A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記465 「仕事日和」

2011-02-27 23:14:43 | 書物
タイトル:仕事日和
著者:久保田佳克
発行:京都造形芸術大学 芸術表現・アートプロデュース学科 クリエイティブ・ライティングコース
製本:株式会社北斗プリント社
発行日:2011年2月20日
内容:
Chapter.01 京阪神エルマガジン社「サヴィ」編集長 水嶋領子さん
Chapter.02 FM京都 アルファーステーション 「アルファモーニング キョウト」番組担当ディレクター 鳥井孝彦さん
Chapter.03 草源カフェ 代表 小泉攝さん
Chapter.04 京都シネマ代表 神谷雅子さん
Chapter.05 博報堂 アートディレクター 上野仁志さん
Chapter.06 写真家 平間至さん
Chapter.07 ヤサカタクシー 四つ葉のタクシードライバー 玉記成和さん
Chapter.08 洛北高校 美術科講師 小野啓亘さん
Chapter.09 京都府立植物園 技術課 樹木係 主査 肉戸裕之さん
Chapter.10 京都市動物園 飼育課 和田晴太郎さん
Chapter.11 ジャーナリスト 池上彰さん
Chapter.12 Power of life代表 ATSUSHIさん(Dragon Ash)
Chapter.13 ちせ nature and material ジャム担当 谷内志穂さん
Chapter.14 料理人 棚橋敏夫さん
Chapter.15 ときカケ

頂いた日:2011年2月27日
頂いた場所:京都造形芸術大学
 京都造形芸術大学の卒業・修了制作展に行った際、「ご自由にお持ちください」と書かれてあったので、頂いた1冊。どうもありがとうございます。
 なお、画像を見ればわかるように頂いた本はコピーしてホッチキスをとめただけの簡易な造本であるが、実際の展示ではきれいに製本された本が展示されていた。

 本書を手に取ったのは、インタビュー本として人選に魅かれたことが第一の理由だろうか。池上彰のようなテレビに出ている人物もいれば、タクシードライバーもいる。有名無名を問わず、それぞれの仕事の流儀「ザ・プロフェッショナル」的なエピソードがおもしろい。個人的には、ヤサカタクシーの玉記さんの話が印象的だった。生活や思考に美意識や倫理が徹底されていて、人柄がにじみ出てくる。
 また、「アルファモーニング キョウト」ディレクターの鳥井氏の話は、毎朝聴いているだけに、舞台裏がわかって興味深かった。

 少し残念なのは、誤字脱字が多いこと。締切までに文字起しをするのは大変だったと思うが、やはり目につく。また、15人(組)の最後が京都造形大のアーティスト「ときカケ」というのもいかがなものだろうか。その1つ前、棚橋さんのドラマのようなライフストーリーにしみじみとした後に、学生であるときカケの話を読むと、言葉の響きが全然違うことに気づく。
 とはいえ、卒論として一部の人たちだけにしか読まれないのがもったいない本であることにかわりはない。エルマガジン社あたりで発行してはどうだろう・・。




Recording Words 039 形而下の世界

2011-02-21 23:24:29 | ことば
食べるということは形而下の世界である。そして人間の形而上界は、形而下の世界とふかく対応している。その対応なしに、ひとり形而上界が発展し創造性をふかめることはできない。食べること、異性と交わること、こうした形而下の行為は感性に直接にひびく。
森崎和江「コールドチェーンとひそやかな意志」、梅田卓夫・清水良典・服部左右一・松川由博編『高校生のための批評入門』筑摩書房、1987年、p212)

何をするにも食事は大切だ。おなかが空いていては、なにかをする気もおきない。そうだ、おいしいものが食べたい。

写真はかぼちゃ煮を作ったときのもの。かぼちゃ好きなもので・・。

未読日記464 「前衛★R70展」

2011-02-19 23:08:28 | 書物
タイトル:前衛★R70展―70歳未満出品不可・完全最新作―
撮影・編集:長崎裕起子
発行:ギャラリー58
発行部数:1500部
内容:
東京・銀座のギャラリー58にて開催された<前衛★R70展―70歳未満出品不可・完全最新作―>の図録。
A5判、カラー、10p

作品図版
 赤瀬川原平
 秋山祐徳太子
 池田龍雄
 田中信太郎
 中村宏
 吉野辰海
感想ノートより
「走り続けるトップランナー」長崎裕起子(ギャラリー58)
作家略歴

頂いた日:2011年2月14日
郵送でギャラリーより頂いた1冊。どうもありがとうございます。




Recording Words 038 新しさというのは

2011-02-17 23:22:13 | ことば
新しさというのは、過去の前に立ち現われるものではなく、未来を予感させるものを含んでいることなのだ。
(橋本治「世界を変えたペン先 大矢ちきの位置」『よくない文章ドク本 (1982年)』、大和書房、1982年、p.150)

「新しさ」が「未来を予感させるものを含んでいること」だとすれば、それは現代のものとは限らない。
 ところで、芸術に「新しさ」を求めたり、評価の基準にするのは違和感を覚える。芸術とは、いわゆる「新しさ」とは無縁であり、時代を超越したはずのものだからだ。


未読日記463 「ワイドビューの幕末絵師 貞秀」

2011-02-15 23:09:02 | 書物
タイトル:ワイドビューの幕末絵師 貞秀
編集:神戸市立博物館
担当:塚原晃、河村壮範、三好唯義
編集・制作:株式会社旭成社
発行:神戸市立博物館
発行日:2010年12月11日
定価:800円
内容:
神戸市立博物館で開催された「特別展 ワイドビューの幕末絵師 貞秀」(2010年12月11日(土)~2011年2月13日(日))の展覧会図録。
B5判、カラー、78ページ

「真の浮世絵師 五雲亭貞秀」塚原晃
1.絵師貞秀
2.横浜誕生
3.港につどう人々
「時代と風景を描く貞秀=玉蘭斎」三好唯義
4.富士山と地図
5.街道を翔ぶ 日本各地を描く
6.旅行ブームと吉田初三郎
略年譜
出品目録
参考文献

購入日:2011年2月6日
購入店:神戸市立博物館ミュージアムショップ
購入理由:
 江戸幕末の浮世絵師が「地図」を描いていた?と聞けば地図好きとしては見逃せない展覧会が今展である。その地図を描いた絵師こと五雲亭貞秀は、歌川国芳に私淑し、濃密で写実的な武者絵などで活躍をした絵師である。だが、その個性がもっとも発揮されたのが上空から街全体を俯瞰した鳥瞰図の数々である。本展のタイトルに「ワイドビュー」という言葉が付されているように、貞秀は3枚以上の木版画を連続させた横長大画面に横浜など各地の風景をダイナミックかつ緻密に描いている。さらに、橋本玉蘭斎の名で、江戸図・国絵図・世界地図なども手掛けるなど、絵師であり地図制作者でもあった。貞秀もまた奇想の絵師(画家)と言える1人かもしれない。
 貞秀の展覧会は、巻末の参考文献を見る限りでは、1997年に神奈川県立歴史博物館で開催された「横浜浮世絵と空とぶ絵師 五雲亭貞秀」展以来のようである。久しぶりの貞秀展の開催が現在の居住地である関西で行われるとは、私のために開いてくれたような気になってうれしくなる。
 さて、展示を見ると、噂通り驚異的な描画テクニックと偏執的なまでの地理描写に圧倒される。それがよくわかるのが、異国の人々を描いた人物画の下絵である。現存する数少ない下絵であるこの作品群を見ると、執拗なまでの描写密度に息が苦しくなるくらいである。
 鳥瞰図については、赤枠地に黒色で地名表記が施されているのが特色である。その札の数がこれまた異様に多い。鳥瞰図の細密に描かれた部分がおもしろく、見続けているうちに絵を見ているのか、地図を見ているのかわからなくなる。この目がクラクラしてくるような感覚は、後年の「大正の広重」吉田初三郎も叶わない気がする。見終わると薄暗い展示室のせいもあってか、目がチカチカした。
 残念なのは、図録がもっと大きければと思う。とはいえ、この金額で購入できたのはうれしかった。ちょうど財布に残っていた残金で買えたので助かった。

Recording Words 037 良い文章の定義

2011-02-13 23:24:53 | ことば
良い文章の定義、文章のよさ、そういうものはない。あるのは、良い文章だけだ。その意味は、そのよさ、っていうのは、一人一人が、感じるしかないものだ、ということでしょう。えーっ、そんなに曖昧なのーっ、と言うかもしれないけれど、それは曖昧なのではない。感じるしかできないもの、そういう感じることでようやく保たれるものが、あのさまざまな古典の竪固さなんだ、と考えてほしいんです。
(加藤典洋『言語表現法講義 (岩波テキストブックス)』岩波書店、1996年、p.58)

文章論ではあるが、すべての芸術表現にも言えることかもしれない。

未読日記462 「ドローイングとは何か」

2011-02-11 23:01:28 | 書物
タイトル:第2回 ドローイングとは何か――第1回公募入選展
編集:深井美子
デザイン:渡邉雄大
協力:ギャルリー志門
印刷:株式会社グラフィック
翻訳:ローラ・シャーノフ
発行:「ドローイングとは何か」展実行委員会
発行日:2011年1月24日
定価:1000円
内容:
東京・ギャルリー志門にて開催された「第2回 ドローイングとは何か――第1回公募入選展」(2011年1月24日~1月29日)のカタログ。
A4判、カラー、30ページ

「ドローイングとは何か」金澤毅(美術評論家)
入賞・入選作品
最優秀賞・池田俊彦
優秀賞・三塩佳晴
優秀賞・吉野章
小田隆、北藪和夫、近藤平八郎、高島進、高橋瑠美子、土田瞬、朴寶正、嶺崎茂子
第2回「ドローイングとは何か」展 入賞・入選リスト
審査員
「第2回 ドローイングとは何か」展審査風景
第1回「ドローイングとは何か」展

頂いた日:2011年2月2日
 ギャラリーより郵送で頂いた1冊。どうもありがとうございます。残念ながら展覧会は見ることができなかったが、本書で概要を知ることができた。
 現代美術において「ドローイング」というと、2008年に東京と京都の国立近代美術館において開催された「エモーショナル・ドローイング」展が思い出される。そこではドローイングという技法や概念が拡張された現在の状況が反映され、理性より感性の表現としての「ドローイング」を見ることができた。
 対して、本展は企画者である金澤氏の関心や傾向も反映してか、銅版画を思わせるような写実的・細密なドローイングが中心となっている。自由に筆やペンを動かすというより、鉛筆やペンなどの描画材を用いて緻密な絵画空間を作り上げる作品を「ドローイング」と捉えているようだ。どの作品も甲乙つけがたいレベルの高い作品である。しかし、写実性の高いドローイングを公募するというのは、「ドローイング」の一面を捉えているだけともいえ、ドローイングが孕む現代性を見落としていることにはならないだろうか。

未読日記461 「phono / graph」

2011-02-07 23:24:44 | 書物
タイトル:phono / graph―音・文字・グラフィック―
企画:藤本由紀夫
デザイン:ニコール・シュミット
制作:株式会社DNPアートコミュニケーションズ
印刷・製本:大日本印刷株式会社
発行:財団法人DNP文化振興財団
発行日:2011年1月18日
内容:
大阪・dddギャラリーにて開催された展覧会「phono / graph―音・文字・グラフィック―」(2011年1月18日~3月9日)に際して刊行されたカタログ。

ニコール・シュミット
softpad
intext
八木良太
藤本由紀夫
作品写真&テキスト&作家略歴

頂いた日:2011年1月29日
頂いた場所:dddギャラリー
 会場で「ご自由に1冊お持ち帰りください」とあり頂いた1冊。
 本展は、アーティスト・藤本由紀夫監修による「音とアートとグラフィックの新しい可能性を俯瞰的に捉え」た展覧会。ジャンルレスに音・文字・グラフィックを扱うアーティスト/クリエイターたち5人(組)が参加している。参加作家の人選やチラシのデザインに魅かれて楽しみにしていた。
 だが、こういったインタラクティブ系アート&デザイン、メディアアートの作品は、メカオンチの私には会場で操作が呑みこめないことが多く、途方にくれる。新しいメディアやデバイスについていけてないメカオンチの私には、まず家電売場を先に見た方がいいのかもしれない。
 ちなみに、このカタログは豆本サイズで、本自体がアートブックとなっている。この本が一番楽しいかも。