A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記1340 『森本紀久子 緋の柩・蓋』

2017-08-21 21:10:22 | 書物
タイトル:森本紀久子 緋の柩・蓋
並列書名:Kikuko Morimoto: Scarlet Coffin and Lid
撮影:ポラリス☆ジ・アートステージ 十倉宗晴、Svab Tomas(シュヴァーブ・トム)
デザイン:丸井栄二デザイン室
発行:京都 : アートスペース虹
発行日:[2017]
形態:10p ; 20×22cm
注記:展覧会カタログ
   会期・会場: 2017年8月15日-8月27日:アートスペース虹
   タイトルは表紙による
   おもに図版
   森本紀久子略歴あり
内容:
図版
テキスト 森本紀久子
略歴

頂いた日:2017年8月20日
 京都・アートスペース虹にて開催された「森本紀久子展」にてご恵贈頂きました。どうもありがとうございます。
本書は、森本氏が2005年以降に制作しているシリーズ「緋の柩」をまとめた冊子。通常の照明とブラックライトでの展示と2種類の展示があり、作品の相貌も様変わりする。アニミズム的な色彩感は非日常的な空間を生み出す。

未読日記1339 『物語の哲学』

2017-08-20 06:31:50 | 書物
タイトル:物語の哲学
シリーズ名:岩波現代文庫, 学術 ; 139
著者:野家啓一
発行:東京 : 岩波書店
発行日:2017.7第11刷(2005.2第1刷)
形態:vi, 374p ; 15cm
注記:著者の『物語の哲学 : 柳田國男と歴史の発見』(岩波書店1996年刊)を増補し,改題した新編集版
   参考文献あり
内容:
起源と目的をもつ「大文字の歴史」が終焉した後、歴史はいかにして可能かを問う。柳田国男の口承論、解釈学、ナラトロジー、科学史における歴史叙述などの成果を踏まえて物語り行為による歴史を追求し、小さな物語のネットワークとしての歴史の可能性を考察する。単行本を増補し、物語り論的歴史哲学を深化させた新編集版。

目次

序 「歴史の終焉」と物語の復権

第1章 「物語る」ということ—物語行為論序説
第2章 物語と歴史のあいだ
第3章 物語としての歴史—歴史哲学の可能性と不可能性

第4章 物語の意味論のために
第5章 物語と科学のあいだ

第6章 時は流れない、それは積み重なる—歴史意識の積時性について
第7章 物語り行為による世界制作

増補新板へのあとがき
初出一覧

購入日:2017年8月20日
購入日:Amazon.co.jp
購入理由:
 「アンキャッチャブル・ストーリー」展レビューテキストのための参考文献として購入。
 この夏に歴史、近現代史への興味から、柄谷行人『遊動論 柳田国男と山人』を読んでいたが、ここでも柳田國男とつながった。歴史と物語は地層でつながっている。

memorandum 545 自分のことば

2017-08-19 23:26:31 | ことば
 自分のことばなどというものはない。ことばということばはすべて他人のことばである。書くこと話すこと、そしてそもそもことばを覚え、ことばを会得することは、他人のことばが自在に自分の中を往来することに身をまかすこと、他人のことばに身をのせることである。

ぱくきょんみ「わたしの東洋の骨が鳴る」池内靖子・西成彦編『異郷の身体 テレサ・ハッキョン・チャをめぐって』人文書院、2006年

ことばは他者である。だから、ことばは自分の思い通りにならない。

memorandum 544 シリアス

2017-08-18 23:28:17 | ことば
●フィッシュマンズはだんだんシリアスになってきているように感じますが…。
「そうです。やっぱりシリアスにやらないと通じないと思う。そこが音楽がナメられる原因だって気が僕はするんです。音楽はかなりナメられてる。だからマジメにやる。純粋にやればそうなるんだと思う」
●誰がナメてるの?
「(笑)いや、9割5分の国民がナメてるよ。作る人も聴く人もレコード会社のひとも含めて、芸術の歴史というものを軽視してる。本当は、ミュージシャンの”こういうことをやりたい”っていう純粋な気持ちと、リスナーの”こういうのを聴きたい”という純粋な気持ちが直接結びつくのが普通じゃないですか。それがあまりになさすぎる。それに対して、誰一人立ち上がろうとはしない」
●立ち上がるというのは?
「オレたちは音楽を作ることしかないから、それでやっていくしかない。リスナーの心をむりやり変えることはできないわけだし。だからやっぱりただ作っていくことしかないけど。ほんと、悪い星の下に生まれたと思ってるよ」
(『ez』96年12月号、聞き手:水越真紀、212頁)


加藤典洋『耳をふさいで、歌を聴く』アルテスパブリッシング、2011年、280-281頁。

加藤典洋の著書からフィッシュマンズ・佐藤伸治のインタビューの孫引き。昔持ってた『フィッシュマンズ全書』(小学館、2006年)で読んだ気がする。やっぱりフィッシュマンズは正しい。
上記の「音楽」を「美術」や「批評」に置き換えても同様だろう。9割5分の国民が「批評」をナメてる。状況や業界、人の心を早々に変えることはできないが、私はただ書き続けよう。未来の読者に向かって。

memorandum 543 音楽業界の人間は

2017-08-17 22:34:17 | ことば
 なぜ、音楽業界の人間は、自分に傑作と思える曲が現れたら、それが売れるようにと考えないのか。
 なぜなら、ふつう、音楽業界の人間は、自分に傑作と思える曲が現れたら、喜んでそれが売れるように手を回し、それを売ろうと努力するものだからである。
(・・)
音楽業界の人間は、ふつうは、自分の音楽のセンスで勝負する。マーケットがそのよさに気づかなければ、それを気づかせようと、自分の領域つまり非音楽性の領域で、手を回し、仕掛けを作り、操作する。ふつうには、彼らが、ミュージシャンに対し、自分のセンスに逆行する「前進」ならぬ「後退」を示唆するということは、ないからである。
 では、なぜこの国の音楽業界は、そうなのか。彼らが、自分の相手とするマーケットを、信頼していないからだというほかない。それが、「よい音楽」ということと違うものとしての「売れ線」、「売れ筋」というコトバが意味することなのである。


加藤典洋『耳をふさいで、歌を聴く』アルテスパブリッシング、2011年、277-278頁。

美術界にも当てはまりそうな話ではある。
この国では、「売れ線」「売れ筋」と言われるものはほとんどの場合、「芸術」を意味しない。


未読日記1338 『フィクションとは何か : ごっこ遊びと芸術』

2017-08-16 22:11:33 | 書物
タイトル:フィクションとは何か―ごっこ遊びと芸術―
タイトル別名:Mimesis as make-believe : on the foundations of the representational arts
著者:ケンダル・ウォルトン
訳者:田村均
装丁:鈴木衛
カヴァー図版:カジミール・マレーヴィチ『絶対主義者の絵画』1915年 アムステルダム市立美術館蔵
発行:名古屋 : 名古屋大学出版会
発行日:2016.5
形態:x, 443, 58p ; 22cm
注記:原著 (Harvard University Press, 1990) の全訳
   索引: 巻末1-6p
   参考文献: 巻末9-18p
内容:
ホラー映画を観れば恐怖を覚え、小説を読めば主人公に共感する—しかし、そもそも私たちはなぜ虚構にすぎないものに感情を動かされるのか。絵画、文学、演劇、映画などの芸術作品から日常生活まで、虚構世界が私たちを魅了し、想像や行動を促す原理をトータルに解明するフィクション論の金字塔、待望の邦訳。

目次

凡例
序章

第Ⅰ部 表象体

第1章 表象体とごっこ遊び
     1 想像の働き
     2 想像を促す事物
     3 想像活動のオブジェクト
     4 自分自身についての想像
     5 小道具と虚構的真理
     6 小道具を介さない虚構性 —— 夢と白昼夢
     7 表象体
     8 非写実的な芸術
     9 虚構世界
     10 ごっこ遊びという魔法

第2章 フィクションとノンフィクション
     1 ノンフィクション
     2 虚構と現実
     3 言語的戦略
     4 虚構と断定
     5 発語内行為のふりをすることと発語内行為を表象すること
     6 発語内行為としての虚構制作?
     7 混合体、中間形態、多義性、不確定性
     8 伝説と神話
     9 真理と実在についての覚書
     10 二種類のシンボル?

第3章 表象の対象
     1 対象とは何か
     2 表象体と一致関係
     3 決定する要因
     4 表象と指示
     5 対象の使い道
     6 反射的表象体
     7 対象は重要ではない
     8 非現実の対象は?

第4章 生成の機構
     1 生成の原理
     2 直接的生成と間接的生成
     3 含意の原理
     4 直接的生成の機構
     5 愚かな問い
     6 いろいろな帰結

第Ⅱ部 表象体の鑑賞体験

第6章 謎と問題点
     1 ヒロインを救い出す
     2 虚構を恐れる
     3 虚構性とその他の志向的特性

第6章 参加すること
     1 子どもたちの遊びへの参加
     2 参加する者としての鑑賞者
     3 言語的な参加
     4 参加に関する制約
     5 聴衆への脇台詞
     6 見られないものを見ること

第7章 心理的な参加
     1 虚構として恐れること
     2 心理的に参加する
     3 悲劇のパラドックス
     4 サスペンスとサプライズ
     5 参加することの眼目
     6 参加なき鑑賞

第Ⅲ部 様相と様式

第8章 絵画的描出による表象
     1 描出体の定義
     2 絵を見ることと物を見ること
     3 描出の表現様式
     4 写実性
     5 様相横断的な描出
     6 音楽的な描出
     7 視点 (描出体における)
     8 結 論

第9章 言語的表象体
     1 言語による描出
     2 語 り
     3 二種類の信頼性
     4 言葉にならない語り
     5 不在の語り手と消された語り手
     6 物語を語る語り手
     7 仲立ち
     8 語りによる表象体の視点

第Ⅳ部 意味論と存在論

第10章 架空の存在者をしりぞける
     1 問 題
     2 虚構世界の内側で虚構世界について語ること
     3 通常の言明
     4 非公式のごっこ遊び
     5 他のさまざまな形
     6 論理形式

第11章 存 在
     1 暴露と不同意
     2 存在と非存在についての主張

謝辞
訳者解説

参考文献
図版一覧
索引

購入日:2017年8月16日
購入店:Amazon.co.jp
購入理由:
 「アンキャッチャブル・ストーリー」展レビューテキストのための参考文献として購入。
 先ごろ買った『早稻田文学 2017年夏号 特集:作られゆく現実の先で」を読んでいたら、複数の論考で本書が引用・参照されていた。どの引用も興味深く、読んでみたくなった。

memorandum 542 文芸評論というのは

2017-08-15 23:49:33 | ことば
文芸評論というのは、突きつめれば、作品を読めるかどうか、である。何の知識もいらない、またそういうものが何の役にも立たない。未知のものとして現れる作品を前に、ただその力を衆目の前で問われる。

加藤典洋「「戦後」の地平——江藤淳氏の逝去によせて」『ポッカリあいた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ』クレイン、2002年、244頁。

美術評論も同様だと思う。

memorandum 541 美しさ

2017-08-14 23:53:17 | ことば
 では、「美しさ」とはいったい何なのでしょうか。いろいろな見かたはあるでしょうけれど、私は「それが二度と同じことをくりかえさないこと」だと思っています。例えば雲の美しさ。もし、雲のかたちや動きが、ある周期でくりかえされていたらどうでしょう。おそらく「美しい」とは思わないでしょう。予測できそうで、予測できない微妙な動き、しかも二度と同じものにであえないという、どきどきするような緊迫感に「美」を感じているのではないでしょうか。

佐治晴夫『ゆらぎの不思議』PHP研究所(PHP文庫)、1997年、16頁。

美しさは二度とない。


未読日記1337 『戦争画STUDIES』

2017-08-13 20:42:07 | 書物
タイトル:戦争画studies展カタログ
編集:「戦争画studies展」実行委員会
展示風景写真:ただ(ゆかい)、BARBARA DARLINg、辻耕
カタログデザイン:京増千晶
協力:長尾望
発行:[出版地不明] : 「戦争画studies展」実行委員会
発行日:2017.5
形態:163p ; 21cm
注記:展覧会カタログ
   会期・会場: 2015年12月9日-12月20日:東京都美術館ギャラリーB
   主催: 東京都美術館 (公益財団法人東京都歴史文化財団) 第4回都美セレクショングループ展, Sunshine Network Japan (「戦争画studies展」実行委員会)
   参加作家:飯山由貴、笹川治子、辻耕、豊嶋康子、村田真、百瀬文、BARBARA DARLINg、CAMP
   企画:笹川治子
   キュレーション:BARBARA DARLINg
   監修:村田真
   会場配置図/作家略歴: p28-29
内容:
「戦争画STUDIES」展 Exhibition
会場配置図/作家略歴
展覧会関連イベント
「終わらない戦争 2.0」
対談 飯田高誉・椹木野衣
司会:BARBARA DARLINg
「戦争画と戦後美術」
レクチャー 山田論
「戦争画をもう一度考える」
レクチャー 笹木繁男
「女性と美術と戦争」
レクチャー 吉良智子
「メディアのなかの戦争」
座談会 
ゲスト:小金沢智
司会:笹川治子
「ちいさな物語:もう一つの戦争画から見えるもの——清水登之・育夫像より」
座談会
ゲスト:杉村浩哉・中野冨美子
司会:辻耕
「戦争スペクタクル 上野ツアー」木下直之
「おわりに」笹川治子

購入日:2017年8月12日
 Yoshimi Artsにて開催された「Insight 18」を拝見した際、資料のなかで本書を見つけた。展覧会の存在は知っていたものの記録集が出ているとは知らなかった。井上裕加里展のレビューで戦争関連の文献を読んでいたので、本書も参考になるかもしれないと考える。ギャラリーの方に販売の有無をお伺いすると、ネットで販売をしているというので、公式ホームページから問い合わせて購入。このボリュームで破格の値段で驚く。
 内容は、飯田高誉・椹木野衣の対談、山田論、笹木繁男、吉良智子、杉村浩哉のレクチャー、木下直之のツアー(テキストはなし)など、錚々たる美術関係者による記録が見どころ。村田真と小金沢智がなぜ入っているのか不明だが、関係者とのコネなのだろうか。




【ご案内】京都新聞2017年8月12日「ミュージアム」

2017-08-12 21:08:13 | お知らせ
8月12日(土)の京都新聞朝刊にて開館30周年 O JUN × 棚田康司「鬩(せめぐ)」(伊丹市立美術館)のレビューを書かせて頂きました。

開館30周年 O JUN × 棚田康司「鬩(せめぐ)」
2017年7月8日(土)-8月27日(日)
伊丹市立美術館
http://artmuseum-itami.jp/…/…/exhibition/current_exhibition/

実力ある2作家の充実した鬩ぎ合いが見どころです。本日からの公開制作では両作家が揃うとのことですので、こちらもお楽しみください。