A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

TOUCHING WORD 040

2008-04-30 23:33:43 | ことば
愛、それは心に感じられるようになった時間と空間のことだ。
(p.349 『失われた時を求めて10 第五篇 囚われの女Ⅱ』マルセル・プルースト 鈴木道彦訳、集英社/集英社文庫ヘリテージシリーズ2007.1)

未読日記183 「アートは心のためにある」

2008-04-29 23:56:22 | 書物
タイトル:アートは心のためにある:UBSアートコレクションより
編集:片岡真実/町野加代子/越田環/佐々木瞳/小山田洋子/鈴木幸太[森美術館]
デザイン制作:秋山伸/堤あやこ[schtucco]
発行:森美術館
発行日:2008年2月2日
金額:2500円
内容:
「ごあいさつ」マーク・ブランソン(UBS証券会社 前チーフ・エグゼクティヴ・オフィサー、現グローバル・ウェルス・マネジメント&ビジネス・バンキング チーフ・フィナンシャル・オフィサー)
「われわれは世界とどう繋がっているのか?」片岡真実(森美術館シニア・キュレーター)
「森佳子(森美術館理事長)インタビュー:アートコレクションをつくるということ」聞き手:南條史生(森美術館館長)
「「みんな自分の物語がある」UBSアートコレクションにおけるアジアの物語性」ピー・リー[皮力](UBSアートコレクション・キュレーター)
「「心を突き動かすイメージ」UBSアートコレクションの歴史とこれから」ジョアン・バーンスタイン(UBSアートコレクション・キュレーター)
図版/作家・作品解説
作品リスト、主要参考文献

購入日:2008年3月30日(入手日:2008年4月26日)
購入店:森アーツセンターミュージアムショップ
購入理由:
東京・森美術館において開催された<アートは心のためにある:UBSアートコレクションより>(2008年2月2日-4月6日)の展覧会カタログ。
出品作家のリストを見るとよく見かける名前が多いのであまり期待していなかったのだが、予想以上に楽しめた快心の展覧会。雨降る日曜の夜間に疲労のたまった状態で行き、けっしてコンディションはよくなかった。だが、見終わった後はエネルギーが充填されたような、なにか肩の力が抜けたような気分になっていた。まさに「アートは心のためにある」を身をもって実感した展覧会だった。

その日、コンディションがよくなかった私の状態を一気にシフトチェンジしてくれた作品はツァオ・フェイのヴィデオ作品≪ユートピアは誰のもの≫(2006)であった。この作品に出会うことができたことで、疲れが吹き飛んでしまったのだ。照明器具メーカーのデジタル工場を舞台に、無機質に動く機械、機械のように働く人々・・働く彼(彼女)らの夢を淡々と浮き上がらせていく20分の映像作品。フィックス・ワンカットワンショットにクローズアップ、バックにはミニマルな音楽が流れるシンプルだが、心に電灯を灯すような美光な映像体験だった。

さらに、続く写真セクションのオリヴォ・バルビエーリ、トーマス・フレヒトナー、アンドレアス・グルスキー、ダグ・ホール、カンディダ・へーファー、ウォルター・ニーダーマイヤー、トーマス・シュトゥルートらのベッヒャー系写真の充実ぶりがのどの乾きを癒す水のように染み透り、体内環境正常化を促進してくれた。

アリギエロ・ボエッティ、ギリェルモ・クイトカ、チン・ガの地図をモチーフとした作品は刺戟を与えてくれたし、日本ではほとんど見る機会がないブライス・マーデン(!!)も忘れられない。
観覧後、ツァオ・フェイという私とほとんど同世代のこの作家のことを知りたくなり、出版物を探したが見当たらない。カタログを見てみるとなんと品切れで予約後に後日発送とのこと。その日の興奮から衝動的に購入してしまったが、このような現代美術の展覧会カタログが売り切れるとは考えられない事態である。UBSにこの売上がいくのかどうかわからないが、よいコレクションを続けてほしいものである。



TOUCHING WORD 039

2008-04-24 23:17:03 | ことば
生きつづけようとする気持ちを維持したい、日常的なものよりも甘美な何かがあることを信じたい、そう願う者は外を歩いてみるべきだ。
(p.322 『失われた時を求めて9 第五篇 囚われの女Ⅰ』マルセル・プルースト 鈴木道彦訳、集英社/集英社文庫ヘリテージシリーズ2007.1)

未読日記182 「フローラ 新本草図譜集」

2008-04-22 23:17:14 | 書物
タイトル:αmプロジェクト2007 ON THE TRAIL Vol.5
     分類学の父 カール・リンネ生誕300年
     フローラ・新本草図譜集 Descriptions Flora
     塩崎由美子 伊藤哲 坂田峰夫
デザイン:河野伊央、長内研二
表紙:「ラップ人の服装をした25歳のリンネ肖像」リンネ『植物属誌』1737より
発行:武蔵野美術大学
発行日:2008年2月26日
内容:
「種の減少期と<植物誌>について」鷹見明彦(美術評論家/αmプロジェクト2007キュレーター)

図版:塩崎由美子7点、伊藤哲9点、坂田峰夫6点、作家略歴

入手日:2008年4月12日
入手場所:GALERIE SOL
植物をモチーフとした作品を制作する3名のアーティストを取り上げた<αmプロジェクト2007 ON THE TRAIL Vol.5 フローラ・新本草図譜集 塩崎由美子・伊藤哲・坂田峰夫>(2008年2月26日-3月8日、表参道画廊)の展覧会リーフレット。ここのところ、植物と美術の関係をテーマとした作品、展覧会には足を運ぶようにしている。仕事柄いけばなに関わっているせいもあるが、美術作品として表現された植物をあらためて見直してみたいと思ったのだ。この展覧会も行きたかったのだが、結局都合がつかず行かれなかった。その後、この展覧会に参加している坂田峰夫氏の展覧会に行った際に、この展覧会の冊子を手にすることができた。実作を見ていないので、コメントは控えるが<本草図譜集>というコンセプトは興味深い。写真やイラストによる植物図鑑もいいが、すべて美術作品の図版だけによる植物図鑑があるとおもしろいのではないか。などと妄想を膨らませてしまった。

TOUCHING WORD 038

2008-04-17 23:29:12 | ことば
安全をおびやかされたことのない者には、安全の貴重さもわからない―。
(p.196 「失われた時を求めて6 第三篇 ゲルマントの方Ⅱ」マルセル・プルースト 鈴木道彦訳 集英社/集英社文庫ヘリテージシリーズ2006.8)

未読日記181 「横尾忠則 画境の本懐」

2008-04-14 23:59:20 | 書物
タイトル:KAWADE道の手帖 横尾忠則 画境の本懐
発行:河出書房新社
発行日:2008年3月30日
内容:
書き下ろしエッセイ
「幼い老人 「隠居宣言」のための未完のメモ」横尾忠則

対談
「Pressure to Paint 横尾忠則再入門」難波英夫×横尾忠則
「日本美術史の中の横尾忠則」辻惟雄×横尾忠則

論考
「横尾忠則の全体性」中条省平
「主体のスプリット 「Y字路」から見直す横尾芸術」平野啓一郎
「画狂人が神秘に触れるとき」峯村敏明
「アカシック・レコードから読み解く横尾忠則の過去・現在・未来」宮沢みち

Yへの手紙
瀬戸内寂聴、梅原猛、三宅一生、森山大道、細野晴臣、なかにし礼、立花ハジメ

なにをみてもYをおもいだす
三輪明宏、高田純次、プリンセス・テンコー、蜷川実花、浅野忠信、山本精一

三島由紀夫との交歓
「無礼な芸術」「薔薇刑」「ポップコーンの心霊術」三島由紀夫
「ミシマーッ! カッコイイー!!」「三島由紀夫のこと」「三島由紀夫とそのぬいぐるみ」横尾忠則

ヨコオにみ(せ)られた人々
富岡多恵子、寺山修司、野坂昭如、瀧口修造、種村季弘、東野芳明、山口昌男、大島渚、よしもとばなな、黒澤明、亀倉雄策、河合隼雄、ドナルド・リチー

横尾忠則略年譜

(本書目次より)

購入日:2008年4月5日
購入店:SHIBUYA TSUTAYA
購入理由:
今週末から東京・世田谷美術館において開催される<冒険王・横尾忠則>展のための予習として。
私にとっての横尾忠則への興味は、<Y字路>シリーズであった。現実にあるY字路をモチーフにしながらも、リアリズムに陥ることなく絵画的豊穣さへと膨張していくその展開に微笑とともにこちらの気持ちを軽くさせてくれた。そんなわけで久しぶりの関東圏での今回の展覧会を機に横尾忠則という人物、その作品について考えてみるのもいいかもしれないと思い購入した。そんな思いを抱かせたこのムック本の発売を知ったのは、3月にとあるギャラリーにおいて開催された峯村敏明氏のトークショーでの場でだった。その時は横尾忠則について語る場ではなかったのだが、氏の芸術観、横尾忠則への評価に興味深いものを感じ、テキストを読んでみたいものだと感じた。雑誌での横尾忠則の特集などいまさら珍しくもないのだが、充実したページ数で論考などの読み物がたっぷりが収録されているので頼もしい。なお、横尾忠則ほどの人物になると特集に寄稿する人選、対談する人物も常連ばかりで新鮮味が薄れてくるものだが、今回の特集では、中条省平、平野啓一郎など渋い人物も選ばれており好感がもてる内容である。


<冒険王・横尾忠則>
2008年4月19日-6月15日
世田谷美術館

 

TOUCHING WORD 037

2008-04-03 22:51:14 | ことば
そんなわけで、そこは戦場になったんだし、これからもなるだろう。どんな部屋でも画家のアトリエになるわけじゃないし、どんな場所も戦場になるわけじゃないんだ。
(p.224 『失われた時を求めて5 第三篇 ゲルマントの方Ⅰ』マルセル・プルースト 鈴木道彦訳 集英社/集英社文庫ヘリテージシリーズ2006.8)

TOUCHING WORD 036

2008-04-02 23:39:13 | ことば
自分のために生きることができる人間は、またそうする義務もあるものだ-なるほど、それができるのは芸術家であり、私はもうずっと以前から、自分が絶対に芸術家にはなれまいと思いこんでいたのであるが-。
(p.448 『失われた時を求めて4 第二篇 花咲く乙女たちのかげにⅡ』マルセル・プルースト 鈴木道彦訳 集英社/集英社文庫ヘリテージシリーズ2006.5)