も説明しなかったことが、多くの流派に分かれていく原因にもなってきた。
正しい鍼灸術を守るためには、必ず全体の枠組みを知った上で、今の自分がどんな位置にあるのか、また自分のやっている事がどんな意味を持っているのか、その事を考えながら臨床に当たることが必要ではないかと思う」

最近、わたくしは忙しく活動させて頂いています。これからも続きそうです…
今回の講習会だけではありませんが、いつも、その時その時で思うことは、「常に勉強だな~」ということ。

「今」自分に与えられたことを、一つ一つ、楽しみながら、心を込めながら、こなしていくのが、自分の現在の使命かな~なんて思うのでした。

毎日、勉強じゃ~ 

二葉鍼灸療院 田中良和
コメント
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