大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・098『またまた牧内さん』

2024-05-08 09:45:27 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
098『またまた牧内さん』   




 連休明けの昼休、地学教室に居る。


 地学教室は、学校で唯一の階段教室。

 なんだか、大学の講義室みたい。世界史で習ったギリシャかローマだかの議場っぽくもある。

 生徒会の会議の多くがここで行われるのは、そういう雰囲気の効果があるからなのかもしれない。

 たみ子と高峰君の都合で、今日は二回目のピンチヒッターで代議会に出てる。

 わたしなんかが出ても役にはたたないんだけど、稀に定足数に足りなくて流会になったり、開始時間が遅れてしまうことがあるので、代理を出すことになっている。出欠は個人じゃなくてクラス単位でとってるしね。

「最後にいいでしょうか」

 予定されていた議事が済んだところで手を上げたのは、演劇部の牧内さんだ。むろん、部活の代表では無くて、クラスの代議員として出席している。

「はい、どうぞ2年8組」

 議長は個人名では無くて所属のクラスで発言を許可。

「去年も提起したんですけど、文化祭と体育祭の日程を開けてもらうことはできないんでしょうか」

「それは……」

 語尾を濁して、書記と生徒会顧問の倉田先生に目配せする議長。

「昨年提起された記録がありますが……」

 生徒会は、連休前に選挙が行われて、執行部のメンバーは一新されてる。きちんと引き継ぎがされていないようで、書記さんはアタフタ。議長の副会長は他人事みたいな顔をしている。

「じゃ、代わりに」

 倉田先生が立ち上がる。

「その件は、前会長から申し入れがあって職員会議で審議され『他の行事日程との関係や、季節性から動かしがたい』と確認され、生徒会に報告しています」

「え、あ……えと……はい、昨年12月に、代議会の報告は年を跨いで1月に……」

「ああ……」

 牧内さんは「ああ……」と、言葉を呑み込んでから発言した。

「今からじゃ遅いんですね……分かりました。とにかく、体育祭の練習の為に放課後ずいぶん時間がとられ、文化祭に向けての準備や練習が足りなくなっています。少しお考えいただけたらと……切望します」

 切望にアクセントを置いて牧内さんは着席した。

「はい、学校に申し入れておきます」

 生徒会長が答えて、代議会そのものがお開きになった。


「いやはや、部室の件で舞い上がちゃったしね、わたしも一歩出遅れたし……」

 廊下を教室に向かいながら、ちょっと萎れ気味の牧内さん。

「ええと……でも、新入部員とかは入ったんだよね(^_^;)」

 我ながら、的外れのおためごかし。

「うん、五人も入ったよ(^▽^)/」

「わあ、それは良かったね。しかし、生徒会のニブチンも困ったもんだ。学園フンソーやってたのも、なんだか頷けるかも」

「あれは間違ってるわよ」

 思いのほか厳しい言い方なんでビクッとしてしまう。

「え、あ、アハハ……じゃ、たみ子によろしくね(^_^;)」

 頭を掻いて自分の教室に向かっていく牧内さん。

 恥ずかしいのは私の方だ。

 同じ高校生なのに、かなり人間の出来が違う。

 早乙女のお婆ちゃんのことといい、牧内さんのことといい、令和少女のわたしは修行が足りません。

 おっと、5時間目は移動教室だ。

 移動の途中、中庭の花壇は満開のチュ-リップの後ろで、サツキだかツツジだかが盛りを過ぎて、塩たれていた。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
 
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)024・なにこれ!?

2024-05-08 06:29:25 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
024・なにこれ!?                      
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改名改稿したものです





 あれから啓介は調子が悪い。


 喉になんだかからんでくるし、目がシカシカする。

  ゲホゲホ……ゴシゴシ……

 バルサンが収まるまで部室に閉じ込められていたのだから無理もない。

 窓から逃げることも、ドアをけ破って出ることもできたのだが、ダニ・虱が付いているかもしれない制服のまま廊下に出てしまったのだから文句は言えない。

 グータラではあるが、啓介にはこういう律儀な一面がある。


「ホッ……だいじょうぶみたい……」


 最初は恐る恐るで、読んでいるワンピースもロクに頭に入ってこなかった千歳だったが、30分無事に過ごせたところで、ホッと安堵の息をついた。

「あ、もう大丈夫なの?」

 ソファーで横になっていた須磨もパチッと目を開けた。

「先輩、起きてたはったんですか?」

「さすがのあたしも眠れなかったわ( ˂˃ ‸ ˂˃) 」

「啓介先輩も、大丈夫なんですよね(¬_¬) ?」

 千歳がジト目で、須磨も半眼にした目で見つめてくる。

「大丈夫やて! そんな人をダニみたいな目ぇで見んとってーや!」

「んーーーーまあ、いいんだけどね。小山内君て、そういうとこあるんだよね。なんだか、いつもノーパソに向かってるじゃない」

「え、ええやないですか、好きなことやってて。うちは、そういうユルーイ部活なんやから」

「そりゃあ、そうですけどね。気になるじゃないですか。あたしはワンピース読んでて、須磨先輩はソファーでお休み。すごく分かりやすいでしょ。ノーパソってのは画面がこっち向いてないと、何やってるから分かりませんからね」

「大したことはやってへんよ。ニコ動とかユーチューブとか、たまにブログ読んだり、ネットサーフィンやねんさかい」
 
 グヮラッ!! 音を立ててドアが開いた!

「な、なんや、キミらは!?」

 部室の入り口には、この部室棟に入っているクラブの部長やらマネージャやらが、モゾモゾしながら立っている。

「演劇部だけでバルサン焚いたやろ!?」


「「「え……!?」」」


「ちょっと、あたしらの部室見に来てくれる!?」

「え、あ、それは……」

「ちょっと、顔かし!!」

「うお、ちょ、ちょっと(;゚Д゚)!」


 啓介は、部長たちに拉致られてしまった!


「……大丈夫かなあ……啓介せんぱい」

 顔を見交わすと、2人の視界の端にノーパソの画面が入ってきた。

「……ん?」

「「……なにこれ!?」」

 啓介が切り忘れたノーパソの画面を見て、千歳と須磨はブッタマゲてしまった!



☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜 松平(生徒会顧問)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局     
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