Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

官邸前デモという「直接行動」

2012-10-30 | Weblog
6月29日(写真)に行ったきり「官邸前」で行われている毎週金曜日夕方の反原発デモには出ていないが、その場に参加する人の数が少なくなったとは聞く。地味というか、さびれたというか、一時は二十万人が集まったとは思えない様子だと。新作『星の息子』には、その「さびれたデモ」のシーンがあるのだが、「原発反対」「子供を守れ」と、原発はここにあるわけじゃないのに、総理大臣の、しかも(場合によっては留守かもしれない)家に向かって訴えることに、虚しさを覚える人が多くいても仕方がないと思う。劇中、ツイッターを利用して素性を知られぬままにデモの指揮をする人物が出てくるのだが、そういう、「リーダー」の顔が見えない、見えなくて構わないと考えられることの多い時代だからこそ、「匿名性の高い指揮者」の存在を出すことにもリアリティがあると思っている。……「直接行動」とは何だろう、と思う。デモを「直接行動」と呼ぶ人もいる。そうでない人もいる。確かに官邸前のデモは「直接」を求める人には食い足りないだろう。例えば、沖縄で、普天間のゲート前に行けば、今日にも牛歩運転で実質一時間ゲートへの車輌進入を阻止できたり、高江に行けば、オスプレイパッドを建設しようとする防衛職員や業者を直接的に止めたり、確かにより「直接的」な行動をすることができる。しかし「直接」であるにせよ、それだけでは相手を「完全に止める」ことはなかなか困難だ。……ともあれ、「より直接的な行動」を求める人は沖縄に行った方がいい、ということではない。もちろん一人でも多くの人に沖縄の反基地運動の支援に行ってほしいが、本来の意味での「直接」の成否は、個々の人間が、それぞれの自分の人生の現場に於いて、もっともその人の「芯」に触れる部分に響いた行動ができているかどうかだ、とも思うからだ。結局は、自分の現場は自分で持て、ということでしかないような気がする。自分自身に働き掛ける。直接スイッチを押していく。自分に対して有効なスイッチと他者に対してのそれが、同一であるとは限らない。表現をする者は、そうした操作のオーソリティーであるべきだと考える人もいるだろう。たぶんそう志すことは間違ってはいない。だが、なかなかそうもいかない。自分の現場だからこそ、転げ回って、どんなに泥を被ってでも、見つけなければならないものがあるはずだ。それはほんとうに見つかっただろうか。それがなければ、どこか遠くに行って、「その場所では直接的な行動ができた」などと安易に言ってはいけないし、「これは自分の人生だから間違いなく直接の自分自身のアクション」とも限らないような気がするからだ。何ごとも無駄弾ではないかも知れないが、自分の主体的な営為と思っていたことが、実は知らず知らずの間に匿名性の高い指揮者の誘導に従っていただけだ、ということだってあり得るからだ。「誰にでもできる」ことの「直接姓」と、「その人にしかできない」ことの「直接姓」と、両方がある。それぞれに重要性がある。それぞれに救われることもあるし、場合によってはそれぞれに裏切られる。
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東北での「SHINSAIリーディング」

2012-10-30 | Weblog
2012年3月11日にニューヨークを中心に米70ヵ所を越える地域で開催された、「SHINSAI Theaters for Japan」。ニューヨークで東日本大震災の報に触れた演劇人たちが、互いに声をかけあって立ち上げた、短編戯曲のドラマリーディング企画だった。それに応えて、同企画に提供された日米の劇作家の作品を全て日本語でドラマリーディング上演した8月5日、座高円寺での「SHINSAI Theaters for Japan in Tokyo」。そして11月4日、劇作家協会東北支部によって、盛岡劇場タウンホールで、「3.11を越えて、戯曲リーディング」として、そのいくつかを選んで上演することになった。当日は劇作家協会東北支部による「戯曲大会」の2日目であり、前日には全国イベント「劇王」の東北での審査会、岩手芸術祭戯曲部門入賞作の発表およびリーディングも行われる。……私も参加するつもりだったが、とてもその余裕がない。盛会を祈っている。以下が、その内容である。
写真は、8月5日「SHINSAI Theaters for Japan in Tokyo」フィナーレ。東北からくらもちひろゆき、大信ペリカン両氏も参加している。

11月4日プログラム……「SHINSAI Theaters for Japan」に感謝して
1.「はっさく」(抜粋)
作=石原 燃 出演=トラブルカフェシアター(岩手)
2.「北西の風」
作=篠原久美子 出演=劇団ユニットラビッツ(福島)
3.「血の問題」
作=坂手洋二 出演=沼山華子 えとまさる(青森)
4.「子は人の父」
作=フィリップ・カン・ゴタンダ 訳=吉原豊司 出演=なかじょうのぶ(宮城)
5.「日本流エチケットの手引き」
作=ダグ・ライト 訳=常田景子 出演=劇団ゼミナール(岩手)
6.「さようなら」(抜粋) 
作=平田オリザ 出演=劇団プロデュースチームウィルパワー(秋田)
〈ポストパフォーマンストーク「震災支援と演劇」〉
震災後に作られた演劇は、どのように変わったのか? それとも変わっていないのか? そして、震災支援の中での演劇の役割は? あるいは、支援される側の演劇人の思いは? 被災地からのそれぞれの距離感を考える。出演=篠原久美子 はせひろいち 高村明彦 他、各県代表 司会=くらもちひろゆき
問い合わせ先 劇作家協会東北支部 くらもち
MAIL: abusann@fa2.so-net.ne.jp
http://www.jpwa.org/main/activity/region/66-gekiou-x/177-touhoku
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