A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

散歩のとき何か食べたくなったのだ37 豆政

2011-06-30 23:49:31 | たべもの
購入日:2011年6月30日
商品名:水無月
購入店:豆政 大丸京都店
 ラジオで6月30日は水無月を食べる日だということを知る。6月30日は1年の折り返しにあたり、半年の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災を祈願する神事「夏越祓(なごしのはらえ)」が行われる。
 この「夏越祓」に用いられるのが、「水無月(みなずき)」という和菓子なんだとか。水無月は白い三角形の外郎生地に小豆をのせた菓子である。小豆は悪魔払いの意味があり、三角の形は暑気を払う氷を表しているといわれている。
 京都に来て初めて食べたが、涼しい甘さが喉に心地よくおいしかった。もちもちした食感もいい。


こちらは黒糖味です。

Recording Words 083 どこか遠く

2011-06-28 23:02:16 | ことば
「ああ、そうでした。そうそう、あれです。あれね、先生はいったいどこへ行こうって決めたんです? 前からそいつが気になってたんです」
「いや、どこっていうわけでもなく」
 それは本当にそうなのだった。私には望むべきコペンハーゲンだのイルクーツクだのという場所が思いつかない。
「まぁ、どこか遠く……ここじゃない、どこか遠くですよ」
「うん」
 急に帽子屋さんは子供のような返事をして、それから何度も何度もひとりで頷いた挙句、
「遠く。いいねぇ」
 しみじみとして、そうつぶやいた。
「どこか遠く。それでいいんです。決めない方が。終わりのない方がね」
 そうして帽子屋さんは、ずずっと音をたててお茶をすすった。

(吉田篤弘『つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)』筑摩書房、2005年、p.130)

どこか遠く。終わりのない遠くへ。行き先は決めてない。決めないことにしている。



未読日記521 「ON THE ROAD」

2011-06-27 23:18:55 | 書物
タイトル:森山大道 オン・ザ・ロード
編集:中西博之
制作:月曜社
アートディレクション:長谷川充信
発行:月曜社
印刷・製本:光陽社
発行日:2011年6月27日
内容:
展覧会カタログ
B5判変型(タテ238mm×ヨコ190mm)、ソフトカバー400頁(2C+4C+解説・資料)
「オン・ザ・ロード 森山大道写真展」
2011年6月28日(火)~9月19日(月・祝)
国立国際美術館

1960年、ぼくの写真は大阪の路上からはじまっている。そして、半世紀をへて現在にいたるまで、ぼくは延々と長いフィルムの道をカメラを手に歩きつづけてきた。
「On the Road」は、そんなひとりのカメラマンが足でたどったロードマップであり、時間と伴走してきたひとまずの履歴書である。――森山大道

にっぽん劇場写真帖(1968年)、狩人(1972年)、写真よさようなら(1972年)、遠野物語(1976年)、光と影(1982年)、サン・ルゥへの手紙(1990年)、Daido hysteric(1993‐97年)、新宿(2002年)など330余点の写真と、新作カラー「東京」を収録。
(本書、帯より)

にっぽん劇場写真帖
狩人
写真よさようなら
遠野物語 続にっぽん劇場写真帖
光と影
仲治への旅 サン・ルゥへの手紙
Daido hysteric
COLOR
新宿
ブエノスアイレス ハワイ 記録
東京
「森山大道 オン・ザ・ロード」中西博之(国立国際美術館)
「森山大道 ストレイ・ドッグ」サンドラ・S・フィリップス(サンフランシスコ近代美術館写真部門シニア・キュレーター)、甲斐義明・林田新 訳
森山大道年譜 蔦谷典子編
出品リスト

頂いた日:2011年6月27日
場所:国立国際美術館
 内覧会にて頂いた1冊。どうもありがとうございます。
写真家・森山大道は大阪出身だが、関西の美術館での個展は今回が初めて。美術館における森山大道展は川崎市市民ミュージアム、東京都写真美術館などで開催され、それぞれ見ているので新鮮さはない。
 だが、今展は総出品数約500点というボリュームを考えるとベスト・オブ・森山大道といえる決定版として、見応えがある。なお、新作「東京」は、デジタル/カラーになっても森山大道の作風がまったく変わらないことを証明している傑作だ。来年刊行予定の写真集が楽しみだ。
 展示は新作を森山氏本人が、旧作を学芸員の中西氏がディレクションしたという。展示の違いや構成の妙、作品選択などについて考えてみると、興味深い。個人的には、作家本人がディレクションをした新作「東京」はスケール感があってさすが。また、会場出口には森山大道が使用してきたカメラが展示されている。素っ気なくリコーのデジタルカメラGRが展示されているのが、なんだかおかしい。

 カタログは、展覧会の構成を反映したアンソロジーとなっている。すべての写真は掲載されていないものの1ページ・1作品を掲載したことで見やすい。ときどき、写真展のカタログで2~3点の作品を1ページに割りつけたものを見かけるが、やはり見にくいので、今展の編集方針は評価したい。森山ファンならずとも、森山大道の写真集を初めて買うという人にもおすすめしたい1冊だ。

散歩のとき何か食べたくなったのだ36 カフェテリア「結」紀伊國屋

2011-06-26 23:33:20 | たべもの
購入費:2011年6月25日
品名:アイスコーヒー
店名:成安造形大学 カフェテリア「結」紀伊國屋

 成安造形大学にて開催された「SEIAN ARTS ATTENTION VOL.0 Mixing Voices ―響きあうイマジネーション―」(2011年5月20日(金)~6月25日(土))に行った際、カフェでアイスコーヒーを飲んで一服。
 窓からは琵琶湖が見えて、眺めがいい。暑さについ飲むことに集中し、写真を撮るのを忘れる。だいぶ飲んでから写真を撮ったので、飲みかけの画像ですいません。ごちそうさまでした。



Recording Words 082 いちばん肝心なこと

2011-06-25 23:59:22 | ことば
 いや、事態はもっと困ったことになっていて、ロベルト・カルロスだの体脂肪率だのの知識を深めることに気をとられ、そもそも、いちばん肝心なことが何だったのかを忘れてしまっている。
 私にだって、昔から何度も反芻してきた重要な自問があったはずなのだ。そして、何よりそれこそが自分の人生に課された大きなテーマだと認識していたはずなのである。たしか。
 それを忘れてしまったのか、あるいは知らないうちにいつのまにか時効が訪れ、問いそのものが価値を失ってしまったのか、それともなんなのか?
「ああ先生ね、それが歳をとったっていうやつなんです」
 その夜の食堂で、帽子屋さんがあっさりそう言ってのけた。
「わたしにも経験あるなぁ。そういう日がね、来るんです。来ちゃうんです。いや、決して何かをあきらめたとか、そういうんじゃなく、何かもっと自然にね、どうでもよくなってしまうんだなぁ、これが」

(吉田篤弘『つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)』筑摩書房、2005年、pp.94-95)


そんな日が来るのかなぁ。いや、もう来てるのか?

未読日記520 「図説 鉄道パノラマ地図」

2011-06-24 23:19:33 | 書物
タイトル:図説 鉄道パノラマ地図 (ふくろうの本/世界の文化)
編者:石黒三郎+アイランズ
装幀:津嶋佐代子(津嶋デザイン事務所)
発行:河出書房新社
発行日:2010年4月30日
定価:1800円(税別)
内容:
明治から昭和まで、各地の鉄道会社は吉田初三郎らが描いた沿線の名所・行楽地を紹介するパノラマ地図を作り客の誘致に努めた。関東・東海・関西の地図から往時の鉄道路線と沿線風景を探る。
(河出書房新社ウェブサイトより)
A5変型、128頁

本書の内容
はじめに 都市の沿線にもあった山紫水明
1章 関東 東京・横浜を中心とした鉄道パノラマ地図
2章 東海 名古屋を中心とした鉄道パノラマ地図
3章 関西 京都・大坂・神戸を中心とした鉄道パノラマ地図
参考図書一覧/クレジット
掲載「鉄道パノラマ地図」一覧
(目次より)

購入日:2011年6月20日
購入店:Amazon.co.jp
購入理由:
 鉄道パノラマ地図における絵画的表象について調査するため参考資料として購入。全体図がカラーなのは当然として、部分図が白黒図版なのが減点か。とはいえ、データや資料なども豊富で持っておいて損はない。
 ところで最近、鉄道本ばかり買っているが、わたしは鉄道ファンでも鉄ちゃんでもありません。ただ研究のため、仕方なく買うているのです。強いて言うならば乗り鉄ではあるが、常識的なレベルだと思う(なにが普通か自信がないが・・)。
 こんど、内田百にならって阿房列車しませう。




Recording Words 081 自信

2011-06-23 23:52:16 | ことば
 でもやっぱり、人が何より欲しいのは、「自信」なのかなと思う。それさえあれば、すべてうまくゆくような気がするから。私だって、果物屋でそいつを売っていたら、毎日欠かさず買っているに違いない。
(吉田篤弘『つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)』筑摩書房、2005年、p.61)

私だって、スーパーマーケットでそいつを売っていたら、毎日欠かさず買っているに違いない。

未読日記519 「全國鐡道旅行繪圖」

2011-06-22 23:09:46 | 書物
タイトル:全國鐡道旅行繪圖
著者:今尾恵介
発行:けやき出版
発行日:2011年4月20日
定価:1900円(税別)
内容:
「鐵道旅行繪圖」とは、昭和初期から20年代にかけて、全国の私鉄各社が製作した沿線案内のこと。吉田初三郎をはじめとする絵師による克明な鳥瞰図を、駅や地名、名所も無理なく読み取れる原寸大で掲載。本書では、東海道1 首都圏15 東海3 近畿12 大分1 と、計32の貴重な沿線案内絵図を紹介。
地図や鉄道の知識が豊富な著者ならではの「解読」で、それぞれの絵図が描かれた当時の鉄道事情や地域の歴史を味わい、時代を超えた鉄道旅行に出発しませんか。
A5判 255頁

京成電車沿線案内(京成電鉄)
銚子へ 銚子鉄道(銚子電気鉄道)
城東電車沿線案内(東京都電―廃止)
王子電気軌道沿線案内(東京都電荒川線ほか)
西武電車沿線御案内(西武鉄道)
京王電車沿線名所図絵(京王電鉄)
奥多摩 青梅電気鉄道(JR青梅線)
小田原急行鉄道沿線名所案内(小田急電鉄)
小田急沿線案内(小田急電鉄)
目黒蒲田・東京横浜電鉄沿線名所案内(東急電鉄)
横浜市鳥瞰図 画・吉田初三郎
湘南電鉄沿線案内図(京浜急行)
神中鉄道沿線案内(相模鉄道)
江ノ島電車 江の島と鎌倉(江ノ島電鉄)
東海道沿線旅行案内図(東海道本線)
愛知電鉄沿線御案内(名鉄名古屋本線ほか)
瀬戸電鉄沿線御案内(名鉄瀬戸線)
参宮急行電鉄沿線名所図絵(近鉄大阪線・山田線ほか)
奈良電車沿線御案内(近鉄京都線)
信貴生駒電車沿線名勝案内(近鉄生駒線・京阪交野線)
大津市鳥瞰図 画・吉田初三郎
叡山鞍馬電車 秋のおとづれ(叡山電鉄)
嵐山電車・愛宕ケーブル御案内(京福電鉄) 
京阪電気鉄道線路略図(京阪電鉄・阪急京都線ほか)
新京阪電車沿線案内図(阪急京都線)
阪神急行電鉄沿線御案内(阪急神戸・宝塚線)
阪神電車沿線案内(阪神電鉄)
南海電車沿線案内(南海電鉄)
阪和電鉄沿線御案内(JR阪和線)  
神戸有馬電鉄沿線案内(神戸電鉄)
山陽電鉄沿線案内(山陽電鉄)
井笠鉄道 備南名所交通図絵(井笠鉄道―廃止)
耶馬渓鉄道耶馬渓案内(大分交通耶馬渓線―廃止)
(けやき出版ウェブサイトより)

購入日:2011年6月19日
購入店:Amazon.co.jp
購入理由:
 初三郎の本をアマゾンで探していて見つけた1冊。今年の4月に出たばかりで知らなかった。
 これまでの研究で、鉄道路線図は図録や単行本などで数多く見てきたが、細部まで見れないのが不満だった。だが、本書では原寸大、拡大図版が中心で細部まで見たい地図心を満足させてくれる。こんな本が欲しかったというピンポイントな1冊。鉄道地図ファン必携。

鉄道唱歌


Recording Words 080 風のなかを自由にあるけるとか

2011-06-21 23:00:05 | ことば
八月二十九日附お手紙ありがたく拝誦いたしました。
あなたはいよいよご元気なようで実に何よりです。
私もお陰で大分癒っては居りますが、どうも今度は前とちがってラッセル音容易に除こらず、咳がはじまると仕事も何も手につかずまる二時間も続いたり、或は夜中胸がびゅうびゅう鳴って眠られなかったり、仲々もう全い健康は得られそうもありません。
けれども咳のないときはとにかく人並に机に座って切れ切れながら七八時間は何かしていられるようになりました。
あなたがいろいろ想い出して書かれたようなことは最早二度と出来そうもありませんがそれに代わることはきっとやる積りで毎日やっきとなって居ります。
しかも心持ばかり焦ってつまずいてばかりいるような訳です。

私のこういう惨めな失敗はただもう
今日の時代一般の巨きな病、「慢」というものの
一支流に過って身を加えたことに原因します。
僅かばかりの才能とか、器量とか、
身分とか財産とかいうものが
何かじぶんのからだについたものででもあるかと思い、
じぶんの仕事を卑しみ、同輩を嘲けり、
いまにどこからか
じぶんを所謂社会の高みへ
引き上げに来るものがあるように思い、
空想をのみ生活して
却って完全な現在の生活をば味うこともせず、
幾年かが空しく過ぎて
漸くじぶんの築いていた蜃気楼の消えるのを見ては、
ただもう人を怒り世間を憤り
従って師友を失い憂悶病を得るといったような
順序です。
あなたは賢いしこういう過りはなさらないでしょうが、
しかし何といっても時代が時代ですから
充分にご戒心下さい。

風のなかを自由にあるけるとか、
はっきりした声で何時間も話ができるとか、
じぶんの兄弟のために
何円かを手伝えるとかいうようなことは
できないものから見れば神の業にも均しいものです。
そんなことはもう
人間の当然の権利だなどというような考では、
本気に観察した世界の実際と余り遠いものです。

どうか今のご生活を大切にお護り下さい。
上のそらでなしに、
しっかり落ちついて、
一時の感激や興奮を避け、 
楽しめるものは楽しみ、
苦しまなければならないものは苦しんで
生きて行きましょう。

いろいろ生意気なことを書きました。
病苦に免じて赦して下さい。
それでも今年は心配したようでなしに作もよくて
実にお互い心強いではありませんか。

また書きます。

(宮沢賢治「1933年 かつての教え子、柳原昌悦への手紙」、宮沢賢治・川原真由美 画『あたまの底のさびしい歌』、港の人、2005年、pp.129-138)

また書きます。

未読日記518 「広告の誕生」

2011-06-20 23:06:56 | 書物
タイトル:広告の誕生―近代メディア文化の歴史社会学 (岩波現代文庫)
著者:北田暁大
発行:岩波書店
発行日:2008年12月16日
定価:1000円+税
内容:
広告とは何か。存在としての緩さ、過剰な言説との不均衡を解明
(帯より)
近代日本のメディア・消費文化にとって、広告が果たした役割とは何か。広告とは、いかに「意味の媒体」であり続けたのか。存在としての緩さ、過剰な言説との不均衡を解明しつつ、1920年代から現代に至る時代空間の中で、広告の変容を考察する。俊英による刺激的な力作論考。(解説 遠藤知巳)
(カバー見返し解説より)

凡例
序章 問題と方法
 1 広告のある風景――消費社会のイメージ装置
 2 広告の存在論――ベンヤミンから
 3 方法をめぐって――広告コードと受け手の身体性
第1章 孤立する広告
 第1節 見世物のなかの/としての「広告」
  1 「文芸」と「広告」――戯作の読書空間と「広告」
  2 遊動空間のなかの「広告」――現前性(presentation)の表象空間
 第2節 広告の誕生
  1 広告の萌芽――《舞台》としての新聞
  2 《香具師的なるもの》の回帰――売薬広告をめぐって
  3 言説の逡巡――売薬広告とそのメタ言説
第2章 散逸する広告
 第1節 広告の美学化
  1 《三越的なるもの》とポスター――啓蒙のメディアとしての美人画ポスター――
  2 文化としてのテクノロジー――石版ポスターの表象空間
  3 「趣味」の涵養――初期ポスターの受容空間
 第2節 広告の工学化――工学の所産としてのポスター
  1 刺激としてのポスター――ポスターの媒体性への注視
  2 刺激の工学――商業美術(家)のアイデンティティ
 第3節 散逸する広告空間
第3章 融解する広告
 第1節 流動する《舞台》
  1 《舞台》の粉飾――《私的な遊動空間》の構築
  2 踊る広告――広告の「散逸」と「融解」
 第2節 〈欲望〉する女性と広告
  1 受け手としての女性――〈注意散漫〉な身体
  2 読み手/買い手としての女性――レスペクタビリティと逸脱性の〈あいだ〉
  3 〈欲望〉する女性と消費――消費社会の虚焦点
 第3節 融解する広告空間
終章 遊歩の弁証法

あとがき
岩波現代文庫版あとがき
解説 遠藤知巳
索引
(目次より)

購入日:2011年6月19日
購入店:Amazon.co.jp
購入理由:
 大正時代の観光鳥瞰図を調査している中で、鳥瞰図の制作に印刷技術の変遷が影響していることがわかってきた。そこで、同時代の広告について書かれた本書が参考になるかもしれないと思い、図書館で借りて読んだみた。読み始めると、なかなか刺激的でおもしろかったので購入することにした。
 私にとっては、第2章がとくに参考になった。鳥瞰図を挿絵=広告(ポスター)と捉えると、議論の参考になるかもしれない。余談だが、浮世絵とポスターは、始まりが美人画という点で共通している。浮世絵が現代のブロマイドや写真だとすれば、昔から人々は女性のアイコンを欲したということか。