ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

エマール&カルマー/読売日響 ベートーベン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調

2005-12-10 | コンサートの感想
第3夜は読響のマチネーコンサートです。
ほんとは第2夜の「オテロ」を先に書くべきなんですが、今日のコンサートがとても印象深かったので、順番を変えて第3夜の感想を・・・。

<日時>12月10日(土)
<場所>東京芸術劇場(池袋)
<曲目>
■ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第3番ハ短調 op.37
■シューベルト: 交響曲第8番 ハ長調 D.944〈ザ・グレート〉
<演奏>
指揮 :カルロス・カルマー
ピアノ:ピエール=ロラン・エマール

前半は、エマールをソリストに迎えてのベートーベン。
「ピエール=ロラン・エマール」 いい名前ですねえ。名前の響きだけでフランスのエスプリを感じてしまいます。ご存知の方も多いと思いますが、彼はもともと現代音楽のスペシャリストだったんです。しかし、最近では、アーノンクールが彼をソリストに指名して録音したベートーベンのピアノ協奏曲全集が大きな話題になっています。
私も聴きたかったディスクなのですが、まだ聴けていませんでした。
それだけに今日の演奏会がとても楽しみだったんです。
実際ステージに現われたときの雰囲気も、フランスの紳士そのもの。
きっと洒落た音楽を聴かせてくれるんだろうなぁ。

まず第1楽章冒頭のオケのフレーズを、カルマーと読響が本当に丁寧に奏でていきます。フレーズの最初と最後に細心の注意を払っていることが良く分かります。そのおかげで、最後まで音のテクスチュアが実に美しい。
そんな見事な前捌きの後、いよいよエマールのピアノが入ってきます。
洒落たピアノ?
いいえ、まったく違いました。
まさに硬派のピアノです。打鍵が深いというんでしょうか、一つ一つの音にとても力を感じました。まさにベートーベンの音楽がそこにはありました。
そして、ピアノが休みの間、彼は身をオケの方に乗り出して、まるでオーケストラの一員であるかのようにオケの奏でる音楽に没頭していました。
その姿がとても印象的で、以前読響マチネーで同じ曲を演奏した小菅優さんの仕草を、つい思い出してしまいました。
第2楽章冒頭のピアノのソロでは、祈りに似た敬虔な雰囲気がとても感動的。客員コンミスである鈴木理恵子さんが、眼を閉じて聴き入っていた姿が印象に残ります。楽章を通して醸しだされる格調の高さが、何よりも素晴らしかった。
第3楽章のロンドでも、一度も上滑りすることなく終始安定した音楽を聴かせてくれました。きっと基本的なテクニックが凄いんでしょうね。ひとつひとつの音がしっかりしている上に、音の粒がそろっているので、音楽がきっちり流れます。
そして最後のフォルテシモには凄みを感じさせるくらいの迫力でエンディング。
本当に素晴らしいベートーベンを聴かせてもらいました。

後半は、シューベルトの「ザ・グレ―ト」です。
前半のベートーベンがハ短調、後半のシューベルトがハ長調と、なかなか今日の選曲も心憎いです。
カルマーの指揮を見るのも音楽を聴くのも今日が初めてでしたが、いい指揮者ですね。「自分の信ずるところを的確にオケに伝え、オケから充実した響きを引き出すことが出来る」そんな印象を受けました。
第1楽章冒頭からテンポが早い。その後はあまりテンポの変化をつけないスタイル。でもスコアを忠実に再現するとこんな感じになるはずです。
まるで、「この曲のどこが天国的やねん。ザ・グレートと呼ばれるくらい充実した気力溢れるシンフォニーや」と言わんばかり。仰るとおりです。
第2楽章も、速めのテンポでありながら実に良く歌う。中間部の何と美しいこと!
第3楽章のスケルツォは、なんと言っても10月に聴いたムーティ&ウィーンフィルが素晴らしかった。でも、ウィーンフィルはこんな形の1拍子系の3拍子はもともと得意中の得意。ほっといても絶妙の揺れをもった演奏ができます。しかし現在絶好調の読響も負けていません。カルマーの踊るような?タクトのもと、素晴らしいスケルツォを聴かせてくれました。
第4楽章は、圧倒的なスピード感と力感を感じさせる、胸のすく快演。
普段はどうしても長さを感じるこの曲が、あっという間の時間に感じるくらい素晴らしい演奏でした。私も聴衆という名のプレーヤーとして、たっぷり充実した音楽を満喫させてもらいました。

ところで、どうしても触れておきたいことがあります。それはカルロス・カルマーの風貌が、今は亡き名指揮者のシノーポリに似ているなあと感じたこと。そしてもう1人、ある人物?にも似ている瞬間がありました。それは、「のだめカンタービレ」に出てくる千秋の師匠ヴィエラ。
そういえば、のだめにも登場する現都響の常任指揮者であるデブリーストが、長年音楽監督をつとめていたオレゴン交響楽団の後任マエストロこそ、このカルマーなんです。
何か縁がありそうな気が・・・。
コメント (6)
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平和への祈り~「愛しみの第九」

2005-12-10 | コンサートの感想
4日連続コンサートの第2夜まで終わりました。
第2夜の演目であった「オテロ」は素晴らしい演奏でした。
ただ、順番に感想を書きたいので、まずは第1夜の第九から。
今回の第九コンサートは半額チケットとしてゲットできたのですが、席は10列めのセンターという願ってもないロケーションでした。

平和への祈り~「愛しみの第九」
~アジア・アフリカ青少年教育支援チャリティ・コンサート
~全アフリカITセンター設立に向けて
<日時>平成17年12月8日
<場所>オーチャードホール(渋谷)
<曲目と演奏者>
■クレンゲル:12のチェロのための讃歌
■ロッシーニ(トーマス・ミフネ編曲):歌劇「ウィリアム・テル」断章
■ショパン:ピアノ協奏曲第2番 断章
(演奏)東京都交響楽団チェロアンサンブル 他

■ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付」
(演奏)
広上淳一 指揮
東京都交響楽団
ソプラノ/大岩千穂 
メゾソプラノ/加納悦子 
テノール/永田峰雄 
バリトン/三原剛
合唱/藤原歌劇団合唱部


このコンサートは、NPO法人世界青年平和サミットが開催している国際会議、World Youth Leadership Network Global Summitのクロージングイベントとして開催されました。世界青年平和サミット理事長の挨拶の後、前半は都響チェロアンサンブルによるプログラム。
今回のメンバーは、都響のチェロパートに加えて、神奈川フィルの首席チェリスト山本裕康さんや元東京交響楽団の首席チェリスト山本佑ノ介さんも参加して総勢12人のアンサンブルでした。
第1曲目のクレンゲルの曲は初めて聴く曲でしたが、これは隠れた名曲ですね。1920年A・ニキシュの誕生日のために作曲され、ベルリンフィルのチェリスト達によって初演されたそうです。とにかく美しいし、同じ楽器だけで演奏しているとはとても思えないような微妙なテクスチュアが絶品です。大好きになりました。CDではリリースされているのかしら・・・。
第2曲目は歌劇「ウィリアム・テル」序曲の断章。例の美しいチェロの五重奏のあとファンファーレに繫がるアレンジで、なかなか楽しめました。
第3曲はショパンのピアノ協奏曲第2番の第3楽章を12本のチェロで伴奏するというアレンジでしたが、コンチェルトの第3楽章から聴き始めるというのはやはり違和感がありました。

さて、後半はメインの「第九」です。
第1楽章、ちょっと弦楽器と金管が上手く噛み合わないようです。金管が少し遅れ気味なんですね。ティンパニーの強打がなにか浮いてしまっている感じがしました。
第2楽章では、アンサンブルの乱れがより顕著になってきます。広上さんのタクトが必要以上に細かい棒になっているのが、そのことを物語っています。
どうしちゃったんだろう。
この楽章が終了した後、ソリストの入場で少し間がありました。
この「間」をきっかけに、何とか変わって欲しい!
(余談になりますが、今回ソリストは指揮者の前に4人並ぶスタイルでしたが、私はオケとコーラスの間に位置するほうが好きです。)
第3楽章、十分時間をとったあと、広上さんがゆっくりタクトを振り上げます。
おっ、響きが柔らかく溶け合ってきたぞ!深く呼吸できるアダージョになりました。中間部の弦楽器のピチカートによる「3つの音」もとても印象的。4番ホルンの難所である上昇下降フレーズもばっちり決まりました。
さあ、フィナーレだ。
冒頭の全軍突入の部分は迫力満点。そしてチェロ・コントラバスの弱音で始まる歓喜の歌もとてもいい感じです。そして、いよいよソロバリトンが歌いだします。三原さんの素晴らしい声が聴こえた瞬間、何かが変わる予感が・・・。
そしてソロバリトンに続いて「フロイデ」と歌う合唱のなんと素晴らしいこと!
決して空回りすることのない凛とした歌唱が、それまでの空気を一新させました。
こんな素晴らしいコーラスは初めて聴きました。
これは奇跡が起こるかも!
果たして奇跡が起こりました。オケもソリストもコーラスも、一気に音楽として溶け合いました。とくにコーラスが入ると、さらにぱぁっと音楽が充実するんです。
難所であるオケのフーガも、その後の二重フーガも実に見事。
広上さんもありったけの情念をぶつけてタクトを振り、それに完璧にこたえるオケとコーラス。
良かった。最後にきて本当に感動させてくれました。

かくして第1夜は、無事終了。




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