A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記203 「αmPROJECT 2008 岡村陽子」

2008-09-30 23:35:13 | 書物
タイトル:αmプロジェクト2008 現われの空間Vol.3 岡村陽子
デザイン:河野伊央、長内研二
発行:武蔵野美術大学
発行日:2008年9月24日
内容:
東京・京橋のart space kimura ASK?で開催された<αmプロジェクト2008 現われの空間Vol.3 岡村陽子>展(2008年9月24日-10月11日)の展覧会カタログ。

テキスト:住友文彦(αmプロジェクト2008キュレーター/東京都現代美術館学芸員)
図版8点、作家略歴

入手日:2008年9月27日
入手場所:art space kimura ASK?
鉄線を用いて木が作られたり、テーブルに塩が盛られた作品が制作されたインスタレーション。素材となる物質にもちろん見覚えはあるのだが、現われた空間は落ち着かずあまり集中できない。ひとつひとつ物資にはそれを選び取った思いなどもあるのだろうが、あまり関心がむかず、平面的で単調な印象をもつ。
いつも思うのだが、αmプロジェクトの会場となるASK?は天井が低く、このようなインスタレーションはあまり風景として突き抜けられず、ゴチャゴチャした印象を与え、もったいなく思う。それに心なしか照明が暗く見える。気のせいか、意図的なのか‥。
ちなみに、今回の展覧会を見て確信したのは、私はキュレーターの住友氏とは趣味が合わなそうだということだった。この先のラインナップも絶望的な内容で、このプロジェクトの方向性に疑問を持たざるえない。時代の流行がインスタレーションなのはかまわないのだが、「現われの空間」を出現させるのはインスタレーションにしかできないわけではない。絵画でも写真・映像、彫刻でもできることだと私は確信している。


TOUCHING WORD 064

2008-09-26 00:35:44 | ことば
「ありがたいことに、生まれつき意志の力が弱くても、少しずつ強くなれますよ。少しずつ、長い時間をかけて、だんだんに強くしていけばね。生まれつき、体力のあまりない人でも、そうやって体力をつけていくようにね。最初は何にも変わらないように思います。そしてだんだんに疑いの心や、怠け心、あきらめ、投げやりな気持ちがが出てきます。それに打ち勝って、ただ黙々と続けるのです。そうして、もう永久に何にも変わらないんじゃないかと思われるころ、ようやく、以前の自分とは違う自分を発見するような出来事が起こるでしょう。そしてまた、地道な努力を続ける、退屈な日々の連続で、また、ある日突然、今までの自分とは更に違う自分を見ることになる、それの繰り返しです」
(p.73 『西の魔女が死んだ』梨木香歩、新潮社/新潮文庫2001.8)


 登校拒否をした少女が、西の魔女ことママのママ、大好きなおばあちゃんのもとですごすひと月を描いたこの小説は、ただの少女の成長物語というには収まらない「教訓」を与えてくれる。祖母である魔女による魔女修行などというと、おとぎ話めいた物語を想像してしまっていたが、この本における「魔女」の存在はいままでの「魔女」とはちょっと違うのだ。教えることは自然のこと、人生のこと、歴史のことであり、修行の肝心かなめは「何でも自分で決める」ということだと言うのだ。はたして、これが「魔女」なのだろうか。


 簡単にしてしまうなら、この本での「魔女」は「おばあちゃん」のことであり、「魔女」が教える「魔女修行」は、おばあちゃんの「知恵」のようなものではないだろうか。祖母と孫の交流を描いたお話など数多あるところ、この物語は「魔女」という設定のもと、現代に生きる少女の物語に別次元の空間を導入しているのだ。このファンタジー的な設定を地に足の着いた物語で、細部まで丁寧に展開していくところが意外なほど心打たれた。


 この物語で少女の成長を描き出す描写において、とても鮮やかな手段が使われている。それは、言葉を憶える、使うということだ。

「認めざるをえない」
 まいは小さく呻るように呟いた。この言葉は初めてつかう言葉だ。まいはちょっと大人になった気がした。
 (p.16)

 「流出」という言葉は最近本で覚えた。でも実生活で使ったことはないので、まだ自分の言葉という気がしていない。
 (p.182)

 少女は言葉を覚え、使う過程で言葉を自分のものにし、自分の言葉を話せるようなる。主人公の少女は、自分の感情を言葉にしたいのにできないもどかしさを、周囲の大人たち、本で読んだ言葉から、自分のものにしていくのだ。そのとき、少女に大きな力を与えるのがこの「魔女」だった。
「魔女」の口癖は「アイ・ノウ」だ。
いつでも「魔女」は知っている。わかっているのだ。
少女は「魔女」にその時々の感情、思いを打ち明ける。その言葉のやりとりは、感情をどうにか言葉に変換しようとする作業のようなのだ。


なぜ、年の離れた祖母である魔女と少女が心を通わせることができのか。
それは「魔女」が「想像力」を持っていたからではないだろうか。
それは、最後、西の魔女が死んだときの少女の思考の軌跡からわかる。

 ああいう別れ方でおばあちゃんをひとりあそこに残して去ったのは、もしかするとひどく残酷なことだったのではないだろうか。
 ようやく想像力の翼がそこまで達すると、まいは何だか重い気分になってくる。
 (p.183)

「想像力の翼」。魔女修行の果てに、少女が手にしたのはこの「想像力の翼」だったのかもしれない。重い気分にさせもするが、この思考の軌跡が達した瞬間こそ、「以前の自分とは違う自分を発見するような出来事」だったのではないだろうか。




A PIECE OF FUTURE 2008.9.24

2008-09-24 23:35:06 | 美術
今日も街を彷徨います。
歩いて歩いて歩き続けます。いろんな風景を見て、いろんな人とすれ違います。
秋の空気は私にはとても居心地がいいのです。


○ソニーで感じる「シネマ歌舞伎」展
2008年9月20日(土)-10月22日(水)
銀座ソニービル

シネマ歌舞伎『人情噺文七元結』『連獅子』(監督:山田洋次、出演:中村勘三郎)の公開記念で行なわれるソニーのハイビジョン技術の紹介を兼ねたイベント展覧会。何ごとにおいても裏方好きな私は、映画の舞台裏・メイキング物が昔から好きだ。この展覧会も内容は企業の技術紹介・プレゼンのような展覧会で期待はしないが、無料なので行ってみようか‥。

シネマ歌舞伎→http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/

○クンスト・オクトーバーフェスト2008:東京中央地区現代美術画廊巡回
2008年10月4日(土)13:00-19:00
東京都中央区、千代田区内参加画廊バス巡回

10月にドイツ・バイエルン州の州都ミュンヘンで開催される世界最大の(ビールの)お祭り「オクトーバーフェスト」にちなんで、ビールとアートを一緒に楽しんでしまおうというおいしい企画。中央地区のギャラリーをビールつきバスツアーで北ルート、南ルートに分かれて見ることができる。その数18画廊で、バスもビールも無料だという!都心とはいえ、なかなか電車と徒歩で回るのは難しいもの。こんなおいしい機会にビールを飲みに、じゃなくてアートを見に行きませう。prost!(乾杯!)

クンスト・オクトーバーフェスト2008→http://blog.livedoor.jp/roentgenwerke/archives/50648780.html

参加画廊
タグチファインアートBASE galleryunseal contemporaryart project franticクンストバウ|東京ギャラリーハシモトクムサンギャラリーラディウム(株式会社レントゲンヴェルケ)、CASHITARO NASUギャラリーショウコンテンポラリーアートオオタファインアーツワダファインアーツnca | nichido contemporary artTKG editionsアラタニウラノMEGUMI OGITA GALLERY STUDIOギャラリー小柳東京画廊+B.T.A.P

日本版オクトーバーフェスト2008はこちら→http://www.nihon-oktoberfest.com/


○生活と芸術-アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで
2008年9月13日(土)-11月9日(日)
京都国立近代美術館

<UK-JAPAN 2008>関連企画の1つ。同名の[イギリス→アメリカ]展とは別内容。こちらは[イギリス→日本]編か。アーツ&クラフツ多し。ちなみに、東京に巡回予定あり。

○生誕110周年 スターと監督 大河内傳次郎と伊藤大輔
2008年10月7日(火)-11月21日(金)
東京国立近代美術館フィルムセンター

大河内傳次郎と伊藤大輔の傑作群がフィルムセンターに!歌舞伎の影響をもとに現代的な映画話法、表現を取り入れた伊藤大輔映画を見直すいい機会になりそうだ。さらに、ユネスコ「世界視聴覚の日」記念特別イベントとして、フィルムが失われ<幻の映画>となっている『新版大岡政談』(1928)をスチル写真のスライド上映、ピアノ伴奏、弁士つきで再現公演まで行なうという映画の再構築プロジェクトに賞賛をおくりたい。

○Art Program Ome 2008 空気遠近法・青梅-U39
2008年11月9日(日)-11月24日(月)
青梅織物工業協同組合施設
東京都立青梅総合高等学校・講堂

出品作家:山極満博、永澤孝博、平野健太郎、富井大裕、木島孝文、小林耕二郎、木村友香、南条嘉毅、久村卓、馬塲稔郎、山本篤、高橋和臣

「“空気”感と東京から眺めた青梅-遠近という場所性-をテーマに12人のアーティストが共演」する6回目の<Art Program Ome>。今年から若手作家中心となり、集客的には知名度が低いが、内容としては未知数でなにが見られるか楽しみだ。
展覧会チラシ・Webに掲載されている解説に20代後半から30代後半のロストジェネレーション世代には「密かなもの、さりげないもの、目に見ることのできない空気のようなものとらえようとする眼差し」が共通項としてある、と書かれている。その世代分析になるほどと思う。世代論は好まないのだが、私もそのロストジェネレーション世代なだけに、その指摘があっているかどうか確認してみたいものだと感じる。ただ、男性作家中心なのはいただけない。青梅周辺に在住・活動している作家という括りなのだろうが、サッカーではないのだから、U-39と言えど女性作家ももう少し加えて欲しかった。

Art Program Ome 2008「空気遠近法・青梅-U39」展
Webサイト→http://www.u39-ome.net/

○ART IN TIME AND STYLE MIDTOWN VOL.4
2008年8月2日(土)-11月27日(木)
TIME & STYLE MIDTOWN

出品作家:設楽知昭、高橋大輔、森本太郎、戸川英夫

○BankART Bank under 35
2008年9月13日(土)-11月30日(日)
BankART Mini Gallery

出品作家:田中功起、松田直樹、菊池宏、ヤング荘、SHIMURABROS. 、矢内原充志、村田峰紀、西田司&藤村龍至
「若いクリエイターによる週替わりの展覧会シリーズ。現代美術・グラフィック・ファッション・建築等の35歳以下のクリエイターを紹介。各々16pのカタログを発行予定。」(本展チラシより)
こちらはU-35‥。アート界も年齢制限制導入なのか?そのうち体重別で展覧会が行なわれたりしたりして。

○青のコレクション ピカソの青、モネの青
2008年9月10日(水)-12月7日(日)
アサヒビール大山崎山荘美術館

○ヴィジョンズ・オブ・アメリカ 第3部「アメリカン・メガミックス」1957-1987
2008年10月25日(土)-12月7日(日)
東京都写真美術館

主な出品作家
ダイアン・アーバス/エリオット・アーウィット/ロバート・フランク/リー・フリードランダー/ナン・ゴールディン/北島敬三/ロバート・メイプルソープ/リチャード・ミズラック/森村泰昌/奈良原一高/シンディ・シャーマン/篠山紀信/アンディ・ウォーホル/ゲリー・ウィノグランド/ジョエル・ピーターウィトキン/他

収蔵展の「ヴィジョンズ・オブ・アメリカ」三部作の最終展。最後なだけに出品作家が豪華だ。関連イベントの講演会「60年代から70年代へ:ソーシャル・ランドスケープとニュー・ドキュメンツ」(講師:戸田昌子/中川裕美)もアメリカ現代写真についての認識を深めてくれそうだ。この展覧会シリーズは関連イベントで若手研究者を積極的に起用していて、この点でも好感がもてる。

○高嶺格[大きな休息] 明日のためのガーデニング1095㎡
2008年11月29日(土)-12月24日(水)
せんだいメディアテーク6階ギャラリー4200

1095㎡の空間を前にして[大きな休息]をとられてもこちらが困ってしまうんじゃないかと懸念を覚えるが、どうなるのだろうか。ところで、チラシに掲載されている高嶺氏の以下の言葉が印象深かったので紹介したい。

 随分前から、世界は僕にとって
 えらく平たくなってしまっていて、
 良く言えば「平等」、
 悪く言えば「平坦」なのですが、
 それでもくだらないものや
 素晴らしいものはあります。
 僕は世界を見るとき、
 あんまり「人」で判断しないようにしています。
 くだらないのは「くだらない瞬間」であって、
 素晴らしいのは「素晴らしい瞬間」です。
 くだらない人間というのは、
 「くだらない瞬間を多く生み出してしまう人」
 のことです。
 そんな人のことを、
 だんだん「キライ」になって
 いったりするのだと思います。
 「イアマスでのワークショップ(2001年)」


TOUCHING WORD 063

2008-09-22 23:00:53 | ことば
しかし彼はやはりいつまでも故郷も目標も持たないだろう。けっして彼はほんとに安全に守られていると感じることはなく、いつも世界が彼をなぞの美しさで、なぞの気味わるさで取り囲むだろう。そして彼は絶えずこの静けさに耳を傾けなければならないだろう。そのただ中で鼓動する心臓は、頼りなく、はかなかった。星はほとんど見えず、無風だったが、上空では雲が動いているらしかった。
(p.196 「知と愛」『新潮世界文学37 ヘッセⅡ』ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳、新潮社1968.11)

仕事場でのことだ。手を押さえつけられ、指の爪の真ん中から掌に向けて刃物で裂かれる。激痛が襲い、悲鳴をあげるも、刃物を持ったその人物は薬指、中指へと一本一本、指の肉を裂いていこうとする。もがき逃げようとするが、逃げられない・・・そんな夢を2日間も続けて見た。この気味悪さはなんだろうか・・。

A PIECE OF FUTURE 2008.9.18

2008-09-18 22:56:14 | 美術
恒例の週間アートリンク集。チラシの画像をアップできればいいのですが、多すぎてできません‥。

ところで、芸術の秋だから展覧会に行くのではなく、日頃から美術館、ギャラリーにもっと行きませう。日本の美術の未来は観客である私たちの手にかかっています。美術がわからない、つまらないとか言う前にまずは見るべきではないでしょうか?失礼、ついつい余計なことを書いてしまいました。

○THE ECHO
2008年9月13日(土)-10月5日(日)
ZAIM, 横浜

日本の若手アーティストによるグループ展。横浜トリエンナーレ2008の関連企画か。個人的には、さわひらき、政田武史、山口智子らが気になる。

○アール・デコの館 庭園美術館建物公開
2008年10月1日(水)-10月13日(月・祝)
東京都庭園美術館

今回初めて公開するスペースもある恒例の庭園美術館の建物公開。気になる関連イベントはガーデニング・デモンストレーションや庭園ツアーを行う「お庭の日」と庭園美術館カタログSALEだ。前回の舟越桂展で邸宅美術館ならではの空間を生かしきった展示も記憶に新しいだけに、今後はどのような展示で楽しませてくれるのか楽しみだ。

○dual points - softpad、高木正勝
2008年9月13日(土)-10月13日(月)
京都芸術センター


○都市のディオラマ
2008年9月13日(土)-10月13日(月)
トーキョーワンダーサイト渋谷

○ピピロッティ・リスト:ゆうゆう
2008年7月13日(日)-10月13日(月・祝)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

今年2月まで原美術館において開催された個展とは別内容。お金があれば見に行くのに‥。

○国貞・国芳・広重とその時代 幕末歌川派の栄華
前期:2008年10月1日(水)-10月26日(日)
後期:2008年11月1日(土)-11月26日(水)
太田記念美術館

○線の巨匠たち-アムステルダム歴史博物館所蔵 素描・版画展
2008年10月11日(土)-11月24日(月・祝)
東京藝術大学大学美術館

○茶人のまなざし 森川如春庵の世界
2008年10月4日(土)-11月30日(日)
三井記念美術館

○behind the seen アート創作の舞台裏 ケーススタディ:篠原猛史、小川信治
2008年10月11日(土)-12月7日(日)
東京大学 駒場博物館

「アーティストはどのように考え、発想し、作品を作り上げていくのか?認知心理学者がみつけた創作の秘密」というテーマのもと、ケーススタディとして篠原猛史、小川信治の2名が取り上げられている。大学の博物館なだけに、実験的、研究的な内容だが、実は一般の人にとっても興味深い問題なのではないだろうか。


TOUCHING WORD 062

2008-09-17 22:33:27 | ことば
世界とその神秘の深さは、雲の黒ずんでいるところにはない。深さは、澄んだ明るさの中にある。お願いだ。寝る前にしばらく、星のたくさんある入江や海峡をながめたまえ。そしてそのとき、思想や夢がわいてきたら、それをしりぞけないようにしたまえ。
(p.560 「ガラス玉演戯」『新潮世界文学37 ヘッセ』ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳、新潮社1968.11)

星のたくさんある入江や海峡は近くにないので、月を眺めた。
たくさんの思考や不安がわいてきた。
そのうち月は雲に隠れた。
すると不安も隠れた。
いまはどうすればいいかわからない。
いまは、月を待ち、再び眺めることにしよう。

A PIECE OF FUTURE 2008.9.11

2008-09-11 23:10:27 | 美術
ここのところ時間がなく、行きたい展覧会になかなか行かれていない。
だが、いまはそういう時期なのだろう。
見に行ける展覧会も何かのご縁ということだろう。
今年もあと3ヵ月と半分。
あとどれぐらいの縁があるだろうか。


●時代を駆け抜けた二人 白州次郎と白州正子展
2008年9月10日(水)-9月23日(祝・火)
松屋銀座 8階大催場

近年、再評価されて定着した感のある白州夫婦を取り上げた展覧会。プリンシプルな生き方を貫いた白州次郎の思考には学ぶべきところ大である。白州正子という人はいまだどのような人なのか私にはわからないのだが、その著作を読んだ方が彼女の思考・ものの見方はわかりそうな気がする。

●Very Autumn 草月の秋
2008年9月3日(水)-9月23日(火・祝)
玉川島屋S・C

●特集陳列 中国書画精華
前期2008年9月9日(火)-10月5日(日)
後期2008年10月7日(火)-11月3日(月・祝)
東京国立博物館 東洋館第8室

最近、江戸東京博物館にて<北京故宮 書の名宝展>を鑑賞する機会があったのだが、中国の書のすばらしさにあらためて感嘆した。この東博の特集展示で中国書画の世界にさらに触れていきたい。

●ボストン美術館浮世絵名品展
2008年10月7日(火)-11月30日(日)
江戸東京博物館

ボストン美術館の浮世絵展は最近何度もやっている気がして新鮮味はないが、今回は幻のスポルティング・コレクションの版本も出るというので行くべきか‥。

●米田知子展 終わりは始まり
2008年9月12日(金)-11月30日(日)
原美術館

現実のなにげない風景や物から「見えないものを見る」米田知子の写真には、近年の作りこまれたフォトグラフィックな写真にはない観察と記録のメディアとしての写真の特徴と魅力に溢れている。また、彼女の作品を強固にしている背景には「歴史」と「時間」が、写真に定着されているからだろう。なにを見ても、なにを写してもそこには「時間」と「歴史」の痕跡があり、その歴史を写真というメディアに定着することで表せる「現在」を私たちは見つめるのだ。

●ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情
2008年9月30日(火)-12月7日(日)
国立西洋美術館

講演会の演目名「カール・ドライヤーの映画におけるハンマースホイの影響」というタイトルだけで、ドライヤー好きの私としては俄然興味が湧く。チラシにはフェルメールを思わせる写実的表現と書かれているが、ここはカール・ドライヤーとの親近性からハンマースホイを見てみたい。『奇跡』におけるあの室内空間が、絵画化されたらと考えただけで驚愕してしまうではないか。

未読日記202 「落石計画」

2008-09-10 22:58:55 | 書物
タイトル:「落石計画」井出創太郎+高浜利也 図録
製作:求龍堂(深谷路子/杉山さおり)
編集・発行:株式会社島屋
発行日:2008年8月27日
内容:
テキスト
「落石計画」(「落石計画」企画書-企画の経緯と目的より-より抜粋)
井出創太郎
「プライベートとパブリック」高浜利也
図版6点、作家略歴

入手日:2008年9月7日
入手場所:日本橋島屋6階美術画廊X

8/27-9/16まで東京・日本橋島屋6階美術画廊Xにて開催された<「落石計画」井出創太郎+高浜利也>展の図録。

2003年より「井出創太郎+高浜利也」としてユニットによる活動を行なっている2人の4番目のアートプロジェクト。廃屋や日本家屋など特定の場に積み重ねられた時間の記憶と空間を作品化するプロジェクトを行なっている2人だが、今回は北海道根室市・旧落石無線送信局家屋内部に銅板による茶室を制作し、同時にワークショップなどのイベントを重ねていくという。このプロジェクトは本年より3年間にわたり行なわれる予定で、今回の展覧会はそのプロジェクトの報告展ということのようだ。

東京では久々の発表となる井出創太郎氏の作品がすばらしい。紫陽花の花言葉「家族の繋がり」から生まれた今回の作品は、家族の「時間」と落石という場所の「時間」が重なりあう「場」となるだろう。四角いキューブ状の立方体による銅板作品は、紫陽花咲く庭を見るような感覚を与え、銅板による「庭」であった。庭もまた「時間」を持つ。一朝一夕に庭は生まれない。植物には咲く季節があり、枯れる季節があるからだ。植物の成長・生育とともに流れる時間には、さまざまな「記憶」や「時間」が織りあわされ、そこにひとつの「庭」が生まれるだろう。それが、場との繋がりなのかもしれない。

井出氏による短いが味わい深いテキストも忘れがたい。そこに「あざやか」という言葉が使われているところ、井出氏も出品していた平行芸術展のサブタイトル「<あざやか>の構図」を思い出させ、そこに何か繋がりのようなものも感じる。

TOUCHING WORD 061

2008-09-05 00:15:50 | ことば
すぐれた絵画は、私たちの自己認識を助けてくれる。「自分探し」をする人。「世界彷徨」を志す人。そのような人たちは皆、絵画の力によって救われるはずだ。そして、他者にも救いを差し延べることができるはずだ。
自分から逃げるな。

(p.24 茂木健一郎「絵画の福音」『4人が創る「私の美術館」展:茂木健一郎、はな、角田光代、荒木経惟』横浜美術館学芸教育グループ編、横浜美術館2008)

A PIECE OF FUTURE 2008.9.2

2008-09-02 23:04:03 | 美術
秋はもう来ているのだが、隠れているだけだろう。
秋を見つけに、秋を探しに。
展覧会チラシから秋の街へ飛び出すんだ。

●江戸文化シリーズ24 北斎DNAのゆくえ
2008年9月6日(土)-10月13日(祝)
板橋区立美術館

葛飾北斎の門人28名の作品から、北斎の影響を検証する展覧会。外堀から北斎という人物を浮かび上がらせる試みか。以前から気になっていた北斎の三女である葛飾応為の作品も出品されるらしく楽しみだ。

●西洋絵画の父 ジョットとその遺産展
2008年9月13日(土)-11月9日(日)
損保ジャパン東郷青児美術館

こちらもまたジョットの作品4点とジョットの後継者たちの作品30点からジョットの影響を検証する展覧会。内容からしてジョット展ではない。だが、たった4点とはいえ、日本ではほとんどジョットの作品を見ることができないため、貴重な機会だ。しかし、このような大型展によくあるように、質のよくない作品を抱き合わせて展示しているのではないかと予想してしまう。

●生誕100年 夢と記憶の画家 茂田井茂展
2008年10月1日(水)-11月30日(日)
ちひろ美術館・東京

戦中から戦後にかけて児童雑誌や童話に挿絵を描いた茂田井茂の展覧会。茂田井の絵には朴訥であたたかい世界が息づいていてすばらしい。チラシ表面の動物たちのかあいらしさ、存在のユーモアは私たちに笑顔をとり戻させてくれるだろう。谷内六郎が好きな人は必見かもしれない。もし、ちひろ美術館に行ったならカフェで「具だくさんのおかずタルト」を食べるべし。上石神井にあるカタチカフェ特製のタルトでおなかもいっぱいになるでせう。