見なくともいいものを見てしまった。
庭の草木に水をやろうとしてフト足元を見ると、何かがうごめいている。片翅のアゲハだ。この断面などから見ると、どうやら鳥にでも襲われたようだ。
胴体と片翅は大丈夫なので、必死にもがいているのだが、もちろん飛ぶことも逃げることもできない。
自然の摂理の中ではこのまま生き延びるすべは全くないはずだ。可哀想だが、なんともしてやることはできない。
写真を撮ったあと、隠すように草むらに入れてやった。
その真上ではちょうどナンテンの花が開こうとしている。
彼か彼女かは分からないが、その息を引き取る最後に、この花が目に入るとしたら、幾分でも幸せな気分でその生涯を終えることができるかもしれない。
この過程で、私の頭を渦巻いていたのは「もう飛ぶまいぞこの蝶々」というオペラのアリアだ。
ポーマルシェの戯曲に基づき、ダ・ポンテが書いた台本にモーツァルトが曲をつけた歌劇『フィガロの結婚』の第一幕でフィガロ役(バリトン)が歌うアリアだ。
恋に恋する美少年、ケルビーノは、誰彼なく女性を口説き歩くため伯爵の怒りに触れて、軍隊行きを命じられてしまう。
そのケルビーノをからかいつつ、なお激励するフィガロのアリアが「もう飛ぶまいぞこの蝶々」という曲だ。
このケルビーノは、兵役に就いても無事に帰還するようだが、冒頭にみたアゲハはもはや死を待つのみだと思う。
にもかかわらず、いくどもいくども、このアリアがリフレインしながら渦巻いている。
葬送の歌にしてはいささか陽気なこの曲が・・・。
https://www.youtube.com/watch?v=rTdcfc7ugrg
ご指摘の私が貼りましたもの、やはり開かないことを知って別のものに貼り直しておきました。
こちらは舞台そのままのライブですから、どんな場面なのかその雰囲気も現れているように思います。
一度ご覧になってください。
こうした堂々とした「葬送行進曲」も意表をついて面白いかもしれませんね。でもまだそこまではお考えにならなくともよいのでは。
掲載されていた映像はリンクが切れていました。
たまたま英語のスーパーインポーズがついていた下のリンクで聞きました。
https://www.youtube.com/watch?v=DmjpECACXlo
歌の内容は自身の葬式には合わないような気もしますが、参列者の意表をついて後々の語り草になるかもしれません。家人にことづけとおこうか思案しています。゜