第3夜は読響のマチネーコンサートです。
ほんとは第2夜の「オテロ」を先に書くべきなんですが、今日のコンサートがとても印象深かったので、順番を変えて第3夜の感想を・・・。
<日時>12月10日(土)
<場所>東京芸術劇場(池袋)
<曲目>
■ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第3番ハ短調 op.37
■シューベルト: 交響曲第8番 ハ長調 D.944〈ザ・グレート〉
<演奏>
指揮 :カルロス・カルマー
ピアノ:ピエール=ロラン・エマール
前半は、エマールをソリストに迎えてのベートーベン。
「ピエール=ロラン・エマール」 いい名前ですねえ。名前の響きだけでフランスのエスプリを感じてしまいます。ご存知の方も多いと思いますが、彼はもともと現代音楽のスペシャリストだったんです。しかし、最近では、アーノンクールが彼をソリストに指名して録音したベートーベンのピアノ協奏曲全集が大きな話題になっています。
私も聴きたかったディスクなのですが、まだ聴けていませんでした。
それだけに今日の演奏会がとても楽しみだったんです。
実際ステージに現われたときの雰囲気も、フランスの紳士そのもの。
きっと洒落た音楽を聴かせてくれるんだろうなぁ。
まず第1楽章冒頭のオケのフレーズを、カルマーと読響が本当に丁寧に奏でていきます。フレーズの最初と最後に細心の注意を払っていることが良く分かります。そのおかげで、最後まで音のテクスチュアが実に美しい。
そんな見事な前捌きの後、いよいよエマールのピアノが入ってきます。
洒落たピアノ?
いいえ、まったく違いました。
まさに硬派のピアノです。打鍵が深いというんでしょうか、一つ一つの音にとても力を感じました。まさにベートーベンの音楽がそこにはありました。
そして、ピアノが休みの間、彼は身をオケの方に乗り出して、まるでオーケストラの一員であるかのようにオケの奏でる音楽に没頭していました。
その姿がとても印象的で、以前読響マチネーで同じ曲を演奏した小菅優さんの仕草を、つい思い出してしまいました。
第2楽章冒頭のピアノのソロでは、祈りに似た敬虔な雰囲気がとても感動的。客員コンミスである鈴木理恵子さんが、眼を閉じて聴き入っていた姿が印象に残ります。楽章を通して醸しだされる格調の高さが、何よりも素晴らしかった。
第3楽章のロンドでも、一度も上滑りすることなく終始安定した音楽を聴かせてくれました。きっと基本的なテクニックが凄いんでしょうね。ひとつひとつの音がしっかりしている上に、音の粒がそろっているので、音楽がきっちり流れます。
そして最後のフォルテシモには凄みを感じさせるくらいの迫力でエンディング。
本当に素晴らしいベートーベンを聴かせてもらいました。
後半は、シューベルトの「ザ・グレ―ト」です。
前半のベートーベンがハ短調、後半のシューベルトがハ長調と、なかなか今日の選曲も心憎いです。
カルマーの指揮を見るのも音楽を聴くのも今日が初めてでしたが、いい指揮者ですね。「自分の信ずるところを的確にオケに伝え、オケから充実した響きを引き出すことが出来る」そんな印象を受けました。
第1楽章冒頭からテンポが早い。その後はあまりテンポの変化をつけないスタイル。でもスコアを忠実に再現するとこんな感じになるはずです。
まるで、「この曲のどこが天国的やねん。ザ・グレートと呼ばれるくらい充実した気力溢れるシンフォニーや」と言わんばかり。仰るとおりです。
第2楽章も、速めのテンポでありながら実に良く歌う。中間部の何と美しいこと!
第3楽章のスケルツォは、なんと言っても10月に聴いたムーティ&ウィーンフィルが素晴らしかった。でも、ウィーンフィルはこんな形の1拍子系の3拍子はもともと得意中の得意。ほっといても絶妙の揺れをもった演奏ができます。しかし現在絶好調の読響も負けていません。カルマーの踊るような?タクトのもと、素晴らしいスケルツォを聴かせてくれました。
第4楽章は、圧倒的なスピード感と力感を感じさせる、胸のすく快演。
普段はどうしても長さを感じるこの曲が、あっという間の時間に感じるくらい素晴らしい演奏でした。私も聴衆という名のプレーヤーとして、たっぷり充実した音楽を満喫させてもらいました。
ところで、どうしても触れておきたいことがあります。それはカルロス・カルマーの風貌が、今は亡き名指揮者のシノーポリに似ているなあと感じたこと。そしてもう1人、ある人物?にも似ている瞬間がありました。それは、「のだめカンタービレ」に出てくる千秋の師匠ヴィエラ。
そういえば、のだめにも登場する現都響の常任指揮者であるデブリーストが、長年音楽監督をつとめていたオレゴン交響楽団の後任マエストロこそ、このカルマーなんです。
何か縁がありそうな気が・・・。
ほんとは第2夜の「オテロ」を先に書くべきなんですが、今日のコンサートがとても印象深かったので、順番を変えて第3夜の感想を・・・。
<日時>12月10日(土)
<場所>東京芸術劇場(池袋)
<曲目>
■ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第3番ハ短調 op.37
■シューベルト: 交響曲第8番 ハ長調 D.944〈ザ・グレート〉
<演奏>
指揮 :カルロス・カルマー
ピアノ:ピエール=ロラン・エマール
前半は、エマールをソリストに迎えてのベートーベン。
「ピエール=ロラン・エマール」 いい名前ですねえ。名前の響きだけでフランスのエスプリを感じてしまいます。ご存知の方も多いと思いますが、彼はもともと現代音楽のスペシャリストだったんです。しかし、最近では、アーノンクールが彼をソリストに指名して録音したベートーベンのピアノ協奏曲全集が大きな話題になっています。
私も聴きたかったディスクなのですが、まだ聴けていませんでした。
それだけに今日の演奏会がとても楽しみだったんです。
実際ステージに現われたときの雰囲気も、フランスの紳士そのもの。
きっと洒落た音楽を聴かせてくれるんだろうなぁ。
まず第1楽章冒頭のオケのフレーズを、カルマーと読響が本当に丁寧に奏でていきます。フレーズの最初と最後に細心の注意を払っていることが良く分かります。そのおかげで、最後まで音のテクスチュアが実に美しい。
そんな見事な前捌きの後、いよいよエマールのピアノが入ってきます。
洒落たピアノ?
いいえ、まったく違いました。
まさに硬派のピアノです。打鍵が深いというんでしょうか、一つ一つの音にとても力を感じました。まさにベートーベンの音楽がそこにはありました。
そして、ピアノが休みの間、彼は身をオケの方に乗り出して、まるでオーケストラの一員であるかのようにオケの奏でる音楽に没頭していました。
その姿がとても印象的で、以前読響マチネーで同じ曲を演奏した小菅優さんの仕草を、つい思い出してしまいました。
第2楽章冒頭のピアノのソロでは、祈りに似た敬虔な雰囲気がとても感動的。客員コンミスである鈴木理恵子さんが、眼を閉じて聴き入っていた姿が印象に残ります。楽章を通して醸しだされる格調の高さが、何よりも素晴らしかった。
第3楽章のロンドでも、一度も上滑りすることなく終始安定した音楽を聴かせてくれました。きっと基本的なテクニックが凄いんでしょうね。ひとつひとつの音がしっかりしている上に、音の粒がそろっているので、音楽がきっちり流れます。
そして最後のフォルテシモには凄みを感じさせるくらいの迫力でエンディング。
本当に素晴らしいベートーベンを聴かせてもらいました。
後半は、シューベルトの「ザ・グレ―ト」です。
前半のベートーベンがハ短調、後半のシューベルトがハ長調と、なかなか今日の選曲も心憎いです。
カルマーの指揮を見るのも音楽を聴くのも今日が初めてでしたが、いい指揮者ですね。「自分の信ずるところを的確にオケに伝え、オケから充実した響きを引き出すことが出来る」そんな印象を受けました。
第1楽章冒頭からテンポが早い。その後はあまりテンポの変化をつけないスタイル。でもスコアを忠実に再現するとこんな感じになるはずです。
まるで、「この曲のどこが天国的やねん。ザ・グレートと呼ばれるくらい充実した気力溢れるシンフォニーや」と言わんばかり。仰るとおりです。
第2楽章も、速めのテンポでありながら実に良く歌う。中間部の何と美しいこと!
第3楽章のスケルツォは、なんと言っても10月に聴いたムーティ&ウィーンフィルが素晴らしかった。でも、ウィーンフィルはこんな形の1拍子系の3拍子はもともと得意中の得意。ほっといても絶妙の揺れをもった演奏ができます。しかし現在絶好調の読響も負けていません。カルマーの踊るような?タクトのもと、素晴らしいスケルツォを聴かせてくれました。
第4楽章は、圧倒的なスピード感と力感を感じさせる、胸のすく快演。
普段はどうしても長さを感じるこの曲が、あっという間の時間に感じるくらい素晴らしい演奏でした。私も聴衆という名のプレーヤーとして、たっぷり充実した音楽を満喫させてもらいました。
ところで、どうしても触れておきたいことがあります。それはカルロス・カルマーの風貌が、今は亡き名指揮者のシノーポリに似ているなあと感じたこと。そしてもう1人、ある人物?にも似ている瞬間がありました。それは、「のだめカンタービレ」に出てくる千秋の師匠ヴィエラ。
そういえば、のだめにも登場する現都響の常任指揮者であるデブリーストが、長年音楽監督をつとめていたオレゴン交響楽団の後任マエストロこそ、このカルマーなんです。
何か縁がありそうな気が・・・。