大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

REオフステージ(惣堀高校演劇部)059・夏休み編 初めての飛行機

2024-06-13 06:34:14 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
059・夏休み編 初めての飛行機                     
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです





 ちょっと心配だった。


 だって、車いすで飛行機に乗るんだよ。生まれて初めての飛行機なんだよ。

 あらかじめググっておいたけど、実際にやってみると、とっても新鮮。

 搭乗前にいろいろあるので二時間前に関空のサービスカウンターに行く。

 関空まではお姉ちゃんのウェルキャブ、この日の見送りのためにお姉ちゃんは休暇をとってくれている。


「あれ、みんなも?」


 車を降りてビックリ。

 啓介先輩、須磨先輩、ミリー先輩の三人も揃って待っていてくれたからだ。

「や、やさしい人たちね(´;ω;`)ウッ…」

 さっそくお姉ちゃんは感動する。ちょっと恥ずかしい。

「早く目が覚めて」

「俺は時間間違えて」

「えと、なんとなくね」

 三人それぞれだけど、わたしのことに気を使ってくれているのはバレバレ。お姉ちゃんも分かっていて、さらにウルウルになってる。

「いつもの車いすじゃないのね?」

「万一故障とかバッテリー切れになったら大変だし、使い慣れてるしね」
 
 いつもの電動車いすではなく、予備の車いす、ジュラルミン製で取り扱いが簡単。電動になる前は、ずっとこれに乗っていたんだよ。

 サービスカウンターに行くと、生まれてからずっと笑顔だったような女性スタッフが搭乗までの流れを教えてくれる。

「まずは、これにご記入ください」

 歩行状況チェックシートを手渡される。

「これを基に、到着までのお世話をさせていただきます。カウンターの中におりますので不明な点がございましたらお申し付けください」

 どれどれ……(((¯(¯ー¯)¯ー¯(¯ー¯)¯ー¯)¯)))) 

 みんなが覗き込む。簡単なチェックシートなんだけど、やっぱ空の旅ということで、みんなの好奇心は高まっている。

「へー、機内は専用の車いすに乗り換えるんや!」

 みんなジュラルミンにしたのは飛行機に乗るためだと思っていたようね。

 車いす用のトイレの近くの座席、座席の肘掛が可動式なのを確認すると、空港内用の車いすに乗り換える。

「千歳のお尻収まるかなあ……」

 お姉ちゃんが無用な心配するくらい幅が狭い。座席の幅は30センチちょっとしかない。

 無事にお尻を収めて保安検査場に。あらかじめ所持品は分けてあるのでスイスイとチェックしてもらう。

 まあ海外出張なんかに慣れているお姉ちゃんが付いているので問題はない。

「それでは、お体に触れさせていただきます」

「え?」

 係員のお姉さんに言われてビックリ。

 当たり前なんだけどボディーチェックだ。ググってはいたけど抜けていた。

 事故した時にお医者さんに触診されたとき以外、他人に体を触られるのは初めてなのよ。

 十秒足らず、ササッと触られる。

 なんか緊張、顔が赤くなっているのが自分でも分かる。

 こんな緊張してたら、爆弾とか隠し持ってるんじゃないかと疑われるんじゃ……心配になるけど、あっさりOK。


「さ、あとは乗るだけやなあ!」


 ベンチに座ってミリー先輩。ちょっとウェットな気合いが入ってる。

「どうかしました?」

「ハーーーーなんか日本離れるのって寂しい……」

 この言葉にみんなが笑う。だってアメリカ人がアメリカに行くのにおセンチになっているのは、やっぱ笑える。

「三年も居ると、もうほとんど日本人なんよね……」

「年に二回は里帰りしとるやないか」

「ハハ、せやけどね」

 今度の旅行は、ミリー先輩にとっても特別のようだ。


 飛行機に乗ってビックリ!


 なんと車いすの車輪が外されてしまった。

 ストッパーを掛けられる時の衝撃があったかと思うと、キャビンアテンダントのオネエサンが車輪を外したのだ。

 それでも、車いすはコロコロと押されて行く。

 ひょいと足許を見ると、オモチャみたいな車輪でスムーズに転がっている。

 いつの間に付けた? え、最初から付いてた?

 慣れたアシストで座席まで連れて行ってもらえる。

「あ、えと、えと、おトイレ行っておきたいんですけど(^_^;)」

 ググった時の一番のポイント。あらかじめ行っておかないと、離陸して水平飛行になるまで行けない。

 それに飛行中に手を上げて「トイレに行きたいんです」の意思表示をするのは恥ずかしい。


 トイレから戻ってきてビックリした。


「え、なんで( ゚Д゚)?」


 横の席にはお姉ちゃんが座っている……。
 


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)


コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 勇者乙の天路歴程 025『... | トップ | 巡(めぐり)・型落ち魔法少... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unkown (油屋種吉)
2024-06-13 10:37:43
こんにちは。コメントも差し上げず、応援しています。わたしの無作法を許してください。私はブログを始めて十二年経ちました。演劇や戯曲の素養もなく書きたいように書いています。恥ずかしい限りです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説7」カテゴリの最新記事