サ カ タ の ブ ロ グ 

やぁ、みんな。サカタだよ。

あさ

2016年07月01日 | サカタだよ
あさ、鳥の声で目覚めると、なんだ休みじゃないのか……と思うことが、だいたい週に5回ある。
6回のこともあれば、たまに7回のこともある。そんなときは、どうして働いているんだろう? と
ベッドの中でしばらく自問自答する。執事がブレックファストを用意するまで、ほんの短い間だ。



ときには寝室のバルコニーで木漏れ日を浴びながら、考えごとを続けることもある。休日を返上
してまで働くことに、何か意味があるのだろうか。もちろん、仕事をしなければ退屈してしまうこと
なら十分わかっている。だからこそ、雑誌の編集という手間ばかり多くて実入りの少ない職業を
わざわざ選んでもう20年も続けているのだ。



めずらしく朝食の用意が遅れているようだ。いつもなら、目覚めて5分もしないうちにコーヒー
と紅茶ぐらいは執事かメイドが寝室に届けにくる。その日によってコーヒーを飲むか、あるいは
紅茶にするか神様にもわからないから、どちらも用意するのが当家のしきたりだ……そうそう、
コーヒーと紅茶についての薀蓄は、話しだすと長くなるから今日はやめておこう。



朝食の間に足を運んでみたが、まだパンもチーズもサラダもない。これではますます、仕事に
でかける気がしなくなる。そもそも広大な土地と屋敷の他に、運用している莫大なキャッシュが
ほぼ自動的に利益を生むので、なにも銀座くんだりまで出社してあくせくしなくたって玄孫の代
まで遊んで暮らせるのだが、それでは面白くないから働いている。せめて朝食ぐらい気分よく
済ませたいけど……もしや、富裕層の気まぐれサプライズが用意されている?



やっぱりそうだ! アトラクションのために移築した昭和テイストの間にドメスティックな食事が
しつらえてある。アルフレッドめ……あさから揚げ物とは昭和の中間層という名の下層な暮らし
を何か誤解してるな? 平成じゃないんだから。まあいい、醤油はどこだ? 富裕層はフライに
醤油をかけるもの。当然、容器にもこだわりがある。



崎陽軒のシウマイ弁当についてくる醤油入れ「ひょうちゃん」コレクションの中から、好きなのを
選んでブレックファストの揚げ物に味をつける……これぞ上品というもの。ちゃぶ台で朝ごはん
食べる贅沢の境地、うん堪能した。そろそろ下界に光臨しようか。



いつものようにトレーニングをかねて、敷地でトレイルランニングして通勤する。ジムに通うのは
身の回りにトレーニングできる場所や設備がない、特別な場合にかぎる。泳ぎたくなればプール
も一応あるし、当然のことながら川も湖も海も私有地のどこかにある。(ジムもいくつか)



少々やっかいなのは屋敷が広すぎて、せっかく仕事しようと思って出発しても、門にたどりつく頃
には帰りたくなってることがよくあるのだ。門までたどりつけないことだってある。いま思い出した。
良家の子女が通うエスカレーター式の小学校に通っていたある日、庭の古井戸に落ちた。



いまは埋めてしまったが、この井戸に落ち、学校から欠席の確認で連絡を受けたアルフレッドが
ぼくを探しにくるまでずっと暗闇の中にいた。バサバサ、バサバサと無数の羽音が聴こえてきて、
こっちへ飛んできたコウモリたちに囲まれたことを覚えている。



それからというもの、通販でこういうものを買って夜になると屋敷を抜け出し、闇に紛れて下郎を
葬り去るダークヒーローごっこが始まった。そうだった。どうも朝だるいと思ったら、夜遊びのせい
だったみたい。



正義の心なら誰にも負けないし、金だってある。だから装備は完璧で、ちょっとやそっとの打撃や
銃撃など痛くもかゆくもない設定。ただちょっと、脱ぐのが大変なのと後片づけが面倒くさいのが、
難点といえば難点だ。



どうしてもこんなふうになってしまう……部屋はいくらだってあるし、マスクやスーツも一生分より
たくさん通販で買っちゃったから、好きなところに好きなだけ脱ぎ捨てちゃって問題ないんだけど、
困るのはやっぱり殴られたら痛いし、刺されたら血が出るし、撃たれたら死ぬこと。



だから最近あまり敷地から出ないで、私有地の中でダークヒーローごっこをやっている。そんな
わけで朝はだるいし、昼はやる気ないし、夜はつきあい悪くなる。これから街でダークヒーローを
見かけたら、中の人はサカタだよ。あいつまたやってるな、って温かく見守ってください。

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