から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

127時間 【感想】

2011-06-19 22:39:24 | 映画
今年(前年作品)のオスカーノミネーション、10作品のうち、
個人的に公開を楽しみにしていたのは「ザ・ファイター」と「127時間」であった。

期待しすぎたせいか前者の「ザ・ファイター」は観て物足りなさが残ったが、
もう一方の本作「127時間」は期待値を見事上回ってくれた。

力強く、希望に満ち満ちた大熱狂の映画。
いろんな意味で映画史に残る傑作だ。

本作は実在の登山家アーロン・ラルストンが体験した実話を映画化したもので、
ロッククライミングに出かけた男が、突然の落石事故に見舞われ、
右腕をその落ちた岩に挟まれ、谷の間で身動きができなくなってしまう話だ。

ストーリーは極めてシンプル。展開、結末も全くのヨミ通り。
おおかたの予想通り、腕を切断して脱出する話だった。

展開が読めてしまうと、興醒めし、一気に熱が冷めることが多いが、
この映画のもつ求心力が尋常ではないため、退屈とは無縁で、熱も冷めず。
上映時間90分、疾走する。

主人公アーロンは極めて個人能力が高く、誰の力も借りずにズンズンと険しい岩山を進んでいく。
そんな彼の性質は私生活にも表れていて家族、恋人に対しても、
自分は自分、他人は他人で、深く関わらずに生きている。
彼らがどれだけアーロンのことを想っているのかも顧みず。。。
アーロンを待ち受けていた予想もしないアクシデントは、
そんなアーロンの生き方とアーロン自身を対峙させるための運命であったかのよう。

アーロンを演じたのはジェームス・フランコ。
コメディもハマるオールランダーで、私の好きな俳優だ。
本作で主演オスカー候補となったが、まさに入魂のパフォーマンス。
孤立無援。生を選ぶか、死を選ぶか、その極限の世界にいるギリギリの人間の様を演じきった。
上映時間ほぼ彼の一人芝居だが、そのリアリティにただただ息を呑む。

失神者が出たという、アーロンの腕切断シーンは、見て納得。
これほどまでに痛みを感じるシーンを私は観たことがない。
とにかく凄まじい。。。冷や汗ダラダラ。緊張のあまり体がのけぞった。
このシーンで観客の、好、不評がはっきり別れそう。(終わった途端、席を立つ人多し)
しかし、このシーンこそアーロンの生への渇望、その大きさであり、
「勝利」というフィナーレを飾るためのクライマックス、
また同時に、監督ダニーボイルが本作に懸ける想い、強いメッセージなのだと感じた。

誤魔化しの一切効かない本作にあって、
監督ダニー・ボイルの手腕がいかんなく発揮された作品ともいえる。

大音響の音楽、キレキレでエネルギッシュな映像でオープニングから圧倒される。

身動きができなくなり衰弱するアーロン。
研ぎ澄まされた五感により豊かなイマジネーションが、作品世界を縦横無尽に駆け回る。

細切れとなった何気ないシーンでも、後の展開の伏線や、キーファクターになってたりと、
ダニー・ボイルが、一流の映像監督ということだけでなく、
作家性を持つ一流の映画監督であることが証明される。

脚本、音楽、撮影等々、スラムドック~のスタッフが再結集したらしい。
死へと近づきながらも失わない「陽」のパワー。なるほど~である。

ラストのアーロンの姿、
希望に満ちたその世界を前に
興奮と感動で身体が打ち震えた。

人に薦めることにあまり気が進まないが、
運命を突き破り、前進する勇気を与える素晴らしい映画であった。

【85点】

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