A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

Recording Words 097 探究者

2010-05-31 23:46:08 | ことば
よい探究者とは、あるテーマについていささかのアイデアも持たずにある図書館に入りながら、そのテーマについて幾分かプラスのことを知って退出する才覚のある者の謂である。
(Umberto Eco, Come si fa una tesi di laurea, le materie umanistiche, Milano, 1977(=ウンベルト・エコ『論文作法―調査・研究・執筆の技術と手順 (教養諸学シリーズ)』谷口勇訳、而立書房、1991年、p.68)

そんな探究者になりたいものです。

未読日記406 「風景の奪還」

2010-05-29 23:45:22 | 書物
タイトル:αMプロジェクト ANNUAL 2003 風景の奪還
編集:戸澤潤一
テープ起こし:坂戸育美(真島直子展)、岡田育美子(村元崇洋展)、水野慶子(松本陽子展)、戸澤潤一(星晃展)、山田友香里(関根直子展)
デザイン:長内研二
印刷:株式会社アトミ
発行:武蔵野美術大学
発行日:2005年3月31日
内容:
ご挨拶
「風景の奪還―見果てぬ夢に」新見隆
真島直子展「地ごく楽」
 「地への喝采―真島直子に」新見隆
 ギャラリートーク 真島直子×秋山祐徳太子
村元崇洋展「彫刻、この永遠なるものへの問いかけ」
 「空間を飼育する大器 村元崇洋 賛歌」新見隆
 ギャラリートーク 村元崇洋×保坂和志
松本陽子展「宇宙エーテル体」
 「宇宙エーテル体―松本陽子の孤独に」新見隆
 ギャラリートーク 松本陽子×高島直之
星晃展「絵画のコスモロジー」
 「星晃に―汎神論、あるいは顕現(エピファニー)について」新見隆
 ギャラリートーク 星晃×日高理恵子
関根直子展「線、海からの帰還」
 「線、海からの帰還―関根直子に」新見隆
 ギャラリートーク 関根直子×名古屋覚
編集後記 戸澤潤一
展覧会データ
(本書目次より)

頂いた日:2010年5月6日
頂いた場所:gallery αM
ギャラリーの「ご自由にお持ちください」本棚より頂いた1冊。どうもありがとうございます。個人的には、小説家・保坂和志氏が参加したギャラリートークのテキストを読むのを楽しみにしていたが、短い抜粋による収録でがっかりしてしまった。とはいえ、全体的には40ページほどの冊子にしては、かなり要領よくまとめられている。

未読日記405 「時の宙づり―生・写真・死」

2010-05-28 23:59:40 | 書物
タイトル:時の宙づりー生・写真・死 (SUSPENDING TIME: LifeーPhotographyーDeath))
編集:森陽子(IZU PHOTO MUSEUM)
翻訳:甲斐義明、ジャン・ユンカーマン、ギャビン・フルー
ブックデザイン:林琢真(Deco design)
発行:IZU PHOTO MUSEUM
発行日:2010年4月6日
価格:3200円(税別)
内容:
IZU PHOTO MUSEUM「時の宙づり―生と死のあわいで」展(2010年4月3日―8月20日)に関連し刊行された書籍。

ごあいさつ
Director’s Foreword
「生と死」ジェフリー・バッチェン(「時の宙づり―生と死のあわいで」展ゲスト・キュレーター・写真史家・ニューヨーク市立大学教授)
“Life and Death” Geoffrey Batchen
「スナップ写真の影」甲斐義明(「時の宙づり―生と死のあわいで」展アシスタント・キュレーター)
“The Shadows of Snapshots” Yoshiaki Kai
「生と死・公と死・東洋と西洋のあわいで」小原真史(IZU PHOTO MUSEUM研究員・映像作家)
“Between Life and Death, Public and Private, East and West” Masashi Kohara
謝辞
Acknowledgements
作品所蔵者リスト
List of Lenders
図版写真
Illustration Credits
(本書目次より)

購入日:2010年5月4日
購入店:IZU PHOTO MUSEUM
購入理由:
本年度上半期で見た展覧会の中では最重要と言っても間違いない展覧会の1つ。なぜなら、本展は近年の写真論を語る上では欠かすことのできない「ヴァナキュラー(ある土地に固有の)写真」についての展覧会なのである。アマチュアの手による「影」の写真や写真黎明期に生まれたキャビネット・カード、着彩された写真、メキシコのフォトエスクルトゥーラ、日本の遺影など、これまで写真の周縁に追いやられてきたモノとしての写真たちを見ることができる。これらの写真が纏う生と死の現れにはまさに時が宙吊りにされたような不思議な感覚を経験することができるだろう。
 なお、300点の展示作品のうち、本書ではその中から99点が抜粋されて掲載されている。カタログには「ヴァナキュラー写真」の提唱者であるバッチェン始め本展の開催に尽力した甲斐義明氏、小原真史氏の刺激的かつ奥深い論考が収録されている。必読(カタログはちょいと高いが、無理して買ってしまった・・)。
 IZU PHOTO MUSEUMは三島からバスで25分ほどと遠いが、なかなか見ることのできない作品が多いので、写真を見ること、語ること、考えることに興味関心がある方はぜひ見られたい。

Recording Words 096 パン

2010-05-27 22:22:32 | ことば
或る時のわれのこころを
焼きたての
麺麭に似たりと思ひけるかな

(石川啄木『一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集 (新潮文庫)』新潮社/新潮文庫、1952年、p.45)

「麺麭」はパンと読む。京都ではパン屋をよく見かける。パン好きの私としては胸躍る心地なのだが、京都出身・在住の方にそれを報告しても、「言われてみればそうかもしれない・・・」ぐらいの反応しか返ってこない。
 京都で見かけるパン屋(名称はブーランジェリーでもベーカリーでもいい)は東京と違って個人経営の店が多いようである。私はそれが嬉しくてならない。東京ではチェーン店のパン屋が多く、パンの種類も味も(一部を除き)それほど差はないように思える。だが、京都では、各店ごとに味に個性があるし(それでいて「素直」な味なのである!)、販売するパンもそれぞれ傾向が異なり、ディスプレイや店内の雰囲気まで含めてパン屋でパンを買うことの至福と食への期待感に満ちている。もちろん、パンのチェーン店として、志津屋(昭和23年創業)、進々堂(大正2年創業)が有名だし、近県では神戸のDONQ(明治38年創業)がある。
 では、なぜ京都では個人経営のパン屋が多いのだろうか。米食ではなく、パン食の人が多いのだろうか。確かに、隣県の大阪はお好み焼きやたこ焼きなどの粉もの食文化で有名な県である。だが、お好み焼きやたこ焼きとパンでは、同じ粉系食品でも、食感や味がかなり異なる。たしかに、お好み焼き屋やタコ焼き屋は京都でも多い(ラーメン屋も多い気がする)。だが、それらとパン屋は異質な領域に位置しているのではないだろうか。
 これらの理由として家賃が安いこと。京都には和菓子文化があり、その延長上にパンが食されていること(あるいは、作られること)が考えられるが、筆者はまだ具体的な解答を得るには至っていない。今後も各店のパンを食べ歩き、焼きたてのパンのようなこころを維持していきたいと考えている。


未読日記404 「いみありげなしみ」

2010-05-26 23:37:48 | 書物
タイトル:いみありげなしみ
企画・編集担当:蔵屋美香(東京国立近代美術館)
翻訳:山本仁志
デザイン:森大志郎
編集:東京国立近代美術館
印刷:八紘美術
発行:東京国立近代美術館
発行日:2010年4月
内容:
東京国立近代美術館ギャラリー4にて開催された<いみありげなしみ>展(2010年4月20日~8月8日)のブローシャ。

「いみありげなしみ」蔵屋美香(東京国立近代美術館)
図版10点、12p

頂いた日:2010年5月3日
頂いた場所:東京国立近代美術館ギャラリー4
タイトル通り「いみありげなしみ」の作品を集めた常設展示室内の小企画展。企画展よりこちらの方が充実していることもしばしばである。
本展では榎倉康二の作品を中心として、北脇昇、クロード・ヴィアラ、丸山直文、モーリス・ルイス、河口龍夫などの「いみありげなしみ」の作品が展覧される。その中で、ほとんど何の解説もなく村上華岳の《空山清高之図》(1934年頃)が展示されていた。久しぶりに見たが、やはり村上華岳の作り出す作品は時が止まったように、身体が動かずいつまでも見ていたくなる。いや、いつまでも見れる。叶わないと知りつつ、家に1点ほしい。

未読日記403 「THE LIBRARY ASHIKAGA」

2010-05-25 23:58:07 | 書物
タイトル:THE LIBRARY ASHIKAGA
編集:足利市立美術館
デザイン:本郷かおる
発行:足利市立美術館
発行日:2010年4月10日
内容:
足利市立美術館において開催された<THE LIBRARY ASHIKAGA>(2010年4月10日―6月13日)の展覧会カタログ。

A4判、10p

出品作家:
荒木珠奈、飯田啓子、石上和弘、石川雷太、石渡雅子、稲垣立男、乾久子、今井紀彰、上野慶一、内海聖史、内倉ひとみ、勝又豊子、加藤寛子、金子清美、河田政樹、倉重光則、倉本麻弓、来島友幸、黒須信雄、くわたひろよ、小林のりお、清水晃、関野宏子、高石麻代、高久千奈、高島芳幸、高橋理加、多田由美子、田邉晴子、戸泉恵徳、栃木美保、豊嶋康子、中西晴世、原田さやか、ピコピコ、菱刈俊作、前本彰子、松永亨子、三田村光土里、 ミツイタカシ、本原玲子、森妙子、山本あまよかしむ、山本耕一、ワタリドリ計画(麻生知子・武内明子)

頂いた日:2010年5月2日
頂いた場所:足利市立美術館
ギャラリー入口で無料配布されていたので頂いた1冊。ありがとうございます。
 現代美術作家たちがアートブックを制作する「THE LIBRARY」という企画展は、Gallery ART SPACE企画により多摩美術大学美術館(東京・多摩)、ブックギャラリー・ポポタム(目白)、トキ・アートスペース(神宮前)、人形町Vision’s(人形町)、ギャラリーはねうさぎ(京都)など、国内各地の美術館やギャラリーで度々行われてきた。多くの場合、作品に手を触れてはいけないことが多い美術館やギャラリーで実際に作品を手にとって見ることができる本展は、本という親しみやすい形式もあってか、好評だったのだろう。
 今回の足利市立美術館での本展は、昨年に静岡アートギャラリーで開催された<THE LIBRARY+この場所で>展の巡回展である。私は同時開催の<カイガのカイキ>展及びシンポジウムに時間を割いてしまったため、1点1点をじっくり見る時間はなかったが、このカタログで再び楽しみたいと思う。


未読日記402 「森村誠:Dear Thomas」

2010-05-23 23:52:47 | 書物
タイトル:Dear Thomas 森村誠作品リーフレット
発行:Gallery OUT of PLACE
発行日:2010年4月22日
内容:
B5判、2つ折り
「世界に意味を与える意志」神野真悟(千葉大学准教授/現代芸術論)
図版5点
作家略歴

頂いた日:2010年4月24日
頂いた場所:Gallery OUT of PLACE
ギャラリーの方より頂いた1冊。どうもありがとうございます。
奈良のGallery OUT of PLACEにて4月22日―5月30日まで開催されている<森村誠:Dear Thomas>展の作品リーフレット。昨年、東京・広尾のTOKIO OUT of PLACEで開催された展覧会の奈良ヴァージョンである。
以前から1度行きたかったギャラリーだったが、今回ようやく行くことができた。わかりにくい場所だと聞いていたが、意外と簡単に見つかる。路地にあるギャラリーで雰囲気があり、となりには絵本カフェが最近オープンしたらしく、今度はそちらも行ってみたい。奈良は平城遷都1300年祭が開催中だが、こちらのギャラリーも見てほしいものである。
 余談だが、テキストを寄稿されている神野氏の肩書き「現代芸術論」とは何だろうか。いろんな「論」があるものだ。

未読日記401 「孫雅由展―立ち現れる物/身体・物質・宇宙」

2010-05-21 23:55:06 | 書物
タイトル:孫雅由展―立ち現れる物/身体・物質・宇宙 60年代後半から最新作まで35年間の仕事
発行:孫雅由展実行委員会
発行日:2001年7月
内容:
福岡アジア美術館企画ギャラリー(2001年7月12日―7月24日)、福岡県立美術館1階展示室(2001年7月10日―7月15日)において開催された<孫雅由展―立ち現れる物/身体・物質・宇宙 60年代後半から最新作まで35年間の仕事>の展覧会カタログ。
A4判、14頁

「孫の絵画の身体性」中井康之(国立国際美術館)
図版12点、作家略歴

頂いた日:2010年4月24日
頂いた場所:アートスペース虹
 京都・アートスペース虹にて開催された<孫雅由展―色の間合い―>(2010年4月13日―4月25日)を拝見した際、ギャラリーの方より頂いた1冊。どうもありがとうございます。
 2002年に52歳の若さで亡くなった孫雅由の展覧会だが、今見てもその色彩と線の有機的な統合には見るべきものがあると感じる。
 また、カタログには若いころに試みられた『身体の風景』(1969)という作家が屋外にて全裸で行うパフォーマンス写真も掲載されているが、その若さゆえの仕事はどこでつながってくるのか、今一度聞いてみたい気がするが、私は知るのが遅すぎたようだ。