ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

アルテック・マルチシステム

2008年10月05日 | 巡礼者の記帳
秋の空に、飛行雲が航跡を引いている下を、金田アンプの御仁は現れた。
蝶ネクタイの似合いそうな紳士は、永年アルテック3チャンネル・マルチシステムを研究し、スーパー・ウーハーまで備え、理想のバッハの探求に余念のない人である。
席について、タンノイの音を褒めると、「この三曲目を、ちょっとお願いします」と取り出されたCDは、難解な選曲だ。
しばらく傾聴されていたが、ROYCEの建築構造に質問があって、こんな言葉を話している。
「先日の地震で自宅の壁にひびが走りまして、このさい予定外に余らせたコンクリートを、オーディオ・ルームの床に流しこんでもらいました」
大蔵省にポーカー・フェィスのまま、ぬかりなく、事は運ばれたらしい。
また、真空管の型番があれこれ話に出るので「アンプは最近真空管ですか?」とお尋ねした。
「ええ、まあ...」
パワーアンプ六台も真空管で?.....かすかに頷かれた。
踵を接した六台のアンプの灯火がもれる室内に、スピーカー群が壁面に並び、いまにも音の出る瞬間の緊迫した空気を、タンノイの向こうに想像した。
おそれ多くも真空管マルチ・チャンネルである。
「毎日、音が空中を飛び交っている最中ですが、それがはたして....指標になるバランスを参考に、こちらに車を走らせて来ました」
マルチ・システムを追求する人々は、寡黙にしていながら底引き網の成果を目指している。
何をか覚悟してスタートラインについた長距離ランナーのごとく、いつか到達する理想の音が心に鳴っているのか。







コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« リディアン・C・コンセプト | トップ | 特別機で »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

巡礼者の記帳」カテゴリの最新記事