A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記1328 『一戔五厘の旗』

2017-07-31 06:06:55 | 書物
タイトル:一戔五厘の旗
著者:花森安治
装本:花森安治
発行:東京 : 暮しの手帖社
発行日:2016.9第12刷 改版(1971.10初版)
形態:333p ; 26cm
注記:裏表紙に「暮しの手帖版」とあり
   オフセット印刷に変更
内容:

塩鮭のうた
札幌
戦場
なんにもなかったあの頃
商品テスト入門
見よぼくら一銭五厘の旗
酒とはなにか
1ケタの保険証
もののけじめ
リリスプレスコット伝
重田なを
千葉のおばさん
まいどおおきに
大安佛滅
日本料理を食べない日本人
結婚式この奇妙なもの
漢文と天ぷらとピアノと
お互いの年令を10才引下げよう
世界はあなたのためにはない
どぶねずみ色の若者たち
8分間の空白
医は算術ではない
広告が多すぎる
うけこたえ
美しいものを
煮干の歌
武器をすてよう
無名戦士の墓
国をまもるということ

購入日:2017年7月29日
購入店:丸善 京都本店
購入理由:
 無印良品で買った『花森安治』で読んだ「見よぼくら一銭五厘の旗」に圧倒される。反戦、レジスタンスとしてのアジテーションに読後、深く熱い思いが満ちる名文。むらたちひろ作品のテキストを書くもっと前に知りたかったと後悔したが仕方ない。一銭五厘の旗の写真は、無印良品版ではモノクロだったが、本書の函表紙ではカラー写真で、その鮮やかな姿にも魅了される。あらためてこのような文章を書く花森安治に興味を覚え、本書を購入。「花森安治の仕事」展もやっていたが、見逃していた。図録は各所で完売。地方展を見に行く時間とれるか。


未読日記1327 『小津安二郎』

2017-07-30 12:38:26 | 書物
タイトル:小津安二郎
シリーズ名:MUJI BOOKS 人と物 3
著者:小津安二郎
企画制作:良品計画、EDITHON
編集デザイン:櫛田理、広本旅人、佐伯亮介
発行:東京 : 良品計画
発行日:2017.6
形態:157p ; 15cm
内容:
『東京物語』などの名作を生んだ日本映画界の巨匠・小津安二郎。日本間でくらす家族の日常をローアングルと呼ばれる独自のカメラワークで端正に描きました。本書には、映画づくりに欠かせなかった特注の三脚や直筆の絵コンテ、日記、「グルメ手帖」などのゆかりの品と、「映画の味・人生の味」を含むエッセイや発言録を収録します。

くらしの形見
小津安二郎の言葉
丸之内点景
車中も亦愉し
僕は映画の豆監督
小津安二郎芸談
ライス・カレー
僕は年をとったらしい
ここが楢山
泥中の蓮を描きたい
性格と表情
映画の文法
映画の味・人生の味
逆引き図像解説
この人あの人

購入日:2017年7月28日
購入店:無印良品 グランフロント大阪店
購入理由:
 小津安二郎ファン、映画ファンとしてはつい欲しくなって買ってしまった。小津が手帳に描いた地図の写真は、繊細かつ適確で人柄が感じられておもしろい。
 このシリーズは今のところ続刊がないので、今後も続くのかわからないが、人と物を主題としたコンセプトは秀逸なので、芸術家に限らず範囲を広げていくとおもしろいと思う。




未読日記1326 『花森安治』

2017-07-29 12:24:21 | 書物
タイトル:花森安治
シリーズ名:MUJI BOOKS 人と物 2
著者:花森安治
企画制作:良品計画、EDITHON
編集デザイン:櫛田理、広本旅人、佐伯亮介
発行:東京 : 良品計画
発行日:2017.6
形態:157p ; 15cm
内容:
戦後まもない1948年に『暮らしの手帖』を創刊した花森安治は、豊かで美しい毎日の生活を伝えるために、文章もイラストも自らペンをとった名編集長でした。そこにはくらしを大事にすることが、二度と戦争を起こさない世の中をつくるという信念がありました。ほんとうに美しい装いを女性に向けて語る「若いひとに」他3編を収録。

くらしの形見
花森安治の言葉
若いひとに
高価なものと美しいものと
見よぼくら一銭五厘の旗
逆引き図像解説
この人あの人

購入日:2017年7月28日
購入店:無印良品 グランフロント大阪店
購入理由:
 無印良品のMUJI BOOKS 人と物シリーズは柳宗悦、花森安治、小津安二郎の3冊が刊行されており、どれを買うか悩んだ。当初は、「小津安二郎」だけにしようかと思ったが、柳宗悦の本は以前に参考文献として活用したことがあるので、持っておくべきだろう。花森安治は、以前に『暮しの手帖』を読んでいた時期があるが、あまり接点がないのでやめようかと思った。だが、目次で「見よぼくら一銭五厘の旗」とあるのを見て考えを変えた。ずっと取り掛かっているむらたちひろ作品のテキストで、「旗」に触れたあとだっただけに、これは読んでおけという啓示だと思い、3冊セットをレジに持っていく。

未読日記1325 『柳宗悦』

2017-07-28 23:05:17 | 書物
タイトル:柳宗悦
シリーズ名:MUJI BOOKS 人と物 1
著者:柳宗悦
企画制作:良品計画、EDITHON
編集デザイン:櫛田理、広本旅人、佐伯亮介
発行:東京 : 良品計画
発行日:2017.6
形態:157p ; 15cm
内容:
日本民藝館を設立し、初代館長をつとめた柳宗悦。自ら創始した民藝運動の仲間たちと各地へ赴き、「手回りもの」あるいは「下手物」と蔑まれてきた手仕事のなかに、誰も気づかなかった「民藝」の美を発見しました。本書では、名もなき工人による無名の美を綴った「雑器の美」他4編と愛用品を紹介する「くらしの形見」を収録します。

くらしの形見
民藝
雑器の美
用と美
工藝的なるもの
藍絵の猪口
逆引き図像解説
この人あの人

購入日:2017年7月28日
購入店:無印良品 グランフロント大阪店
購入理由:
 グランフロント大阪にある無印良品で「日本文化を知る展示2 水墨画―淡墨と余白の美―」展を見にいく。鑑賞後、店内を物色していた際に購入。
今のところシリーズは3巻まで刊行されており、それぞれ遺愛の品の写真と文章が収録されている。コンパクトに思考をつかめる編集である。

memorandum 539 プロのアーティストとしての資質

2017-07-27 23:54:48 | ことば
プロのアーティストとしての資質は、第一義的には、同時代のアーティストや過去のアーティストの先達とどのように関連しているか、ということにかかっている。仲間の認知を求めて闘っているとき、それはプロのアーティストであることの明確な特質と見なされる。アーティストが受けた教育もまた、プロとしてのステータスに影響を及ぼす。しかし、これは必須条件ではない。経済的資質は完全な的外れではないが、それほど重要でもない。芸術で生計を立てていること(あるいはそのような意図を持っていること)は、プロのアーティストとしてのステータスに特に何もつけ加えない。商業的に成功しているアーティストを仲間たちがアマチュアと見なすこと、その反対に、商業的にはまったく成功していないが高い敬意を集めるアーティストがいることは珍しいことではない。

ハンス・アビング『金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか』山本和弘訳、grambooks、2007年、246頁。

「同時代のアーティストや過去のアーティストの先達とどのように関連しているか」は、日本の美術界は恐ろしく欠如している。
この問題(?)は長年考えているが、日本の美術界で批評、レビューがないことも一因だろうが、アーティストが展覧会を見ない(興味がない?)ことが最大の原因だと考えられる。

アーティストの教育、経済については同感である。美大出身ではないアーティストは多くいる。
また、売れたアーティストほど、売れる前の個性が薄まってつまらなくなるケースを私たちはよく知っているはずだ。
学歴や商業性で美術を判断するのは禁物である。

memorandum 538 ハッピー

2017-07-26 23:43:40 | ことば
 平均収入を示す数字から判断すると、芸術は儲からない生産分野である。芸術で生計を立てることができないまま、多くのアーティストは老いていく。(・・・)
 芸術という経済をこのように解釈すると、負け組アーティスト、あるいは芸術で生計を立てることができないアーティストは、「貧乏」で「悲惨」なプロではなく、「ハッピー」なアマチュアである。実際に、彼らは巨大なアマチュア集団の一部であり、制作に時間と金を消費する人々なのである。


ハンス・アビング『金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか』山本和弘訳、grambooks、2007年、245頁。

アマチュアとプロをどう考えるか。
「貧乏」と「悲惨」を選ぶか、「ハッピー」を選ぶのか。

日本で批評がないのは、アーティストが「ハッピー」なアマチュアだからと考えると妙に納得。
他者、鑑賞者に何かを伝えようとも考えていないのだから、批評は求められないし、ホームページにテキストの掲載、経歴にビブリオグラフィーとして記載されることもない。


memorandum 537 民主化

2017-07-25 23:25:11 | ことば
 助成された芸術教育は、他の職業と同じく芸術もいまやより「民主化」され、誰もがアーティストになることができ、アーティストとして生活できるようになった、ということを間接的に示している。しかし、他の職業においては卒業生のほとんどが、いつの時代もプロとして生活しているのに対して、芸術においては卒業生のごくわずかしかプロのアーティストとして生計を立てることができない。そのため、他の職業よりも芸術はいまだ「民主化」されていない、と記してもあまり驚きではないだろう。

ハンス・アビング『金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか』山本和弘訳、grambooks、2007年、237頁。

アートは「民主化」されていないのは事実だ。
そもそも「アーティスト」を職業と考えることに私は疑問を感じている。

いったい、美術大学の教員は何をやっているのだろう。
卒業生の就職実績ばかり重視する風潮もいかがかと思うが、アーティスト、またはアート愛好者さえ輩出できていない美術大学とは何だろうか。

未読日記1324 『裏声で歌へ』

2017-07-24 06:21:33 | 書物
タイトル:裏声で歌へ
編集:遠藤水城
編集補:中尾英恵
デザイン:藤本敏行(株式会社ライブアートブックス
プリンティング・ディレクション:川村佳之(株式会社ライブアートブックス
撮影:木奥惠三
印刷:株式会社ライブアートブックス
発行:裏声で歌へ展実行委員会
発行日:c2017
形態:[64]p ; 30cm
注記:展覧会カタログ
   2017年4月8日−6月18日, 小山市立車屋美術館
   企画:遠藤水城
   出品:大和田俊、小山市立乙女中学校合唱コンクール、國府理、戦争柄着物、五月女哲平、本山ゆかり
内容:
挟み込み
「直訴状」田中正造
表:[テキスト][無署名]/裏:シヅシヅシヅム シヅシヅシヅム

日本国 国家 君が代
引用:丸谷才一『裏声で歌へ君が代』(新潮社/1982年)
小山市の歌「小山わがまち』作詞 宮沢章二 作曲 佐藤真
大和田俊
「骨」中原中也
小山市立乙女中学校合唱コンクール
國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト
戦争柄着物
間々田ひも 代表:渡邉靖久さん 聞き手:中尾英恵
五月女哲平
合唱曲「聞こえる」作詞 岩間芳樹 作曲 新実徳英
本山ゆかり
「丁 丁 丁 丁 丁 」宮沢賢治
図版
出品リスト

購入日:2017年7月22日
購入店:アートスペース虹
購入理由:
 アートスペース虹にて「國府理 水中エンジン redux」展(企画・遠藤水城)を拝見した際に購入。
 本展はインディペンデント・キュレーターの遠藤水城氏が栃木の小山市立車屋美術館で企画した展覧会カタログ。遠方で行かれなかったが、カタログを見て見れなかったことを後悔した。「歌」を媒介に、詩情と政治性が混交したキュレーションがすばらしかったからだ。

 最近、『日本国憲法』を読み直したり、戦争関連の文献を読んでいたので、冒頭の「君が代」を目にしたとき、ささやかな偶然ながら自分の関心と世界が一致する刹那を感じた。

 本展カタログもおもしろい。A4横罫ノートを体裁に、テキストや文字がノートの各所にページ割りされているのだ。つまり、無地のノート部分が多く、お望みならノートとして書き込めるというわけだ。いわゆるカタログ=記録集の概念を壊す編集、デザインである。

 さらに、キュレーターによる展覧会でありながら、キュレーターの署名テキストがない(だが、たまたまギャラリーにおられたHAPSの方の話によると、封入されている無署名テキストが遠藤によるテキストらしいが、展覧会や作家には一切触れられていない)。ほかのテキストも詩や引用、インタビューなどで、結局、本展がどういう企画趣旨として行われたのか皆目わからない。市立美術館の展覧会でありながら、説明をしない歌詞カードのようなカタログに驚く。

 ノート形式の図録で思い出すのが、京都国立近代美術館で2010年に開催された「Trouble in Paradise/生存のエシックス」展であった。この図録はリングファイル形式で中に図版やテキスト、無地のノートが収められており、購入者がカスタマイズできるカタログであった。
 そういえば、「生存のエシックス」展を担当した学芸員・河本信治と遠藤水城は、キュレーションの方法論や姿勢が似ている気がする。美術(史)に準拠するというより、美術(史)を逸脱することへの積極性、テキスト等で展覧会内容を説明、記述しないこと、ポスターやフライヤーなどヴィジュアルに力をいれた発信・伝達は、河本信治を継承しているように思える。京都にはこういうキュレーターが相性がいいのかと妙に納得。
 

【ご案内】京都芸術センター通信(明倫art)2017年8月号(vol.207)

2017-07-23 06:02:17 | お知らせ
暑中お見舞い申し上げます。京都芸術センター通信(明倫art)2017年8月号(vol.207)に『のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ』のレビューを寄稿させていただきました。
ネットでも読めますので、冷房のきいた涼しい部屋でお読みいただければ幸いです。
http://www.kac.or.jp/21726/

なお、6月3日の京都新聞でも本展についてレビューを書かせて頂きましたが、別内容となります。

ちなみに、美術欄となりの演劇レビューは、7月15日の京都新聞でレビューを書かせて頂いた林葵衣さんが美術を担当した演劇ユニットしたための『ディクテ』が取り上げられておりますので、ぜひ合わせてお読みください。


未読日記1323 『Yuki Tsukiyama|Exhibition 2017』

2017-07-22 22:01:55 | 書物
タイトル:築山有城 Exhibition 2017
編集:藤田千彩
写真:浅野 豪
ブックデザイン:塩谷啓悟
発行:[大阪] : TEZUKAYAMA GALLERY
発行日:2017.6
形態:20p ; 21cm
注記:展覧会カタログ
   2017年6月30日−7月29日, TEZUKAYAMA GALLERY
内容:
Introduction
図版
略歴

頂いた日:2017年7月21日
 「築山有城 Exhibition 2017」展を拝見した際、頂きました。どうもありがとうございます。
 ギャラリーに入って驚いた。築山有城の作風のなさは知ってはいたが、本展は既視感を覚える作品ばかりだったからだ。解説文はなかったが、キャプションや小スペースにあった塗料缶から本展の作品は市販の塗料を刷毛で塗ったモノクロームペインティングのようだ。それらがミニマルに整然と並んでいる。そんな仕事はとうにさまざまな作家がやっている。関西でも中島麦が近い仕事を数年前からやっている。塗り跡の痕跡を見せるパネル作品も中島麦と関心を共有していて唖然。

 続いて、イントロダクションを読む。40歳を過ぎ、TEZUKAYAMA GALLERYで10年間のプロジェクトを始めるという。それは、50歳を迎える2026年まで毎年個展を開くのだという。築山は「何がおこるか誰にも分かりませんが、なんだか楽しそうでしょ?」と書く。毎年同じギャラリーで個展を開くことがプロジェクト??どういう意味だろうか。貸しギャラリーで毎年展覧会を開催している作家を挙げればざらにある話で新しさの欠片もない。おまけにポリシーもコンセプトも書いてないのに「なんだか楽しそうでしょ?」と書く。なにが楽しいのだろうか。制作、発表することの緊張感の欠片のなさに疲労と絶望と哀しみを感じる。私は本気の作品が見たい。