A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 543 音楽業界の人間は

2017-08-17 22:34:17 | ことば
 なぜ、音楽業界の人間は、自分に傑作と思える曲が現れたら、それが売れるようにと考えないのか。
 なぜなら、ふつう、音楽業界の人間は、自分に傑作と思える曲が現れたら、喜んでそれが売れるように手を回し、それを売ろうと努力するものだからである。
(・・)
音楽業界の人間は、ふつうは、自分の音楽のセンスで勝負する。マーケットがそのよさに気づかなければ、それを気づかせようと、自分の領域つまり非音楽性の領域で、手を回し、仕掛けを作り、操作する。ふつうには、彼らが、ミュージシャンに対し、自分のセンスに逆行する「前進」ならぬ「後退」を示唆するということは、ないからである。
 では、なぜこの国の音楽業界は、そうなのか。彼らが、自分の相手とするマーケットを、信頼していないからだというほかない。それが、「よい音楽」ということと違うものとしての「売れ線」、「売れ筋」というコトバが意味することなのである。


加藤典洋『耳をふさいで、歌を聴く』アルテスパブリッシング、2011年、277-278頁。

美術界にも当てはまりそうな話ではある。
この国では、「売れ線」「売れ筋」と言われるものはほとんどの場合、「芸術」を意味しない。