雷ブログ

落雷抑制システムが運営するブログ

海の教科書  柏野祐二 ブルーバックス 講談社

2016年07月13日 09時00分00秒 | 雷日記
こんにちは、落雷抑制システムズの松本です。

船というのは時に人の人生よりもさらに数奇な運命をたどることがありまして、その筆頭は「宗谷」です。 昭和初期にソ連からの注文で砕氷貨物船として建造され、商船として活躍中に魚雷を受けても沈まず、第二次大戦を生き残り、それを海保で巡視船として使用していましたが、さらに改装して南極に6度も行ったのですから今思えば驚きのご長寿なのです。私が子供の頃、何回か南極で氷に閉じ込められソ連の砕氷艦に助けてもらったことがあるこの船を、横浜港に見学に行った時には大きな船と印象でしたが、最新の南極観測船「しらせ」【12,000トン】から比べると、この船で南極まで行った先達の勇気に感心します。 日本の南極観測が始まった頃は日本も貧しく、それでも南極にまで行くというので国を挙げて応援し、最初の航海の出発時には晴海頭頭には1万人もの見送りがあったそうです。 今は、船の科学館で静かに余生を送っています。

観測船「みらい」も同じく、数奇な運命の船で、日本でも原子力船を作ったことがあったのです。放射線の事故があり、結局、原子力船としては活躍できずに、原子炉を下ろし、船の後部はディーゼル線として作り変え、現在は海洋研究開発機構の観測船として立派に活躍しているのです。 原子炉を搭載する位ですから、相当頑丈に作ったことでしょう。砕氷船ではありませんが、耐氷構造の大型船なので世界中の海に出かけることができます。 原子力船「むつ」が退役した後も、観測船として立派に海洋観測の役に立っているのは嬉しいことですし、日本が海洋観測で世界に貢献しているというのは日本人としての誇りです。 どこぞの大国が経済と軍事力で近隣の国々といさかいを起こしているのを見ると、このような地道な海洋の研究で貢献してこそ大国なのです。 お金にならない事でも地道に研究することが大国の役割で、こういう貢献を日本はもっと誇っても良いのです。

この「みらい」で、20回も航海に出られた柏野さんが海について解説した本で、「みらい」ということで大いに興味を引きました。 日本は海に囲まれた島国でありながら、海に関する教育、人々の関心もイマイチ、海は夏場の海水浴くらいにしか興味もなく、日本では海を利用した貿易で生きているのに、船員へのなり手も少なくなり、大型ロケットで派手に打ち上げられる宇宙開発に比べれば、地味なのです。 ノルウェーでは人口が600万人弱ですが、ヨットの登録は100万近くあるとのことで、流石、バイキングの子孫という感じがあり、日常的に海に親しんでいます。 それに比べると日本の海への関心というと、せいぜい食べ物としての「お魚」なのが淋しい限りです。

本書は、海洋観測の歴史から、観測に使用する道具、海水の性質、波、潮汐、エルニーニョと海の疑問について一通りの解説があります。一冊で万遍なく海について知るには絶好の書です。 同じブルーバックスの中で、「津波と波浪の物理」、「海洋と大気の物理」は、波長と水深の関係や地球規模での「流れ」の話が主ですが、海洋観測を自らしてきた体験の中から大きなとらえ方で海をについて教えてくれます。 「人を相手にせず、天を相手にせよ」とは西郷隆盛さんのお言葉ですが、大自然の海を相手にしながら、観測精度は緻密でその幅の広さは対数的な感じさえします。海の大きさと共に海にガップリ取り組んだ著者の柏野さんの人の大きさまで感じさせる内容です。

〒220-8144 神奈川県横浜市西区みなとみらい 2-2-1
横浜ランドマークタワー 44階 4406
落雷対策専門の株式会社落雷抑制システムズ
電話 045-264-4110
公式サイト http://www.rakurai-yokusei.jp/
Eメール info@rakurai-yokusei.jp
憲法改正を実現する1,000万人ネットワーク 美しい日本の憲法をつくる国民の会

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする