2作目はつまらないというジンクスを一蹴。車に引かれようがお構いなナシの無敵ぶりはご愛敬w。どんだけ殺せば気が済むのかという、ジョン・ウィックの戦闘能力に圧倒される。1作目と比べてドラマは希薄になったが、「誓約」という新たなルールが巧く活かされ、襲いかかる未曽有の危機も必然的に映る。壮絶なアクションシーンはもちろんのこと、裏社会の作り込みが前作にも増して素晴らしい。キアヌ演じるジョン・ウィックの活躍だけでは、ここまで面白くならなかったはずだ。やっぱりルールがないと何事も面白くない。イタリアでの「ショッピング」が楽しく、「テイスティング」や「社交用(スーツ)」に吹き出す。
前作の直後から物語が始まる。前作で望まずして引退からカムバックしたジョン・ウィックは、再び、平穏な日々に戻ろうとする。しかし、新たな問題が浮上し、再び、戦いの渦中に身を投じることになる。
前作における主人公のモチベーションは「復讐」だったのに対して、本作のモチベーションは「サバイバル」といえそうだ。「誓約」という、後付け感の強い新たな設定が持ち込まれるが、これがなかなかよく考えられていて気にならない。再び「殺し屋稼業」の裏社会に戻ってきたことの代償は大きいに違いなく、「タダでは済まされない」状況が説得力を持つ。「誓約」を破ったことで「ルール」に従わなければ自由になれず、ルールを守ったとしても、攻撃の矛先は結局ジョン・ウィックに向かってくる。どう転んでも地獄が待ち受けるなか、生き延びるためにジョン・ウィックは戦わざるを得なくなる。
自身が望んだ戦いだった前作に対して、身から出たサビとはいえ、戦いを強いられる形の本作である。俄然、前作のほうがジョン・ウィックの孤高の戦いに華が出る。しかし、それを補ってくれるのが、アクションの多様化とボリュームアップ、そして、さらに広がった裏社会の作り込みだ。
本作ではジョン・ウィックの首に莫大な懸賞金がかけられる。世界中の暗殺者が色めきだち、どこにいっても命が狙われるw。もはや笑いを取りに行ったとしか思えないアクションシーンも少なくないが、前作以上のゴア表現を含めて、壮絶な死闘が繰り広げられる。最小カロリーで相手を確実に殺す戦法である、頭部と心臓部への「パパン!」というスマートな銃撃に加え、激しい肉弾戦も大増量した。「殺さなければ殺される」という緊張感のなか、ジョン・ウィックから殺気がほとぼしる。前作では武勇伝としてのみ語られた「鉛筆」攻撃も残酷描写をもって描かれる。そのあまりの迫力に笑いが込み上げる。車に思いっきり跳ね飛ばされて通常なら複雑骨折のところを、平気で戦いを続ける主人公の姿にシラケなくもないが、ここまで豪勢な格闘シーンを見せられては文句はいえない。
しかし、それ以上にツボだったのが、裏世界の描かれ方だ。前作もアクションよりも、その世界観に魅了されたが、本作ではさらにディテールが充実している。激しいアクションの息抜きのためのユーモアや、一辺倒になりがちなジョン・ウィックVS暗殺者たちとの戦いに変化をもたらす。裏社会で使われる金貨をもって戦闘装備を揃える「ショッピング」や、殺しを発注する「アカウント部」の存在(働くオネエさんたちが墨入りで堅気じゃない感じがイイ)、裏社会で守らなければならない絶対的ルール、知られざる対抗勢力の存在など、新たに追加された設定がイチイチ面白い。そのなかでジョン・ウィックは常に顔馴染みであり、彼が伝説的存在であったこともアピールされる。
主演のキアヌ・リーブスは体が仕上がっていない。年齢を調べたら52歳であり、その年齢を考えれば頑張っているほうだと思うが、前作から時間経過のない設定なのだから、前作と同じくらいに体重を絞ってほしかった。タダでさえ表現力の乏しい顔面が、肉が付いたことで余計にドン臭くなる。本作においては彼の演技力よりも、アクション演出によってかなり救われている印象だ。彼の全盛期であった「マトリックス」はもう20年近く前のこと。本作で登場したローレンス・フィッシュバーンとの久々のツーショットに感慨深いものがあった。
ラストは、ジョン・ウィックが新たな代償を払う形で終幕する。守るべきルールがあるからこそ、そのルールを破ることに新たな価値が出てくる。しかしながら、中途半端な終わり方なのは確かで、続編を見ないと気持ちが悪い。後先を考えずに、最後は綺麗に着地させてほしかった。
【65点】
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