ずいぶんと昔、テレビ放送でやっていたのを流し見していたが、Netflixにてリマスター版らしきものがアップされていたのでじっくり鑑賞。今、改めてちゃんと見ると印象が随分と変わった。
戦後直後より広島で起こった暴力団抗争を描く。実録の映画化。
当時、ヤクザを初めて「暴力団」とみなし、ヤクザ映画の新境地を拓いたといわれる本作。一般市民が行きかう街中でも公然と銃撃による暗殺劇が繰り広げられ、社会にとっての「害虫」ぶりが際立つ。映画だけに多少盛っている描写とはいえ、こういう歴史を経て「暴力団」への取り締まり強まったのだなと感じる。描かれるのは裏切りと復讐の連鎖であり、銃による殺害シーンが非常に多い。その流血シーンで使われる血糊は絵として映えるように鮮やかな朱色が使われているようだ。殺しが達成されたあとのキメ音楽の「チャララ~♪チャララ~♪♪」が少しクセになり、つい口ずさんでしまう。映画と音楽が密接な関係にあることを再認識する。
今では一般的となっている臨場感を生み出すための手ブレを活かしたカメラワークや、セリフの判別よりもリアリティを優先した話し方や方言(広島弁)の使い方などが特徴的だ。暴力を中心としたシリアスなアクションシーンが目立つなか、コメディシーンもふんだんに盛り込まれていることに気づく。「指詰めてケジメ」のシーンで、切った指が庭先に飛んで行方不明となり、大人たちが「どこだどこだ」と狭い庭を這いつくばるシーンは実にシュールだ。子どもの頃、料理番組のイメージしかなかった金子信雄演じる組長は、大の臆病者であり、泣きじゃくりながら部下たちに救いを求めるシーンとか最高に笑える。深作欣二監督のユーモアセンスがとても冴えている。
また、お父さんのイメージしかない菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫、田中邦衛らベテラン俳優たちの、まだ若くギラギラした頃の様子が新鮮だ。年齢でいえば、菅原文太のほうが上なのに、その恰幅の良さからか、梅宮辰夫のほうが「アニキ」という設定が面白い。銀幕スターたちの豪勢な夜遊びを勝手に想像する。
【65点】
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