ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

今年を振り返って

2005-12-31 | その他
今年も残すところ、あと3時間あまりになりました。
公私とも、嬉しかったこと、悲しかったこと、いろいろありましたが、全体としてみたら久しぶりに良い一年だったように感じます。
大晦日ですから、印象に残っていることを手短に振り返ってみたいと思います。

■コンサート編
なんと言っても、10月にサントリーホールで聴いたウィーンフィルのコンサート
今まで多くの演奏会に行きましたが、これだけ幸せなひとときを過ごせたのは初めてです。
透明感に溢れ、音に温かみと弾力性を持った素晴らしいサウンド。夢のような音でした。モーツァルトのクラリネット協奏曲の冒頭、単に音を刻んでいるだけなのに、なんと言う柔らかさ、弾力性。モーツァルトの愉悦感を、これほど身体で感じたことはありません。
また絶対聴きたい!

■印象に残ったCD、演奏家
ピアノのヴェデルニコフ。
以前から3枚組のベートーベンのピアノソナタ選集を持っていたので、良く知っているはずでした。でも正直なところ、音が綺麗でまとまった演奏をするピアニストだなあ、という程度の印象しかもっていませんでした。それが今年ベートーベンの30番のソナタの聴き比べをしてびっくり。
これは凄いピアニストだと実感しました。
何より音楽が暖かい。そして内声部が実にはっきりした演奏で、フレージングが本当に自然。したがって、バッハ・モーツァルトから近代・現代の曲に至るまで、どんな曲でも生気にとんだ魅力的な音楽に聴こえてきます。
私は自分の不明を恥じました。
幸いなことに、ロシア・ピアニズム名盤選というシリーズがリリースされて、ヴェデルニコフの演奏が聴きやすくなっていたこともあり、全て買い求めて1枚1枚聴いています。
私の場合、普通は一回聴いたらしばらくは同じCDを聴かないことが多いのですが、ヴェデルニコフのCDは一回聴いたあと、さらに2回は聴きます。きっと離れられないんですねぇ。だから全然先に進まないのですが、宝物だからしかたないですね。
ヴェデルニコフについては、来年じっくりと記事にしていきたいと思います。

■印象に残ったひとこと
著名な弁護士である久保利英明さんが12月19日の日経新聞に書いておられたものですが、
「・・・毎朝まずはインプットから始めます。厚さにすると3センチにもなる新聞や雑誌のスクラップを読みこなし、雑多な情報を頭に放り込んでおきます。インプットのないアウトプットを続けているといずれ駄目になります。(以下略)」

怠け者の私に一撃を与えた記事でした。
私の本業は企業年金なんですが、まさにそのとおりなんです。
最近インプットの量が足りないと大いに反省しました。
そして生きがいである音楽の分野でも、まったく同様だと感じました。音楽のプロではない私たちアマチュアにとって、インプットとは、「真摯にどれだけ生きた音楽を聴いているか」「どれだけ、考えながら誠実に音楽を聴いているか」「感動できるような感性を日々磨いているか」だと考えます。
やっぱり不断の努力が足りないと痛感しました。
久保利氏の言葉は、私にとって来年の大いなる課題です。

■来年の目標
既に心では考えているのですが、元旦にもう一度よく考えて決めます。

■最後に
ブログを始めたのが昨年10月、今年が事実上のブログ元年でした。
今年、何が嬉しかったといって、ブログを通して音楽好きの方といろいろ楽しく交流ができたこと、ほんとこれに尽きます。
浅学にして非才の身ではございますが、「音楽が好き」ということだけはこれからも決して変わらないと思いますので、来年も是非ともよろしくお願いいたします。
みなさま、よいお年を・・・。
コメント (4)
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クレンペラーの第九(DVD版)

2005-12-31 | BS、CS、DVDの視聴記
いよいよ大晦日です。
1年間酷使に耐えてくれた愛用のオーディオ装置(特にスピーカーとCDプレーヤー)に対して、感謝の念を込めながらじっくり時間をかけてメンテナンスしました。
そして、DVDレコーダーに撮りっぱなしになっていた映像の整理を少しやったあと、買ったままでずっと観れていなかったクレンペラーの第九の映像を、ようやく観ました。

ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 Op.125「合唱」
■指 揮:オットー・クレンペラー
■管弦楽:ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
■合 唱:ニュー・フィルハーモニア合唱団
■ソロ
 アグネス・ギーベル(S)
 マルガ・ヘフゲン(Ms)
 エルンスト・ヘフリガー(T)
 グスタフ・ナイトリンガー(Bs)
<録画日時>
 1964年11月8日、ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール

私がクレンペラーを最初に聴いたのは、大学に入学したばかりの頃でした。
テンポの遅さと、全体の見通しのよさ、そしていろいろな声部が実に良く聴こえることに驚いた記憶があります。
今日、クレンペラーの映像付の第九を聴きながら、昔感じたことを懐かしく思い出しました。
クレンペラーの指揮姿は断片的にしか見たことがなかったので、こうやって映像付で、しかも第九を全曲見られるなんて感無量ですね。
クレンペラーの第九としては、①57年のスタジオ録音盤、②ほぼ同時期に収録されたライブ録音盤、③60年のウィーン芸術週間のライブ録音盤の3種類を聴いてきましたが、その中では重厚な中に熱さを秘めた②のライブ盤と、ヴンダーリヒがテノールを歌った③のライブ盤がとくに気に入っています。
今回の映像は、そのウィーン芸術週間盤よりもさらに4年後のものですが、これまた気迫みなぎる素晴らしい演奏でした。

すでに杖をついてしか歩けない巨人が、指揮台へゆっくり時間をかけて近づいてきます。
そして聴衆にお辞儀をしたあと、椅子に座って第1楽章のタクトを静かに振り上げます。オケの配置は両翼配置。神秘的な16分音符に導かれて冒頭の主題が出てくるところから、もう偉大としかいいようにない音楽が展開されます。テンポは遅い。でももたれることはありません。手兵のニュー・フィルハーモニア管弦楽団は、さすがにマエストロの考え方がすべて分かっているような素晴らしい反応で応えてくれています。木管楽器や金管楽器の上手さも特筆すべきでしょう。
第2楽章も遅いテンポですが、クレンペラーは大きな手を使ってかなり細かく指示を与えていきます。リズムや表情を変えたいときには、必ずしっかりと指示をしていました。もう少しオケに任せるタイプだと思っていたので、この点は意外でしたね。
木管が実に美しい。ティンパニも見事に決まっています。
第3楽章は、深い音楽が聴けます。過剰に感情移入しない分、ベートーベンの音楽の素晴らしさが胸に沁みます。
第4楽章は、まず合唱が本当に素晴らしい。この楽章はなんといっても合唱が大事なんだと改めて感じました。そしてアルトのヘフゲンが譜面にまったく目をおとさずじっとマエストロを見つめて歌っている姿にも、わたしは大変感動しました。そして最後のコーダ。スコアの指示はプレスティシモですが、テンポはそれほど速くありません。それにも関わらず、音楽がどんどん緊張感を増していき、ティンパニの5つの音が見事に決まってエンディング。
近頃あまり聴かないスタイルですが、しばらく声が出せないくらいの充実した音楽でした。

大晦日に本当にふさわしい音楽、そして演奏。
マエストロ クレンペラーありがとう。
コメント (2)
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