A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記437 「橋本平八と北園克衛展」

2010-09-30 23:07:56 | 書物
タイトル:橋本平八と北園克衛展 図録
編集:毛利伊知郎、原舞子(三重県立美術館)
   野田尚稔、嶋田紗千(世田谷美術館)
校閲:岩田高明
デザイン:梯耕治
印刷:野崎印刷紙業株式会社
発行:財団法人三重県立美術館協力会、世田谷美術館
発行日:2010年
価格:2,200円
三重県立美術館にて開催された<異色の芸術家兄弟―橋本平八と北園克衛展>(2010年8月7日~10月11日)の展覧会図録(10月23日より東京・世田谷美術館に巡回)。
A5判変型 308ページ

〈橋本平八〉
「橋本平八再考」酒井忠康(世田谷美術館館長)
「橋本平八――作品と思想」毛利伊知郎(三重県立美術館学芸員)
橋本平八・図版
 彫刻
 絵画、構想図
 関連資料――円空関係資料/日記と写生帖/遺著
「兄と弟」毛利伊知郎
橋本平八・略年譜
橋本平八・文献目録
橋本平八・出品作品目録

〈北園克衛〉
「北園克衛と橋本平八の値しない不透明さ」ジョン・ソルト/田口哲也訳
“The Undeserved Obscurity of Kitasono Katue and Hashimoto Heihachi, Brother Artists” John Solt
「北園克衛――詩的純粋の追求」野田尚稔(世田谷美術館学芸員)
北園克衛・図版
 第1章:橋本健吉から北園克衛へ
 第2章:『VOU』:1935 – 1942
 第3章:海外の詩人との交流
 第4章:戦後の活動
 第5章:『VOU』:1946 – 1978
 第6章:プラスティック・ポエム
 第7章:デザイン・ワーク
北園克衛・略年譜
北園克衛・文献目録
北園克衛・出品作品目録
(本書目次より)

購入日:2010年9月5日
購入店:三重県立美術館
購入理由:
 以前から橋本平八展を見たかったが、ついに念願叶ってまとめて見る機会が訪れた。それも今回は弟の北園克衛とのカップリング展だ。どちらもコアなファンが多い芸術家兄弟だけに、展覧会開催を知ったときから楽しみにしていた。

 兄弟展と言えば、今年、京都国立近代美術館で「稲垣仲静・稔次郎兄弟展」(2010年5月18日~6月27日/現在、練馬区立美術館にて巡回展開催中)が開催された。こちらは日本画(仲静)と工芸(稔次郎)の兄弟展だ。仲静の凄みのある絵画、稔次郎の大らかな型絵染めによる質の高い作品が展示され、すばらしい内容だった。稲垣仲静は25歳という若さで亡くなり、橋本平八も38歳という若さで亡くなっているので、異彩を放つ「兄」の存在が弟に与えた影響は興味深い。
 さて、本展だが、兄弟の作品を通史的に展示しつつ、両者の作品を混在・平行させ、2人の特異さが浮き彫りになっている。オーソドックスではあるが、正攻法だろう。だが、橋本平八の彫刻作品の展示数が相対的に少なく感じてもの足りない。世田谷会場にしか展示されない代表作も2点あり残念だ。
 とはいえ、今展には平八が描いた絵画や構想画が展示されて見どころが多い。例えば、年老いた両親を描いた肖像画には、老いた姿をリアルに描きながら、どこか抜けている軽さがあって味わい深い。デューラーの母親像も美化などしない克明なリアリティを追求していたが、それとはかなり違う。
 北園克衛は本格的な展覧会を見るのは初めてだ。現代詩で有名な人物だが、いろいろやっている。絵心もあるので、デザインもたくさんやっているが、ハヤカワミステリ文庫の装丁をやっているとは知らなかった。近年、展覧会が開催された新国誠一など好きな人には特におすすめしたい。






未読日記436 「戸谷成雄展」

2010-09-29 00:20:00 | 書物
タイトル:戸谷成雄展 図録
編集・発行:三重県立美術館
印刷:サンメッセ株式会社
発行:2010年8月
内容:
三重県立美術館にて開催された<橋本平八と北園克衛展関連企画 戸谷成雄展>(2010年8月7日~10月11日)の図録。

「戸谷成雄展について」毛利伊知郎(三重県立美術館学芸員)
図版
作家略歴

頂いた日:2010年9月5日
頂いた場所:三重県立美術館
常設展会場入口で頂いた1冊。
 目当ては<橋本平八と北園克衛展>だったが、関連企画として<戸谷成雄展>が見れたのはよい企画だった。企画展最後が北園克衛のセクションだったことから、彫刻の物足りなさもあり、それを補完する上でも戸谷成雄の作品は関連企画としては申し分ない。
 久しぶりに戸谷氏の作品を見たが、昨年の<第1回所沢ビエンナーレ美術展 引込線>の時よりも充実した時間を得た。特にレリーフと彫刻を組み合わせた《洞穴体》の造形の迫力に圧倒される。現代の日本でこのスケールの彫刻を作れる人は何人いるだろうか。ただし、橋本平八へのオマージュ作品は手慰みのような気がした。


Art Stroll:2010年9月11日(土)

2010-09-27 20:28:49 | 美術
展覧会を見ると、いつもノートに記してきた。
この度、ノートが切れたのでここに書き留める。

・上野の森美術館大賞展受賞者展 作家の視展2010
2010年9月8日(水)~9月14日(火)
上野の森美術館

・千代田芸術祭 3331アンデパンダン
2010年9月8日(水)~9月19日(日)
Arts Chiyoda 3331

・和田百合子展
2010年9月11日(土)~10月9日(土)
Bambinart Gallery

・春原喜美江展
2010年9月4日(土)~10月17日(日)
A|A gallery

・ゼロ展2010アワードエキシビション 臼田香織 高橋三紀子 二人展
2010年9月11日(土)~10月2日(土)
ゼロダテ アートセンター東京

・構想計画所PRODUCE 更新に憑く 可塑的な無人島
2010年9月11日(土)~10月10日(日)
アキバタマビ21

・001 FRICTION:Anna Fryer
2010年9月11日(土)~9月27日(月)
3331 GALLERY

・石塚雅子展:夜と昼
2010年9月8日(水)~9月25日(土)
a piece of space APS

・あるが あく展
2010年9月6日(月)~9月11日(土)
Gallery 銀座フォレスト

・Satoko Kaneko:Analogy
2010年9月6日(月)~9月11日(土)
Gallery 銀座フォレストミニ

・宮本隆司:1975-2010 Film & Digital
2010年9月10日(金)~10月9日(土)
TARO NASU

・キム・シヨン(Kim Siyeon):Barricade
2010年8月20日(金)~9月11日(土)
FOIL GALLERY

・複合回路 アクティヴィズムの詩学 第3回 丹羽良徳
2010年7月24日(土)~9月11日(土)
gallery αM

・Jim Lee:The Deep Inside
2010年9月10日(金)~10月15日(水)
MOTUS FORT

・再生する崩壊する自我する梅沢和木するラウンジする画像コアする*ラウンジ
2010年9月3日(金)~9月18日(土)
CASHI

・石川結介:Primal Calling
2010年9月10日(金)~10月16日(土)
ラディウム

・彦坂尚嘉個展:HISTORY LESSONS/皇居美術館
2010年9月3日(金)~9月14日(火)
マキイマサルファインアーツ

・西山裕希子:ポートレイト
2010年9月2日(木)~9月18日(土)
Showcase / MEGUMI OGITA GALLERY

・My favorite works
2010年9月3日(金)~9月29日(水)
木之庄企畫/Gallery 156

・波麿悠子展
2010年9月6日(月)~9月12日(日)
OギャラリーUP・S

・稲垣昌子展
2010年9月6日(月)~9月12日(日)
Oギャラリー



未読日記435 「Art Camp 2009」

2010-09-26 23:32:26 | 書物
タイトル:Art Camp 2009
編集者:山口孝
編集スタッフ:中川佐織、畑口佐知子、宮本典子、山本尚子
発行:ギャラリーヤマグチ クンストバウ
内容:
大阪・ギャラリーヤマグチクンストバウ、サントリーミュージアム[天保山]にて開催された<Art Camp 2009>(2009年8月1日~9月24日)のカタログ。

「Art Camp 2009を見て」大島賛都(サントリーミュージアム[天保山]学芸員)
第1期 8.1 – 8.13
土井智美/中山明日香/藤本絢子/梶原春乃/佐薙真由/岡本祐輝
第2期 8.15 – 8.27
池田喜美代/井上康子/西尾早苗/中村吉貴/遠藤友美恵/徳田裕心
第3期 8.29 – 9.10
岡田真季人(招待作家)/鎌田あや/吉村熊象/前田侑里/野瀬早苗/森田ゆう奈
第4期 9.1 – 9.13
井上真甫/近藤邦彦/雪/北村理枝子/楠本孝美/福田真知
第5期 9.12 – 9.24
西山裕希子(招待作家)/稲富春菜/田中秀介/吉原啓太/濱田睦子/アンナ・リザ・ジーニ

頂いた日:2010年8月27日
頂いた場所:ギャラリーヤマグチクンストバウ
<Art Camp 2010>に行った際、頂いた1冊。どうもありがとうございます。
今年は2期だけで、規模が縮小したが、会期としては見やすい気がする。本展から躍進する作家が現れることを願ってやまない。

未読日記434 「杉山英行作品集」

2010-09-22 23:20:25 | 書物
タイトル:杉山英行作品集
制作:福田新之助
写真:近藤大
デザイン:青木陸祐、平沢卓、檜垣平太
発行:ギャラリー白
製版:東京電子製版
印刷所:東洋紙業高速印刷
発行:1994年6月1日
内容:
オマージュ
「黒の考察」泉茂(画家)
「語りかける黒―杉山英行のモノクロミスム」乾由明(美術評論家)
「(タイトルなし)」今田純子(ABCギャラリー/大阪府立現代美術センター館長)
「杉山英行の冒険精神」木村重信(美術評論家)
「エイコー節」高橋亨(美術評論家)
「杉山英行さん」元永定正(画家)
「杉山英行の黒」森口宏一(彫刻家)
Works
History
 杉山英行略歴
 杉山英行展評
「あとがき」杉山英行

頂いた日:2010年8月27日
頂いた場所:ギャラリー白
大阪・ギャラリー白にて開催された<杉山英行展>(2010年8月23日~9月4日)に行った際、ギャラリーの方より頂いた1冊。どうもありがとうございます。
恥ずかしながら杉山氏についてはほとんど知らなかった(残念ながら杉山氏は昨年12月に亡くなられた)。それもそのはずで、略歴を見ると東京ではほとんど展覧会が開催されていない。東京での最後の個展発表が1966年の夢土画廊、グループ展では1955年に東京都美術館で開催された第11回行動美術展が最後である。つまり、ほとんどの発表が関西中心だったため、関東圏では知っている人は少ないのでないだろうか。
そのようなわけで、今回の回顧展は私にとっては関西アートシーンで活動した作家を知る貴重な機会となった。その杉山氏の作品だが、黒を主体としたミニマルな絵画である。だが、村上友晴ともまた異なる、油絵の素材感、物質感を感じさせる絵画である。頂いた作品集を見ると、豪華な執筆者の名前が並んでおり、その存在は大きかったことを思わせる。作品集を見て再発見したいと思う。

Recording Words 018 幸福の一日

2010-09-21 23:13:35 | ことば
希望をもって一日を迎え、ありあまる事業に着手す。あえて有利の業というにあらず、しかれどもことごとくこれ有楽の業たるなり。なすべきの善事は積んで山をなし、探るべきの真理は湛えて海のごとし。これに触れ、これを汲みて、甘きこと蜜のごとし。善は善を呼び、美は美に応え、春野を彷徨いて百花を摘み取るがごとし。誰かいう、人生は苦痛なりと。神とともに歩むの一日はこれすでに幸福の一生涯ならずや。
(鈴木俊郎編『内村鑑三所感集 (岩波文庫 青 119-5)』岩波書店、1973年、p.307)

1日の朝を迎えるたび、苦痛の感情ばかり湧いてくる。
楽しかった夏休みはもう終わる。

未読日記433 「画廊からの発言――新世代への視点2010」

2010-09-19 23:35:24 | 書物
タイトル:画廊からの発言――新世代への視点2010
編集・デザイン:宇治晶、上田雄三(ギャラリーQ)
翻訳:名古屋覚
発行:東京現代美術画廊会議
発行日:2010年7月26日
内容:
東京の銀座・京橋地区にある現代美術画廊が共同で行う「画廊からの発言――新世代への視点2010」(2010年7月26日~8月7日)の図録。
B5判、24ページ

ご挨拶
ギャラリーなつか―豊泉綾乃
コバヤシ画廊―山本聖子
ギャラリイK―羽毛田信一郎
ギャラリー現―田中千智
ギャルリー東京ユマニテ―富田菜摘
藍画廊―伊藤知宏
なびす画廊―葉山幸恵
ギャラリーQ―柏木直人
ギャラリー58―鎮目紋子
GALERIE SOL―森本栄持
gallery 21yo-j―馬替夏美
記録・新世代への視点2009
略歴

頂いた日:2010年8月24日
頂いた場所:なびす画廊
画廊の方より頂いた1冊。どうもありがとうございます。
例年通っていた「新世代への視点」展だが、今年は京都移転のため行かれなかった。内容的には見たことのある作家が多く、目新しさはない気がしたものの、行かれないと気になるもので、カタログを頂けて感謝である。
今展のカタログを見ていると山本聖子、田中千智、馬替夏美の3氏の作品が気になった。いづれも今回初めて知る方たちだが、いつか見てみたい。


未読日記432 「建畠覚造――アトリエの時間」

2010-09-18 23:49:07 | 書物
タイトル:建畠覚造――アトリエの時間
編集・発行:世田谷美術館 石井幸彦・横山由季子
デザイン:papier colle
表紙:アトリエの建畠覚造[1938年頃]
展示風景及び作品撮影:上野則宏
発行日:2010年
内容:
東京・世田谷美術館にて開催された<ミュージアムコレクションⅠ 建畠覚造――アトリエの時間>展(2010年4月16日~9月5日)に際し、発行されたインタビュー小冊子。
A5判、15ページ

ごあいさつ
「建畠朔弥氏に聞く」聞き手:酒井忠康(世田谷美術館館長) 撮影・記録:石井幸彦(世田谷美術館主任学芸員)
作品図版
建畠覚造略年譜
出品リスト

頂いた日:2010年8月18日
頂いた場所:世田谷美術館
収蔵品展会場で「ご自由にお持ちください」と言われて頂いた1冊。
建畠覚造氏の作品は「ユーモアとウィットに富んだ表現」と言われるが、私にはなぜだか軟体的、可塑的な彫刻に感じられ、爬虫類を思い出して苦手である。
今展では大量の模型(マケット)やデッサンなどが出品されていたが、もう少し整理して展示されていると見やすい気がした。とはいえ、このような小冊子は作品や作家への理解を深めるのによい試みだと思う。





Recording Words 017 成功の期待

2010-09-04 23:30:31 | ことば
成功を期して進めよ、失敗を期するなかれ。万事をその最善において解せよ、最悪において解するなかれ。神の治め給うこの世にありて神を信じて事を成す、永久の失敗あるべき理なし。失敗は一時の現象なり、永久の事実にあらざるなり。「誠に善を行うに弛むことなかれ、そはもし倦むことなくばわれら時にいたりて穫り取るべければなり」。ガラテヤ書六章九節。
(鈴木俊郎編『内村鑑三所感集 (岩波文庫 青 119-5)』岩波書店、1973年、p.306)

何事も最悪にばかり解してきた気がする。きっとこれらかも最悪だろう。