A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記309 「夢うつつの庭」

2009-08-31 23:38:43 | 書物
タイトル:NAGASAWA IN KAWAJIMA 長澤英俊展
編集:波岡冬見
写真:安齋重男
翻訳:キャロル・モーランド、吉竹美香、ルース S.マクレリー
制作:印象社
発行:遠山記念館
発行日:2009年
価格:1500円
内容:
謝辞
ごあいさつ
「Nagasawa in Kawajima」遠山公一
「<夢うつつの庭>に立つ」峯村敏明
「長澤英俊インタビュー」インタビュー:田代かおる
図版
作品リスト
会場プラン
略歴
〝Nagasawa in Kawajima″ Koichi Toyama
〝in the “Giardino dormiveglia”″ Toshiaki Minemura
〝Interview with Hidetoshi Nagasawa″


購入日:2009年8月16日
購入店:遠山記念館
購入理由:
埼玉県川島町の遠山記念館にて開催された<長澤英俊展 夢うつつの庭>(2009年7月18日―9月23日)の展覧会カタログ。
川島町出身である長澤にとって初の出身地での展覧会となる。それもすべて伝統的な日本家屋を有する同館のためのコミッションワークである。会場の遠山記念館は行くのさえ難儀な場所だが、人里離れた場所で見る長澤作品はまさに夢うつつのような気分にさせてくれる。
そして、カタログ図版の写真は安齋重男によるもの。だが、これが全体の概要を知るには不向きなドキュメンテーション写真で、作品写真としては物足りないのが残念である。しかも安齋氏特有の白黒写真で、どうしてカラーでないのか不明である。まして、展覧会終了後には作品はすべて解体されるというのだから、なおさら写真は記録として重要なはずなのに、作品をカラー写真で見れないのは残念である。
ということはつまり実際の作品を見るしかないということだ。会期は9月23日まで。川越市立美術館と合わせてぜひご覧頂きたい。



Recording Words 021

2009-08-24 23:21:52 | ことば
「美しい」と発話することが他人の目を経由するということは、芸術とか表現といった行為がすべて、作り手の私一人では完結せず、私以外の誰かの目を必要としているということを意味する。
(保坂和志『小説の誕生』新潮社、2006年、p.240)

ここで「美しい」なんて言わないなどという考え方の人もいるかもしれないが、ここではどんな言葉でもかまわない。あなたが例え芸術や表現に「美しい」とは感じないとしても(その言葉を使いたくないとしても)、あなたの前にある「芸術」や「表現」はあなたの「目」を必要としている。
自分の存在が誰にも(どこにも)必要とされていないだって?

あなたは「芸術」に必要なのだ。

未読日記308 「地図の想像力」

2009-08-19 21:10:47 | 書物
タイトル:増補 地図の想像力
著者:若林幹夫
カバーデザイン:天野誠(magic beans)
カバー装画:Fool’s Cap World(1587年頃)
カバーフォーマット:佐々木暁
発行:河出書房新社/河出文庫
発行:2009年2月20日
定価:本体950円+税
内容:
私たちはいかにして、実際には見たことのない世界の全体をイメージすることができるのか。地図という表現の構造と歴史、そこに介在する想像力のあり様に寄り添いつつ、人間が社会を生きることのリアリティに迫る。「国家」「資本」「近代性」といった普遍的な問題を考える上でも示唆に富む、社会学的思考のレッスン。◎解説=石原千秋
(本書カバー裏解説より)

購入日:2009年8月14日
購入店:丸善 日本橋店
購入理由:
卒論を書く際にたいへんお世話になった本のひとつだが、最近になって増補版として文庫化され、いつか再び読まなければと思っていた。ここにきて、卒論で研究した「地図」と美術をめぐる問題について再び考える機会があり、増補ないし続編を書かなければと思い始めて購入した。
 なお、本書は「地図」をめぐって世界、社会、国家、近代を考察した稀有な研究である。文体もわかりやすく、読み進むたびに知的好奇心を刺激してくれる本であり、地図好き、社会学系の書籍に興味がある方にはぜひ読んで頂きたい本である。
 あれから5年経過したいま読んでみると、それと知らず影響を受けていたりと思われもする。だが、もともとから社会学に対する興味があり、そもそも大学も社会学か芸術学のどちらにしようか迷っていたぐらいだから、社会学的な視点には共感してしまうのだろう。まだ未読だが、今回加えられた「織物とデータベース」という補章からは、私が卒論で取り上げたアリギエロ・ボエッティの「地図」という染織作品について考察した際のキーワードと近似するものも感じ、興味深い。やはり地図はおもしろい。


Recording Words 020

2009-08-18 23:07:52 | ことば
「狭き門からはいりなさい。滅びに至る門は大きく、その道は広いからです。そこからはいって行く者が多いのです。いのちに至る門は小さく、その道は狭く、それを見いだす者はまれです。」
(日本聖書刊行会「マタイの福音書」保坂和志『小説の誕生』新潮社、2006年、p.67)

孫引きだが、印象的な言葉だったので引用したい。別に私は狭き門を見いだしているわけではなく、自戒としてこの言葉を覚えておきたい。つまり、なるべく小さく狭い門を、道を、選び通りたい。含みをもたせた言い方だが、多くの人が通り、選ぶものは注意した方がいい。それは滅びの道かもしれないのだから・・。

未読日記307 「新世代への視点2009」

2009-08-17 23:03:53 | 書物
タイトル:画廊からの発言―新世代への視点2009 
翻訳:名古屋覚
編集・デザイン:宇治晶、上田雄三(ギャラリーQ)
発行:東京現代美術画廊会議
発行日:2009年7月27日
内容:
東京・銀座で現代美術を扱う12画廊(1つは自由が丘)が中心となり開催された<―画廊からの発言―新世代への視点2009>展(2009年7月27日―8月8日)のカタログ。

ギャラリーなつか―深井聡一郎
コバヤシ画廊―市川裕司
ギャラリイK―加藤 崇
ギャラリー現―杉浦 藍
ギャラリー山口―古池潤也
ギャルリー東京ユマニテ―鎌田あや
藍画廊―菊池絵子
なびす画廊―釘町一恵
ギャラリーQ―柳井信乃
ギャラリー58―佐藤裕一郎
GALERIE SOL―森 哲弥
gallery 21yo-j―藤原彩人

作家コメント、作品写真、略歴
「記録・新世代への視点2008」

頂いた日:2009年8月8日
頂いた場所:gallery 21yo-j
gallery 21yo-j様ありがとうございます。
 今年で10回目となる<新世代への視点>展だが、以前は隔年開催だったような気がするが、いつから毎年開催になったのだろうか?また、今回から新たにギャラリー58、ガルリ・ソルが加わり、gallery 21yo-jが自由が丘に移転したものの継続参加で、銀座+自由が丘という広範囲な開催となった。
 展覧会について述べよう。気合いが入った大作が多い中で、余白が大きく取られた紙面に、鉛筆で脈略のないモチーフが小さい比率で描かれるドローイング作品の菊池絵子(藍画廊)と天井高7mの空間を活かした藤原彩人(gallery 21yo-j)の陶作品が楽しめた。だいたい12展回って1、2展の収穫があればいい方だろう。
 本冊子について述べれば、というより企画自体に関わることだが、テキストが不在であることが印象深い(前からそうだが)。そもそも<新世代への視点>はテーマが設けられているわけではなく、各画廊が若手作家を推薦、展示するシステムである。しかし、ほとんどが貸し画廊のためなのか、企画自体にテキストがいらないと判断しているのか、なぜ今年、この作家を選んだのかという理由がわからない。ここがコマーシャルギャラリーと違って、作品を言語化ないしプレスリリースを作成しない貸し画廊の悪い点である。ぜひ、選ぶということの責任を説明(テキスト)というかたちで表してほしい。

余談だが、本冊子は300円で販売していたが、一部のギャラリーでは無料配布しているのはなぜだろうか?



Recording Words 019

2009-08-14 23:46:03 | ことば
「幸せとか不幸せとか関係ない世界をみんなで作りましょう。」
(保坂和志『小説の誕生』新潮社、2006年、p.31)


上記の言葉は、保坂和志氏の言葉ではなく、氏が数年前のあるパーティのスピーチで麻薬不法所持の逮捕歴がある元パンクロッカー、現僧侶という男が話した言葉の孫引きである。
先の言葉に対して、保坂氏はこう続ける。
「この言葉には、人間と世界との関係の変化がある。まず「幸せ」と「不幸せ」が同じ系の中の解釈の問題にすぎないという認識が前提となっていることは当然として、この言葉には、「自分は世界からの見返りを期待していない。」という宣言ともいえる覚悟がこめられている。」

毎度毎度、怪しまれるような言葉を引用しているが、宗教的なわけではなく、もちろん不幸せより幸せの方がいいわけだが、幸せとか不幸せとかの思考の枠を超えた地点で、ものを考えたい。通常の思考なら「幸せ」⇔「不幸せ」というベクトルなのかもしれないが、長い時間軸で考えれば「幸せ」のなかに「不幸せ」があり、「不幸せ」の中に「幸せ」があるだろう。つまり、幸/不幸のボーダーなどわからず、そんなものとは関係ない世界に私は生きている。




未読日記306 「大学院へ行こう」

2009-08-13 21:36:16 | 書物
タイトル:大学院へ行こう
著者:藤倉雅之
装幀者:中島英樹
発行:講談社/講談社現代新書1803
発行日:2005年9月20日
内容:
身近になった大学院
第一にいえるのは、以前に比べて大学院が格段に身近になったということです。これは、学部学生以外の人にとってとくに顕著な動きです。大学院が多様な人材育成を心がけるようになった結果、社会人が新たな入学対象者として明確に意識されるようになったのです。一例を挙げると、近年「社会人入試」を行う大学院が増えました。(中略)新制度が次々に導入され、社会人が大学院へ進学しやすい環境が急速に整いました。これらの要因が複合的に作用して、大学院の量的拡大、とくに社会人大学院生の増加が実現したと考えられます。―本書より
(本書カバー裏解説より)

購入日:2009年8月3日
購入店:BOOK-OFF 橋本駅南口店
購入理由:
大学院案内と言える本書だが、内容としては臨床心理士大学院、MBAスクール、法科大学院、会計専門職大学院などに各論が割かれており、こういった分野で学びたい人にはとくに参考になるものと思われる(ただし、発行から4年経過しているので、変更点も多いと思われる)。
もともとは諸事情から大学院について調べていたところ、妹に参考になる本はないかと聞き、教えてくれたのが本書であった。その日に、野暮用で橋本に行った際、駅の近くの古本屋チェーンに入り探したところ、たまたま105円コーナーで見つけることができ、これも運だと思い購入した。

Recording Words 018

2009-08-10 22:28:59 | ことば
苦しい時こそチャンス。
(橋本美香『こんにちは。ありがとう。さようなら。』(第六番)<混沌から躍り出る星たち2009>展出品作品より)

2009年7月31日―8月8日まで東京・渋谷のスパイラルにて開催された<混沌から躍り出る星たち2009>展に出品された橋本美香のおみくじによる『こんにちは。ありがとう。さようなら。』のおみくじに書かれた言葉より。
展覧会場におみくじが置いてあれば、ひかずにはいられない身としては、さっそくトライしてしまう。ガチャガチャと振って、出てきた番号の札をひいて、取りだしたおみくじの言葉が上記の言葉である。
この程度の言葉かという悔しさと同時に、状況的に妙に符合するところもあり、苦笑いな一文であった。

おみくじによる作品といえば、齋藤芽生による作品が記憶に新しいが、齋藤による四畳半みくじと違って、このおみくじの言葉はやはり力が弱い(もっとも、他のおみくじの言葉は読めないが・・)。それは学生の卒業・修了作品だからというわけではなくて、おみくじという形式・コンセプトと言葉の関係が弱いせいだろう。もっとも、このような作品はおみくじへの期待値が鑑賞者(参加者)にあるわけで、その期待以上の言葉をひいた者に裏切りとともに与えなければいけないので、それはそれは難しい。

未読日記305 「八代目林家正蔵 弐」

2009-08-09 21:27:59 | 書物
タイトル:隔週刊CDつきマガジン 落語 昭和の名人 決定版⑮ 八代目林家正蔵 弐
編集人:宮本晃
監修:保田武宏
寄席文字:橘左近
CDリマスタリング:草柳俊一
アート・ディレクション:渡辺行雄
デザイン:片岡良子、姥谷英子
編集:小坂眞吾(小学館)、内田清子
制作企画:速水健司
資材:高橋浩子
制作:田中敏隆、南幸代
宣伝:長谷川一、山田卓司
販売:豊栖雅文、竹中敏雄
広告:林祐一
発行:株式会社小学館
発行日:2009年8月4日
金額:1,190円
内容:
真率な語りが人情を醸し出す
八代目林家正蔵【はやしや・しょうぞう】1895~1982 弐

CD(67分)[全席初出し音源]
怪談牡丹燈籠~幸手堤・・・因果は巡る 
笠と赤い風車・・・瞼に浮かぶ母の愛
伽羅の下駄・・・殿様からの贈り物

○落語の可能性に挑戦 怪談も文芸ものも、全身全霊で
○CD鑑賞ガイド 訥々として真に迫る描写
落語をもっと面白くする連載3本立て
田中優子○江戸の幽霊
五街道雲助○寄席のしきたり
山本進○吉本興業の台頭

購入日:2009年8月1 日
購入店:福家書店 橋本店
購入理由:
自分の中で再評価高まる八代目林家正蔵の第2弾。本書収録の写真に自宅の長屋で曾孫を抱く正蔵師匠の写真があるのだが、実にいい表情で和む。しかし、ただのじいさんに見えて、その落語は並々ならぬ至高の芸なのだから恐れ入る。

今回収録の話でもその芸が満喫できるが、平岩弓枝作による「笠と赤い風車」は物語を知ってしまえば、説教くさい親子愛の教訓話だが、正蔵の声によって語られると、人物が生きてくるから不思議だ。極論すれば1人の青年のグローイングアップストーリーだが、正蔵は古典的な風格を漂わせて訥々と丁寧にドラマを立ち上がらせる。ここには「人間」がしっかりと描かれていて感服する。これは、キェシロフスキの映画やドストエフスキーの小説にも類似するヒリヒリとした複雑なる人間の存在や「倫理」についての噺なのである。結局、もっとも本質的で古典的な「物語」とはこのようなものなのだと思う。

リポート「東京6区vol.5 FUJI SONIC '09」

2009-08-08 23:10:18 | Weblog
ご報告が遅れましたが、7月31日(金)新宿のACIDにて行われた<東京6区vol.5 FUJI SONIC ‘09>にお越し頂いた皆さま、どうもありがとうございます。
それでは、恒例のPIЯATAセットリストレヴューです。

19:00~19:40[PIЯATA]

1.UA/Horizon
2.Leyona/君が僕を知ってる
3.ウリチパン郡/テルマ
4.SAKEROCK/木陰
5.Little Tempo/African Jamboree
6.Sim Redmond Band/Roll a Few
7.Talking Heads/Totally Nude
8.電気グルーヴ/Fuji-San
9.和田アキ子/雨上がりの夜空に

今回は、フジロックフェスティバルとサマーソニックがテーマでした。そこで、前座としては、人のあまりいない時間帯ですので、あまり曲がかからないと予想される日本人アーティストを中心に夏らしい選曲をしてみました。

1はUAのデビューシングル。2はフジロックを代表するアーティスト忌野清志郎追悼でRCサクセションのカバーを。かけといて何ですが、Leyona嬢はよく知らないのですが、声が徳永英明に似てません? 3はユーラシア歌謡ポップとも言えるウリチパン郡のセカンドアルバムより。4はタイの曲をカバーしたもの。50年代風のスローサウンドが南国ムードを作り出しますが、日本人です。5はスティールパンが気持ちいいアフリカンサウンドですが、日本人です。6はアメリカのサーフロックバンド。まったりたり。続いて、スティールギターの音色でトロピカル感爆発な7はアメリカのトーキングヘッズです。もちろん両フェスに出てはいませんが、クリス・フランツ、ティナ・ウェイマスによるトム・トム・クラブが今年のサマーソニックに出演したので反則技ですがよしとしてください。8はフジロックと言えば、「富士山」(注;フジロックの開催場所は新潟です)ということで、電気グルーヴの「Fuji-San」を。登るゾ!ラストは再び忌野清志郎追悼で、これもフェス未登場の和田アキ子による「雨上がりの夜空に」カバーでさようならです。プロデュースは小西康陽。あれ?結局、忌野清志郎本人の曲は流してないゾ!
いままでで一番ジャンルごった煮ですが、夏なので許してください。
もうこれでおいらの夏休みは終わりました。さよならサマー。もう秋だ!冬だ!2010年だ!

それでは、また次回にお会いしましょう。