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Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

古代の人間は、岩盤に描いた絵がゆらめく炎に照らし出されると、生き物のように見えると知っていた

2012-10-26 | Weblog
洞窟の壁画がアニメーションのようになることが発見されたという。
フランスの研究者の最新の研究によると、フランスの洞窟壁画が、連続した動きのある絵であることが判明したのだ。
たとえばフランスのショーヴェ洞窟の壁画で、パイソンのような動物が描かれているが、走っていることを示すかのように8本の脚が描かれている。
脚が残像のようになっているのだ。
一つの絵にいくつもの動物を描いている場合、たいまつの炎を動かすことで、動いているように見せる技術も使っていた可能性がある。

『屋根裏』(ハヤカワ演劇文庫)のワンシーンでの、私の仮説は的中していた!

以下のサイトで見られます。(動画にもしてある)
http://maash.jp/archives/15921

    ……………………………………………………     

   
        兄、呼びかける。

兄 おおーい。

        その声が反響する。
        やがてそれも消える。
        鍾乳洞のように水滴がしたたる音が残る。
        ライターを翳してみる、兄。

兄 向こうには何がある。
帽子の男 さあ。

        兄、闇の奥に足を踏み入れ、姿を消す。
        やがて兄の声がする。

兄の声 ……誰だ。……隠れるな。出てこい。
      
        空間にライターを翳す兄、舞台前に出てくる。

兄 (見つめて)みんな絵だ……。壁画か。
帽子の男 人類が最初に落書きをしたのは、洞窟だと言われています。
兄 ……。
帽子の男 有史以来、一度も太陽に触れたことのない洞窟です。

        ライターの炎が風に煽られ、影が揺れている。

兄 馬にマンモス、トナカイ、クマ……。生きているようだ。
帽子の男 古代の人間は、岩盤に描いた絵がゆらめく炎に照らし出されると、生き物のように見えると知っていました。

        兄、帽子の男を見ている。

帽子の男 人は刻みつけるんです。自分が生きていたしるしを。
兄 君は誰だ。
帽子の男 ……。
兄 絵か。
帽子の男 壁に描いてあるのは、絵ばかりではありません。

        兄、壁の一画に刻まれているものを見つける。

兄  (読む)自分の意志で一人でいることを選びとった一日は、流されて過ごす一年の長さに等しい。
帽子の男 ……それは。
兄 弟だ。弟が高校の時、文集に書いた。
帽子の男 あなたも描いてみればいい。
兄 ……。
帽子の男 失くしたものがあれば、壁に拡げて。
兄 ……。
         
        溶暗。
コメント
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