大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・18『最新の鞄やろー!・2』

2019-01-24 06:02:33 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

18『最新の鞄やろー!・2』  



 旧演劇部の部室にはロッカーがある。

 単なる隠れ家に使っていたので、ロッカーには興味は無かった。
 でも、『山のようなインナー(取り扱い注意)』という妙な芝居で、県大会で一位になっていたこと、小道具に山のような女物の下着を使っていたこと、そして「最新の鞄やろー!」という暗号に俄然興味がわいた。

 ロッカーの中には、まだ演劇部が存在していたころの台本や日誌が入っていた。

 その中から『山のようなインナー(取り扱い注意)』という台本と、県大会で一位になった年の日誌を取り出して部室を出た。
「ちょっと、息が詰まりそうだったわね!」
 部室を出ると、桜子は盛大に息を吐いて、制服の胸をパカパカやった。桜子ほどではないけど、オレも八瀬もうっすらと汗をかいていた。なんせ、軽のワンボックスカーほどしかない部室に三十分以上三人でいたのだ、軽い酸欠にもなる。
「四人分よ! 桃斗一人で二人分はあるでしょ!」
「百戸一人に、ほとんどの酸素吸いつくされたぜ」
 桜子も八瀬も容赦がない。

 桜子は台本を、八瀬は撮りまくった部室の写メを、オレはクラブ日誌を持って帰った。

 久々に三人揃って帰ろうということになった……とたんにメールが入ってきた。
「残念……二人で帰ってくれ」
「なんだ、彼女からか?」
「んなワケねーだろ! 親父だよ親父!」
 夜、三時間ほど空いたので、三人で食事をしようというメールだった。

 駅のホームは桜子と八瀬の向かい側になった。何とも寂しい。

 部室の中では、あれこれ探すのに夢中だったけど、ごく近くで桜子を感じていたことを思い出す。
――そういや、瞬間だけど桜子に触ったなあ――
 ロッカーを開ける時に、左の肘が、桜子の柔らかい胸に触れた。今になってドギマギする。
 気づくと、向かいの桜子と八瀬の姿が無い。電車の尻が遠ざかっていく。

 隣の駅の改札で、親父とお袋と待ち合わせ。

「新しい店を見つけたんだ、さ、行こう」
 親父は、そういうとスマホのナビを開いた。

 ナビに変わる寸前、一瞬マチウケ画面が見えた。
 桃の入学式、入学式の看板の前で撮った桃のアップ。葬式の日、桃の遺影に使ったやつだ。
 入学式では、いっぱい写真を撮った。一枚だけ、ちょっと実年齢より上に見えるのがあって、桃のお気に入りだった。
「高校生に見えるね!」
 桃は、その画像を細工して高校の制服にしてしまった。
「三年たったら、この制服だね!」
 喜んでいたけど、桃は、この制服を着ることなく、一か月後には帰らぬ人になってしまった。
「ちょっと、この子だれよ!?」
 一度マチウケを見られて、桜子に詰め寄られたことがる。
「スタイルもルックスも、良すぎ! ん? 組章……うちのクラス!? ちょっと桃斗!」
「それ、桃だよ」
 答えを言うと、桜子はビックリした。
「桃ちゃんて、美人になるよ! スタイルもイケて……あ、これはハメこみか!」
 そのあと桃に聞くと、桃は、こう言った。
「首から下は、桜子さんだよ」
 オレは、桜子と桃の両方を見直した。

 そんなことをポワポワ思っているうちに親父とのディナーが終わった。

「なかなか美味いフランス料理だった!」
「ハハ、桃斗は味オンチだなあ、今のはイタリア料理だぞ」
「ホホ、ほんと、この子ったら」
「アハハ」

 笑っておいたが、何を食べたか覚えていなかった……。


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