ETUDE

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「あのときの感動を再び」クラシック・コンサート(3/15) @日比谷公会堂

2010-03-20 | コンサートの感想
今週は花粉症のせいなのか風邪なのか分からないが、ずっと頭が重い。
例年季節の変わり目はそうなるので、旧い悪友だと思って上手く付き合っていくしかないか・・・。
そんなことを言いつつ、今週は2つのコンサートに出かけた。
ひとつが、月曜日に日比谷公会堂で行われたN響のコンサート。
もうひとつは、今日聴いてきた、スクロヴァチェフスキが振る最後の読響マチネ。
まず、月曜日のコンサートから感想を。

「あのときの感動を再び」N響コンサート
<文化庁地域文化芸術振興プラン>
<日時>2010年3月15日(月)19:00開演
<会場>日比谷公会堂
<曲目>
■箕作秋吉 / 小交響曲
■ベートーヴェン / ロマンス 第1番、第2番
■チャイコフスキー / 交響曲 第5番 ホ短調 作品64
<演奏>
■前橋汀子(ヴァイオリン)
■尾高忠明(指揮)
■NHK交響楽団

3/15に行われたこのN響のコンサートは、ちょっと特別の意味をもったコンサートだった。
今から66年前の同じ日に行われたコンサートを、当時と同じプログラム、同じ会場、同じオーケストラ(当時は日本交響楽団)で、そっくり再現しようとする素晴らしい企画。
題して、「あのときの感動を再び」というコンサートだ。

当日は会社を出る時間が少し遅くなってしまったので、タクシーに乗って日比谷公会堂へ向かった。
ところが何を勘違いしたのか、直進すればいいところをタクシーは有楽町側へ左折。
「あっ違う」と言ったがもう遅い。結局、東京宝塚劇場のあたりで降りることに・・・。
時計をみると10分前。必死で日比谷公会堂まで走り、会場に入ると2分前だった。
あー、なんとか間に合った。

実は日比谷公会堂へ行くのは今回が初めて。
良くも悪くも、歴史的な建物だった。
客席に入ってまず驚いたのが、椅子。
普通に座っている限りは問題ないが、座席が狭いことと、少し動こうとすると「キュッ・キュッ」というノイズがでてしまうことには閉口した。
そして、何より驚いたのがホールの残響。
「ほとんど響かない」と言った方が早いかもしれない。
しかし、その分、音の分離は非常に良い。
消音に気を遣わなくていい反面、普段よりも音を強めに出さないと和音として響かないので、奏者にとってかなり大変なことだったと思う。
しかし、N響は、やはり「さすがN響!」だった。
音が濁らないのを逆に利用して、いつものN響のサウンドとは少々異なる輪郭のくっきりした音楽を聴かせてくれた。
とくにチャイコフスキーでは、普段聴こえないような音型・モティーフが明瞭に聴けたし、随所に新たな発見があった。
それにしても、尾高さんの指揮は素晴らしい。
このデッドな響きな中で、高揚感とデリケートな表現が見事に両立していた。
大きなうねりに気を取られていると、アンサンブルがどんどん粗くなってしまいがちなチャイコフスキーの第2楽章も、ほぼ完璧な表現だった。
ブラーヴォ!

前橋さんも、ホールのデッドな響きに随分苦労されていたようだ。
音がかすれたり、音程が不安定になる箇所もあった。
しかし、前橋さんの表現したいことは私にはっきり伝わってくる。
ロマンス第1番の最後の音はとりわけ鮮烈で、前橋さんの気持ちのすべてがこの1音に込められているような気がした。

プログラムの全てを聴き終えて、私は不思議な感動を覚えた。
本音を言えば、もっと芳醇な響きの中で音楽を愉しみたい。
しかし、このホールで、このデッドな響きの中で、世界の超一流の音楽家たちが伝説の名演を成し遂げてきたのだ。
その「伝説の響き」が時空を超えて、私に何かを伝えようとしたのかもしれない。

そして、この記念すべきコンサートは、本来いつもお世話になっているyokochanさんがいくはずのコンサートだった。
親戚の急なご不幸で行けなくなったyokochanさんからご厚意でチケットをいただき、私はこの貴重な演奏会を聴かせてもらうことができた。
yokochanさんには感謝の気持ちとともに、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
ありがとうございました。
コメント (2)
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