【未公開映画ベスト】 ブロークン
年末休みに新作コーナーで見つけた1本。2014年の未公開映画ベストは本作で決まった。
ティム・ロスとキリアン・マーフィーが共演しているというだけで観たが、とても面白かった。
イギリスの田舎町を舞台に小さなロータリーを囲んで住んでいる、ご近所3家族を巡る話。DVDのパッケージから察するに100%サスペンス映画なのだが、その括りにまとめてしまうことには違和感があり。広義で、人生の機微や滑稽さを描いたコメディ映画といっても良いんじゃないかと思う。当たり前だが人生を送る上で人との接触は避けられず、より良い人生を送るために、それらと良好な関係を築きたいと思う。だが、異なる性質を持つ人間同士、そう巧くコトは運ばない。ちょっとした誤解や思い過ごしで、知ら ぬ間に摩擦が起きている。本作ではその摩擦が、平和に暮らす3家族の歯車を狂わしていく様子を描く。テイストは「クラッシュ」や「リトル・チルドレン」に近いが、本作の特異点は物語の中心に、主人公である女子のチャームを置いたことだ。主人公は生まれつき糖尿病というハンデを背負っているが、聡明で心優しい11歳の女の子だ。美少女ではなく、チャーミングという表現がよく似合う。根明でお調子者っぽいノリが最高に可愛い。3家族の中から派生する、暴力、不健全なセックス、溺愛(偏愛)といった多くの穢れが付きまとう世界で、その穢れに触れながらも、ピュアに生きる主人公の姿が爽やかで愛おしい。その世界観をよく表した、映像、テンポ、音楽も秀逸で、どれもツボに入った。主人公を温かく見守る父親役のティム・ロスや、珍しく普通の凡人を演じたキリアン・マーフィーも素晴らしい好演。そして主人公を演じたエロイーズ・ローレンスのキャスティングが最大の成功要因。笑ったときの口元がキュート。
冒頭の「汚くなったのを掃除して、綺麗になっていくのが好きなんだ」という隣人の青年のセリフなど、振り返ると伏線がしっかり練られていることに気づく。摩擦の発生源であったキャラによって、ラストが転結するあたりとか、まさに予期せぬ人生のコメディ。そんなもんなんだよな、きっと。
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