
「大統領の執事の涙」を観る。
全米での公開時、多くの高評価を受けていたものの、
オスカー候補からはことごとく漏れた映画だ。
30以上、ホワイトハウスの執事として7人の大統領に仕えた「セシル」という男の話だ。
そのセシルの目線からアメリカの歴史の変遷を見つめる。
アメリカには黒人差別という恥ずべき時代があった。
白人が黒人を殺しても罪に問われなかった異常な時代だ。
アメリカ国内の近代史は、黒人差別との戦いの時代といってもよいかもしれない。
その時代のウネリを本作では丁寧に描きこんでいる。
このテの話は過去作でも散々擦られていて、特に新鮮味はないのだけれど、
未来への戒めとして、何度見ても噛み締めてしまう。
また、本作はホワイトハウス内でのドラマよりも、
そこから離れたセシルとその家族のホームドラマ色が強い。これは意外だった。
白人に仕え、白人から生活の糧をもらっているセシルと、
黒人差別解消に向け反政府活動に傾倒するセシルの息子との確執が描かれる。
目の前にある黒人差別に目をつむり、白人に迎合するように見えたセシルも、
執事として大統領たちからの信頼を勝ち得た結果、黒人の地位向上を体現するのだ。
生き方は違えど、セシルも息子と同様に時代に戦っていたことが浮き彫りになる。
なかなかのストーリーテリングだ。
監督はリー・ダニエルズ。彼にしてはやや平凡な映画を作ったという印象もある。
いつものスパイスがもう少し欲しかったな。
ちゃんとした話で濃い内容なのだけれど、個人的な趣味もあってか、
この長い大河ドラマがやや冗長に思えて、何度か睡魔が襲った。
セシル演じたフォレスト・ウィテカーの熱演が光る。
オスカー候補から外れたのは作品のインパクトが薄かったからかも。
彼の妻を演じたオプラ・ウィンフリーの助演ぶりがRotten等で評価されていたけど、
そんなに印象に残らなかった。オスカー候補から外れたのは順当か。
「執事」という馴染みのない仕事を本作で知ることができた。
「部屋の空気になること」、なるほどー。
【65点】
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