A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記1335 『ヒロシマわが罪と罰』

2017-08-07 22:54:46 | 書物
タイトル:ヒロシマわが罪と罰 : 原爆パイロットの苦悩の手紙
シリーズ名:ちくま文庫
著者:G.アンデルス, C.イーザリー
訳者:篠原正瑛
カバー装画:宮川和子
発行:東京 : 筑摩書房
発行日:1987.7
形態:297p ; 15cm
注記:原著1982年版の翻訳
内容:
“1945年8月6日、広島の上空で約45分間旋回した後、僚機エノラ・ゲイ号に向けて、私は「準備OK、投下!」の暗号命令を送りました。……”後年、地獄火に焼かれる広島の人々の幻影に苦しみつづけ、“狂人”と目された“ヒロシマのパイロット”と哲学者との往復書簡集。それは、病める現代社会を告発してやまない。ロベルト・ユンクの精細な解説「良心の苦悩」を付す。

目次

ラッセル卿のまえがき バートランド・ラッセル
一九八二年版の著者まえがき ギュンター・アンデルス
〈手紙の1〉未来図の象徴という断罪
〈手紙の2〉私は狂信的な人間ではない
〈手紙の3〉平和のために役立ちたい
〈手紙の4〉原子力時代の最初の犯罪
〈手紙の5〉ありがたくない宣伝材料
〈手紙の6〉幅の広い戦線をつくろう
〈手紙の7〉ボブ・ホープの映画化計画
〈手紙の8〉広島の少女たちの友情
〈手紙の9〉自伝映画に出演するな
〈手紙の10〉私を利用しようとする人びと
〈手紙の11〉二人で伝記を書こう
〈手紙の12〉ユダがもらった銀貨
〈手紙の13〉泳ぐためにはまず泳げ
〈手紙の14〉日本からの多くの手紙
〈手紙の15〉殉教者というものの運命
〈手紙の16〉原子兵器反対のリーダーに
〈手紙の17〉見せ物にならないように
〈手紙の18〉(省略)
〈手紙の19〉(省略)
〈手紙の20〉平和運動をさまたげる弟
〈手紙の21〉だれが君を病院に入れたのか
〈手紙の22〉闇ルートで返事を送る
〈手紙の23〉(省略)
〈手紙の24〉君の主治医に手紙を書いた
〈手紙の25〉ドイツのグラフ誌に君の記事が
〈手紙の26〉禁止措置はとれないか
〈手紙の27〉掲載中止を申し入れよう
〈手紙の28〉みずからの刑罰を求めた私
〈手紙の29〉プライバシーと報道の自由
〈手紙の30〉審問の結果が知りたい
〈手紙の31〉僕が求めている欲張った報酬
〈手紙の32〉君はノーマルだ
〈手紙の33〉クロードは責任回避を拒絶したのです
〈手紙の34〉もしも退院したら
〈手紙の35〉君はユーモアをとりもどした
〈手紙の36〉もっと積極的なたたかいを
〈手紙の37〉罠にかかったのかもしれない
〈手紙の38〉トランキライザーに参っている
〈手紙の39〉15年目の広島記念日
〈手紙の40〉僕が間違っていた
〈手紙の41〉日本からのアンケート
〈手紙の42〉広島上空で私がしたこと
〈手紙の43〉弟たちを説得してくれ
〈手紙の44〉ポーリング博士を救おう
〈手紙の45〉希望と現実の架け橋
〈手紙の46〉人類はじまって以来の問題
〈手紙の47〉私信も検閲にかかっている
〈手紙の48〉選挙が僕の退院をさまたげる
〈手紙の49〉日本へ行きたい
〈手紙の50〉ノーマルを立証せよ
〈手紙の51〉病院を脱走した
〈手紙の52〉秘密の家で守る九ヵ条
〈手紙の53〉(省略)
〈手紙の54〉アメリカは僕を歓迎しない
〈手紙の55〉メキシコへ行ってみてはどうか
〈手紙の56〉再びとらわれの身となって
〈手紙の57〉20世紀のドレフュス事件
〈手紙の58〉精神の健全さを証明しよう
〈手紙の59〉(省略)
〈手紙の60〉なぜ事件を忘れるのか
〈手紙の61〉疑わしいイーザリー裁判
〈手紙の62〉ラッセル卿のイーザリー観
〈手紙の63〉ドレフュス・コンプレックス
〈手紙の64〉”自由意志にもとづく”入院患者
〈手紙の65〉君の良心は奪われない
〈手紙の66〉僕はけっして勇気を失わない
〈手紙の67〉イーザリーの抑留は正当である
〈手紙の68〉法律的にも疑問あり
〈手紙の69〉提訴は実を結びつつある
〈手紙の70〉君を忘れない、永遠に
〈手紙の71〉釈放の日は目前だ
良心の苦悩 ロベルト・ユンク
訳者あとがき
解説『ヒロシマわが罪と罰』の今日的意義 芝田進午

購入日:2017年8月5日
購入店:Amazon.co.jp
購入理由:
 京都・Gallery PARCでのGallery PARC Art Competition 2017「井上 裕加里:堆積する空気」(2017年8月1日〜8月13日)レビューのための参考文献として購入。本書は、本展で井上が引用・朗読した文献と知り、興味をひかれて手にした。古い本なので図書館にあるかと思いきや、京都の図書館には単行本しか所蔵がなく購入。
 本書は、哲学者・アンデルスとパイロット・イーザリーの手紙のやりとりをまとめた往復書簡だが、読み始めるや書簡体小説を読んでいるかのようなスリリングな展開にのめり込む。顔を一度も合わせないアンデルスとイーザリーのやりとりは、信念、正義、友情、苦悩の対話を交感する稀有な記録である。名著。絶版なのが信じられないが、現代では原爆も風化しているということか。映画化してもおかしくない魅力ある物語だが、いまだ原爆の「正義」を信じるアメリカでは不可能だろう。