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DEUCE シーズン1 【感想】

2018-12-01 09:00:00 | 海外ドラマ


HBO製作の海外ドラマ「DEUCE」を観終わったので感想を残す。

全8話。非常に面白かった。早くシーズン2が見たい。
売春、ポルノ、タバコ、酒、ドラッグ、金が乱れる刺激的な歴史ドラマ。
ジェームス・フランコ、演出家として才能あるなぁ。

1971年のニューヨーク。娼婦たちが通りに立ち並び、当たり前に売春が横行していたDEUCEというエリアで起きる様々な人間模様を描く。

アメリカのポルノ業界を知る映像作品としては、ポール・トーマス・アンダーソンが20代の若さで撮った「ブギーナイツ」が真っ先に思い出される。あれは70年代末期が舞台であり、ポルノ映画の絶頂期が描かれていた。本作はその前の話であり、「ポルノ」というタイトルがつくものの、ポルノが大衆文化として浸透する起源が描かれる。セット、美術、ファッションと、71年の再現描写が凄まじく、その風景を見ているだけで楽しい。かなりの製作予算が投下されているようで、さすがはHBO、まだまだNetflixには負けていられないといったところだ。

売春を生業とする娼婦たちが物語の中心にいる。その娼婦たちを管理するポン引きたち。彼らを取り締まる警察官たち。娼婦たちを見守るダイナーの主人。娼婦たちの風俗を取材するジャーナリスト。その界隈でバーを営む主人公の男。バーで働く大学中退の上流階級女子。同じくバーで働くゲイの男子。バーを守る用心棒。主人公に出資するマフィアなど。人種と個性のカオスな世界で、キャラクターたちがボーダレスに繋がる。これが本作の面白いところ。

主人公には、双子の兄がいる。誠実な客商売に勤しみ、商才を発揮する主人公に対して、ギャンブル中毒でトラブルメーカーの兄。互いに口悪く罵りあうも、兄が勝手に作った借金を無条件に弟が肩代わりするなど、強い兄弟愛がある。雇われ店長として働いていた主人公の商才を買い、マフィアがオーナーとして新しい店に出資する。その店にキャラクターが一同に集う。肌の色も、職業も、セクシュアリティも関係なし。世界一先進的な都市ニューヨークの縮図のようだ。店のオーナーである主人公は娼婦たちにも敬意を払う。演じるジェームス・フランコがカッコいい。



娼婦とポン引きの関係はなかなか歪だ。その間には肉体関係があり、娼婦の恋愛感情に漬け込むケースが目立つ。ときに暴力を振るうことも厭わない。一日のノルマを課し、彼女たちが体1つで稼いできた売上を集金し、給与として戻す。共存関係というより主従関係のようだ。ポン引きという字幕訳はミスリードで、彼らは客引きもせず、「稼いでこい」と命令するだけ。あとは娼婦たちに任せっきり。娼婦たちの安全を担保する役割があるようだが、そんなシーンも出てこない。タチの悪い「ヒモ」という表現が適当だ。



娼婦たちの多くが地方の田舎から出てきた女子たち。家庭環境に恵まれず、経済的にも貧しい。都会で暮らすことを夢見て、その生活のために体を売る。ただ、その様子に悲壮感はなく、強気に男たちに絡み、客をとる。逞しい姿だ。上京する前の地方でも娼婦として仕事をしてきた女子も多い。ポン引きにコキ使われるが、その関係に依存している面が多分にあって不思議だ。多くがポン引きと協業しているなか、「独立系」として売春を営む熟女娼婦がこのドラマのもう1人の主人公。映画界でも活躍するマギー・ギレンホールがトップレスで娼婦の生き様を体現する。熟れてきった裸体に女優魂を見る。



71年はアメリカにおける性風俗の曲がり角だったようで、これまで形式だけの警察の取り締まりも、警察署のトップの交代によって本格的に強化されるようになる。同時に、ポルノ産業への法律が緩和されるタイミングであり、働き口のなくなった娼婦たちと、ポルノで一攫千金を狙う人間たちとの方向性が一致。今では世界一のポルノ大国となっているアメリカの礎を知った気になる。ドラマの最終話では、伝説的ポルノ映画「ディープ・スロート」が封切られ、ポルノカルチャーの幕開けの予感させる。

本作は群像劇だ。各方面で様々なドラマが展開。2人の主人公のサクセスストーリー、同世代である元女子大生と娼婦の友情、ポン引きと娼婦たちの変化する関係、警察官と娼婦たちの交流、監督とポルノ女優の信頼関係、ニューヨークの裏側で華やぐゲイカルチャーなどなど。

計8話のなか、主演で1人2役を演じるジェームス・フランコが、3話と7話を監督する。この2つが明らかに面白い。特に7話目の「変化」が一番印象に残った。過酷な状況で生きる娼婦たちに優しい視線が注がれ、新たな人生の出発を迎える1人の娼婦にスポットを当てる。女性たちへの暴力に反撃する衝撃的なラストはカタルシスを帯び、随所に非凡な演出力を感じた。昨年の映画「ディザスター・アーティスト」でも監督として手腕が評価されたばかりだ。ベン・アフレック、ジョエル・エドガートンに続く、優れた俳優兼業監督として今後も活躍しそうだ。

シーズン2は、アメリカで今秋に放送が終了。このシーズン1の5年後からスタートするらしい。日本でのリリースは来年のいつになるのだろう。シーズンを追うのが楽しみな海外ドラマがまた1つ増えた。

【75点】

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