家の固定電話が鳴る。
取り上げる。
「〇〇○さんのお宅ですか?」
フルネームで呼ばれる。
「そうですが・・・」
「ご本人ですか?」
「そうです」
「こちら岐阜市役所の社会福祉課の者ですが」
「はい」
「昨年末に医療費還付金の案内をさし上げたのですがご覧になりました?」
「いや、見ていません。見落としたのかも・・・」
「やはりそうでしたか。それでお電話したのですが」
「はい」
「実はお宅の還付金は42,900円なんですが」
ここんところ医療費使ってるもんなぁと改めて思う。
「ところがですね、昨年末の申請に応じていただけないものですから、三月末で期限切れになっています」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/72/98a86b4a5af86a689193633bb1c40fa7.jpg)
え、え、え、42,900円がパーなの。いくぶん焦る。
「そこでですね、期限切れ以降はお取引の金融機関との業務委託という制度があってそれを通じてお支払いができるのですが」
「業務委託ねぇ。それってどんな制度ですか」
「それをご説明するためにはお宅の取引銀行をお知らせいただく必要がありますが」
「岐阜市内の殆どの銀行と取引がありますが」
「そのうちの一つを教えて下さい。主にお使いになるところ」
まあ、銀行名ぐらいまでならと
「@@銀行ですが」
「それでは、そこを通じてお支払いするために、あなたの勤務先かご親族の方の名前、それにあなたの携帯電話の番号をお知らせください」
「無職ですから勤務先はありません。とくに名前をお知らせする親族はいません。それに携帯は持っていません」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/84/e223abadcfb3543d8ccfea9874981e94.jpg)
「え?携帯はないのですか」
「はい」
「困りましたねぇ。それでは42,900円が宙に浮いてしまいます。なんとか受け取っていただけませんか」
「もちろんいただきますよ。ただそれにはいろいろ手続きなどが必要なんでしょう」
「ですから、こうやってご案内を」
「しかし、もう歳ですから電話では覚えられませんし、文書でご連絡いただけませんでしょうか」
「文書でですか?」
「ハイそうです。お願い致します」
「………」
「それではよろしくお願い致します」
ガチャン。
もうお気づきだろうが、いわゆる還付金詐欺の序の口でである。
それにしても、42,900円とは釣りの金額としては妥当ではある。
諦めるには大きいから、それが貰えるならとつい付き合ってしまいそうだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/68/825dd9f51ad64032c303ec7fce39676e.jpg)
どこで気づいたかというと、実ははじめからである。
電話の相手の口調が市役所などのものとは違う。むしろ、PCやプリンターのサポートセンターへ電話したときの感じなのだ。人の感情を損ねないようにと、バカ丁寧なのだ。それでもひょっとしてと思って聞いていたら、どんどん不自然な点が出てくる。
金融機関へ「業務委託」というのも変だ。4文字熟語を使えば恐れ入ると思っているのだろう。
それに市が、取引銀行や携帯の番号を電話で聞いてくるのも不自然だ。
もちろん、携帯はもっているが、こんな連中に教えることはない。
親族の名前など教えたら(市なら把握しているはず)、被害が拡大する可能性が大である。
よほど最後まで話を聞いて、事前に警察に連絡し、現場逮捕まで付き合ってやろうかとも思ったが、いまは、三つほどの用件を同時に抱え込んで超忙しい時期で、電話でダラダラ話している時間ももったいない。
それでも、どうも岐阜市の老人を狙っていそうなので、一応、警察に通報だけしておいた。
そしたら、是非お話を伺いたいから、これからおじゃまするという。
う~ん、そんなに大げさにするつもりはなかったのにと悔やんだがしかたがない。
結局受け入れたら、15分ぐらいして、女性2人、男性1人の3人も現れたので驚いた。
警察のなかでも生活安全課というところだからこんな構成になるのだろうか。
長引くと嫌だなぁと思っていたが、けっこうあるケースらしく、10分か15分で済んだのでホッとした。
しかし、いつまでこうやって対応しうるだろうか。そのうちに警戒心や注意力も緩んで、42,900円という手頃な金額に引っかかって手痛い目にあうのではないだろうか。
こういう生き馬の目を抜くような連中がうようよいるなかで、老いてゆくリスクは並大抵ではない。
こういう「世間」の餌食になるか、こちらの命が終焉を迎えるかの競争のようなものだ。
取り上げる。
「〇〇○さんのお宅ですか?」
フルネームで呼ばれる。
「そうですが・・・」
「ご本人ですか?」
「そうです」
「こちら岐阜市役所の社会福祉課の者ですが」
「はい」
「昨年末に医療費還付金の案内をさし上げたのですがご覧になりました?」
「いや、見ていません。見落としたのかも・・・」
「やはりそうでしたか。それでお電話したのですが」
「はい」
「実はお宅の還付金は42,900円なんですが」
ここんところ医療費使ってるもんなぁと改めて思う。
「ところがですね、昨年末の申請に応じていただけないものですから、三月末で期限切れになっています」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/72/98a86b4a5af86a689193633bb1c40fa7.jpg)
え、え、え、42,900円がパーなの。いくぶん焦る。
「そこでですね、期限切れ以降はお取引の金融機関との業務委託という制度があってそれを通じてお支払いができるのですが」
「業務委託ねぇ。それってどんな制度ですか」
「それをご説明するためにはお宅の取引銀行をお知らせいただく必要がありますが」
「岐阜市内の殆どの銀行と取引がありますが」
「そのうちの一つを教えて下さい。主にお使いになるところ」
まあ、銀行名ぐらいまでならと
「@@銀行ですが」
「それでは、そこを通じてお支払いするために、あなたの勤務先かご親族の方の名前、それにあなたの携帯電話の番号をお知らせください」
「無職ですから勤務先はありません。とくに名前をお知らせする親族はいません。それに携帯は持っていません」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/84/e223abadcfb3543d8ccfea9874981e94.jpg)
「え?携帯はないのですか」
「はい」
「困りましたねぇ。それでは42,900円が宙に浮いてしまいます。なんとか受け取っていただけませんか」
「もちろんいただきますよ。ただそれにはいろいろ手続きなどが必要なんでしょう」
「ですから、こうやってご案内を」
「しかし、もう歳ですから電話では覚えられませんし、文書でご連絡いただけませんでしょうか」
「文書でですか?」
「ハイそうです。お願い致します」
「………」
「それではよろしくお願い致します」
ガチャン。
もうお気づきだろうが、いわゆる還付金詐欺の序の口でである。
それにしても、42,900円とは釣りの金額としては妥当ではある。
諦めるには大きいから、それが貰えるならとつい付き合ってしまいそうだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/68/825dd9f51ad64032c303ec7fce39676e.jpg)
どこで気づいたかというと、実ははじめからである。
電話の相手の口調が市役所などのものとは違う。むしろ、PCやプリンターのサポートセンターへ電話したときの感じなのだ。人の感情を損ねないようにと、バカ丁寧なのだ。それでもひょっとしてと思って聞いていたら、どんどん不自然な点が出てくる。
金融機関へ「業務委託」というのも変だ。4文字熟語を使えば恐れ入ると思っているのだろう。
それに市が、取引銀行や携帯の番号を電話で聞いてくるのも不自然だ。
もちろん、携帯はもっているが、こんな連中に教えることはない。
親族の名前など教えたら(市なら把握しているはず)、被害が拡大する可能性が大である。
よほど最後まで話を聞いて、事前に警察に連絡し、現場逮捕まで付き合ってやろうかとも思ったが、いまは、三つほどの用件を同時に抱え込んで超忙しい時期で、電話でダラダラ話している時間ももったいない。
それでも、どうも岐阜市の老人を狙っていそうなので、一応、警察に通報だけしておいた。
そしたら、是非お話を伺いたいから、これからおじゃまするという。
う~ん、そんなに大げさにするつもりはなかったのにと悔やんだがしかたがない。
結局受け入れたら、15分ぐらいして、女性2人、男性1人の3人も現れたので驚いた。
警察のなかでも生活安全課というところだからこんな構成になるのだろうか。
長引くと嫌だなぁと思っていたが、けっこうあるケースらしく、10分か15分で済んだのでホッとした。
しかし、いつまでこうやって対応しうるだろうか。そのうちに警戒心や注意力も緩んで、42,900円という手頃な金額に引っかかって手痛い目にあうのではないだろうか。
こういう生き馬の目を抜くような連中がうようよいるなかで、老いてゆくリスクは並大抵ではない。
こういう「世間」の餌食になるか、こちらの命が終焉を迎えるかの競争のようなものだ。
けれども最近、この地区は空き巣に狙われているとの回覧板が回った。
嫌な世の中。留守でもラジオやテレビなどをつけておいたほうが防犯になるとか。
電気会社の回し者か?とちらと思ってしまう。んな自分が嫌になります。
とりわけ、自分の衰えと日々直面して怯えている老人にとっては、まんまとやられたというショックは大きなものがると思います。たとえ周囲が同情してくれても、そこに含まれている「憐憫の情」は、いたたまれないものを含んでいると思います。
彼らは、お金と同時に人の尊厳をも奪ってゆくのです。
その3人は駅などで暇そうにしていたところを悪の手配師からリクルートされ、駅近くのマンションの一室で電話による詐欺にいそしんでおったそうです。
数百万の悪事を働いたところで悪の手配師が何を思ったのかマンションの家賃を払わなくなったものだから、大家が合いかぎで室内を確認したところ、家具のほとんどない部屋に電話や携帯電話だけが散乱しているのに驚いて警察に通報し、張り込んだ警察に現行犯で逮捕となりました。
3人は20代前半の男性で互いに面識はなく、一人は大学生、もう一人は若い妻と幼児を抱えた無職、最後は社会人みたいでした。最後の人はピースボートの世界一周クルーズに参加したことがあったことを理由に弁護士と裁判官が何とか罪が軽くできないかと言葉を交わしていました。芳しい結論には至らなかったようでしたが。
だまし取った現金は犯行した日のうちに集金されていました。しかし、実行犯3人への報酬はまだ支払われていなかったらしく、裁判官が「え?、君ら一円ももらっていなかったの」と驚いていました。
気軽な気持ちで悪事に加担し弱者から金をだまし取り、その結果ただ働きさせられて前科がついてしまいました。一番気の毒なのは詐欺にあった被害者の方々であることは言うまでもありません。加えて、詐欺の電話の向こうでホラ話をしている若者たちの、悪事に加担するハードルの低さに憐みの感情すら湧いてきました。逮捕され、裁判を受けたことを幸運と考えて、気持ちを入れ替えてこれからの人生を生きていけるのか、3人の退出する後姿を見ながら考えました。
悪事をはたらく組織の中にも、搾取ー被搾取の関係があるのを知り、面白く読ませていただきました。
それにしても、ピースボートに参加したから罪の軽減をというのには思わず笑ってしまいました。
ことほどさように、彼らの中の「悪事に加担するハードル」は低いのでしょうね。
文中にも書きましたように、私に電話してきた男も、コール・センターかサポート・センターの経験者のような話し方でした。彼の中では、マニュアル通りしゃべるということで、詐欺との差異はほとんどないのかもしれません。