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PAN ネバーランド、夢のはじまり 【感想】

2015-10-31 10:00:00 | 映画


ファンタジーといえばディズニー映画だ。ピーターパンを描いた物語ということで、これまたディズニー映画と思いきや、なんとワーナー映画が配給しているとのこと。ワーナー映画といえば、近年「パシリム」「ゼログラ」「インター・ステラー」「マッドマックス」など、才能ある監督による傑作を生み出し続けている製作・配給会社だ。「ファンタジー」というあまり馴染みのないジャンルだが(ハリポタ以来?)、どう化けるのか気になっていた。監督の名前を見るとジョー・ライト。前作の「アンナ・カレーニナ」の残像があり、危険な匂いがした。

本作では、ピーター少年が、どのようにして空飛ぶ永遠の少年「ピーター・パン」になったのかという経緯を描いている。

自分が覚えている「ピーター・パン」の物語は、少女ウェンディの前に現れたピーター・パンがネバーランドに彼女を連れ出すところから始まって、妖精のティンカーベルと共に、鉤づめのフック船長と戦うというものだ。そのなかで印象に残っているのは、登場人物たちの飛翔シーンであり、その能力をもたないウェンディはピーター・パンから飛ぶ方法を教わる。「楽しいことを思い浮かべるんだ」と、なんとも素敵な方法である。ピーター・パンという物語には、空を自由に飛び回るという人間が持つ普遍的な夢が不可欠だ。そして、本作でも飛翔シーンを見せ場とし、様々な創意工夫がなされている。

ピーター少年は孤児だったという設定で、孤児院で寝ている最中、人さらいのためにネバーランドからやってくる海賊たちに誘拐される。驚いたのは、その一連のシークエンスで、現実世界と架空世界の垣根をなくしている点だ。海賊船は地球上の空中に浮遊していて、戦時中だろうか、未確認飛行物体とみなした空軍が海賊船を迎撃しようとする。空軍の猛追を受けながら、空飛ぶ海賊船がイギリスの空中を滑走するシーンがダイナミックで楽しい。3D表現を活かしたアクションも実に効果的だ。現実世界からネバーランドへ移動するシーンも、まさからの宇宙跨ぎで、イメージを裏切る描写の数々にワクワクする。

しかし、その後に舞台を移したネバーランドから調子が悪くなる。
悪い予感は的中で、ジョー・ライトはビジュアルのセンスがあまりないみたいだ。

ピーター少年のお出迎えとばかりにニルヴァーナが大合唱され(なぜ??)、白塗りヅラ被りで道化師にしか見えないヒュージャックマンが「ようこそネバーランドへ!」と高らかに宣言。ピーター少年の絶対絶命のシーンでは「なんとなく」空中浮遊に成功。黒ひげから逃れ、たどり着いた原住民居住区の美術のチープさ。原住民たちのリアクションの騒々しさ。出てくるクリーチャーはアニメーション。原住民と海賊の攻防は派手なお遊戯会のようだ。目に飛び込む映像がことごとく幼稚に見える。大人も満足できる画にしないのはなぜだろうと頭を抱える。

極めつけは、クライマックスだ。ピーター・パンと妖精の関係は密であるはずなのだが、その絆の形成を目に見える形で表現しない、。妖精の国の危機を救う流れの延長でしか描いておらず、元々その火種を作ったのはピーター少年自身だったりする。そもそも妖精たちの造形が「虫」であり、ピーター・パンと同じ位置づけにいない。海賊たちへの逆襲は、妖精を使ったまさかの「エアベンダー」で「そんなやり口あるかーい!」とズッコケてしまった。一番盛り上がるシーンなのに、同じアクション一辺倒で片づけてしまうのも雑だ。ピーター少年が、ピーター・パンに覚醒する瞬間も、もっとドラマチックに見せられたのではないか。フック船長との友情がきっかけになるところまでは良かったのに。

今回、ピーター少年を演じたリーヴァイ・ミラー君は、実に良い面構えをしていて、弱さを見せるのも強さを見せるのも、どちらも器用にこなせる俳優だと思えた。帽子を被った時の「ピーター・パン」の完成度がきわめて高く、彼のキャスティングは大成功だったといえる。あと、意外な発見だったのはフック船長演じたギャレット・ヘドランドの見事な収まり具合だ。気恥ずかしさも感じさせるファンタジーの中で、ピーター少年の兄貴的なキャラを違和感なく好演。彼が持つ渋くて太い声色がファンタジーの世界でも活きていた。ヒュー・ジャックマンとルーニー・マーラについては、どちらも巧い俳優だが、本作にキャスティングされた狙いはよくわからず。ルーニー・マーラは有色キャラ(原作)を演じることに抵抗はなかったのかなー。

普通に見ていれば、ピーター少年とお母さんの愛情物語まで行き着くはずなのだが、それまでの道のりに失望が多く、正直あまり頭に入らなかった(隣の女性は感涙)。映画館で見る娯楽作として一定水準はクリアしていると思うが、いろいろと勿体ない映画だったと思う。

アメリカ本国では、公開3週目にして製作費の5分の1も回収できていない深刻な状況になっているみたい。製作費は1.5億ドルという大規模予算だったらしいのだが、正直、どこでそんなにお金がかかっているのかわからない。ファンタジーも監督のセンスが問われるのだと強く認識した。

【60点】
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