ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

アレクサンダー・ガヴリリュク ピアノ・リサイタル

2007-12-01 | コンサートの感想
アレクサンダー・ガヴリリュク。
私が、小菅優さんとともに、はなまるイチオシのピアニストです。
昨年、読響マチネーでラフマニノフのコンチェルトを聴いたのが最初ですが、そのとき既に「次の世代の最高のピアニストになる」という予感がしました。
今日、初めてソロのリサイタルを聴いて、その予感は確信に変わりました。

<日時>2007年12月1日(土) 18:00開演
<会場>東京オペラシティ コンサートホール  
<曲目>
■バッハ(ブゾーニ編):トッカータとフーガ二短調 BWV565
■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17番ニ長調 K.576
■シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番イ長調 op.120
■ラフマニノフ:練習曲集「音の絵」op.39(全9曲)
■モシュコフスキー:15の熟達の練習曲から第11番
■バラギレフ:東洋風幻想曲「イスラメイ」
(アンコール)
■スクリャービン:3つの小品op.1「エチュード」
■スクリャービン:エチュードop.8-12
■ショパン:幻想即興曲
■リムスキー=コルサコフ:くまんばちの飛行(シフラ編曲)
■フィリペンコ:トッカータ

前回聴いたときに印象に残ったのは、次の3点。
①「真のレガートの達人」だということ
②卓越した技術を持ちながら、技術は常に音楽に奉仕していること
③透明感を持った暖かい音色を持っていること

今日聴いても、その印象はまったく変わることはありませんでした。
しかし、驚くべき超絶技巧とともに、バッハからロシアものまで広範囲にわたる音楽を実に的確に描き分ける様式感の確かさには、脱帽するしかありませんね。
もうすでに完成されたピアニストといっても過言ではないでしょう。

前半は、バッハで始まりました。
ガヴリリュク自身気に入っているというブゾーニの編曲ですが、情感豊かにかつ格調高く奏でられたフーガはとくに見事。
どこか、リヒテルの平均律を思わせるバッハでした。
続くモーツァルトは、真珠のようなまろやかな音色とフレーズの柔らかさが印象的。
しかし、同じ柔らかさでも、シューベルトでは少し違った表情をみせます。
よりロマンティックで陰影に富んだ表現になるのです。そして何よりも、「うた」を強く感じさせてくれます。
とくに第2楽章では、まるでリートを聴いているかのような思いに駆られました。
やはり、彼の天才的なレガート技術と、弾力性をもったリズム感に負うところ大ですね。
シューベルトは、ガヴリリュクの資質から考えて、今後彼の十八番になるような気がします。

後半は、ロシアものが中心。
ラフマニノフは、前半のステージとはうって変わって、圧倒的な技術の冴えとスケールの大きさをストレートに見せつけてくれました。
裃を脱ぎ捨て、祭りの衣裳を身にまとったガヴリリュクも、やはり凄い!
絵画的練習曲の名のとおり、1曲1曲のイメージが伝わってくるような演奏でした。
弾力性に富んだバスの動きが鮮烈だった第1曲と、透明な抒情がたまらなく美しい第2曲、そしてドビュッシー風の響きが素敵だった第7曲、いずれも見事な出来栄えでしたが、とくに、第6曲は、まるで猛獣が咆哮し、俊敏な動きで獲物を追いかけるかのような表現だったなぁ。
イスラメイは、腕に覚えのあるロシア系ピアニストが好んで演奏しますが、この日のガヴリリュクの演奏は、その中でも一頭地を抜いたもの。
もう、拍手が鳴り止みません。
アンコールは5曲。
歌ってよし、超絶技巧を聴かせてもよし、もう圧倒的な演奏です。
疲れているはずなのに、笑顔で応える彼のプロ根性も大いに気に入りました。

後半の選曲と圧倒的な技巧の冴え、そして桁違いの表現力を見せつけられると、やはりホロヴィッツを意識しているのかと思わざるをえませんが、音色を含めたキャラクターは随分違うようにも感じます。
また、この日の演奏はテレビ(ビデオ?)収録されていましたので、いつかオンエアされることでしょう。

それにしても、メジャーレーベルのプロデューサーは、なぜガヴリリュクをスカウトしないんだろう。
早くしないと、きっと後悔しますよ・・・。


コメント (6)
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