
ピッチ・パーフェクトの続編を見る。前作のサウンドトラックをテンションを上げる時に今でもよく聴いている。前作が好きだっただけに比較は避けられないのだが、映画館で観られて良かったと思える面白さ。前作と色味は変わらないものの、スケールアップによって逆にパワーダウンした印象があり、前作のような突き抜けた高揚感は得られず。エンドロールのクダリが一番面白い!?
前作に引き続きの、ガールズアカペラグループ「ベラーズ」が大統領の生誕記念式典で失態をおかし、アカペラ大会への出場権を剥奪される。その出場権の復活をさせるため、世界大会での優勝を目指すという話。
前作で強く感じたのは、アカペラという音楽の可能性だ。人間の声の重層によって奏でられる音楽は、歌唱の技量というより、多種多様な個性が集まるほど豊かなものに発展してくれる。いわば、個性の肯定の上に成り立っている音楽だ。前作では、そうしたアカペラの可能性を活かし、落ちこぼれで風変わりな女子たちが大きな成果を上げるというサクセスストーリーを描いていた。続編となる本作では、ベラーズのアカペラ大会の優勝が継続していて、強豪グループとしての立ち位置から始まっている。しかし、どこか抜けているベラーズの性質は健在で、前作ファンとしては安堵する。
相変わらず下品全開で素晴らしい。失態がまさかの○部露出(笑)。女子力をカッコよさと捉えるのではなく、飾らないバイタリティーで見せているのがよい。登場人物の描き方に方向転換はなく、前作から経過した3年はそのまま、劇中の時間の経過になっている。大学1年の新入部員だった主人公たちは、後輩をもつ先輩になっており、インターンを経験するなど、将来を見据える段階に入っている。そうなると世代交代というワードも出てくるのだが、個人的にはもう少し彼女たちのキャンパスライフを見たいところだ。また、レギュラーメンバーに新加入し、世代交代の中心にくるヘイリー・ステインフェルドが物足りない。ドラマの「glee」並みにガチで歌が巧いキャストを出演させたほうが見応えがあった。歌唱力抜群のアナ・ケンドリックがいるのでなおさらそう思えてしまう。
前作の大ヒットを受けてか、前作までの国内のアカペラ大会が、本作では世界大会まで一気に拡大する。今回ベラーズのライバルとなるのは、ドイツ人のプロっぽいアカペラチーム「DSM」だ。そのクオリティ、パフォーマンスには隙がなく、わかりやすいほど完成度が高い。「相手に不足なし」と言いたいところではあるが、DSMはフィールドが違うという印象だ。DSMは個性の集合体というより、役割分担がなされた集合体である。DSMに魅力がないということではなく、本作で描かれていてきたアカペラの魅力とは別だ。異質で敵わぬ相手だからこそ、ベラーズの「我が道をゆく」スタイルに流れるわけだが、それにしても今回のベラーズのパフォーマンスは行儀よくまとまり過ぎている。前作のような破壊力が欲しい。「心を奪われました!」っていう解説がクサくて、らしくないのでは。
音楽パフォーマンスのカタルシスは、ルックスとのギャップによるところも大きい。前作におけるベラーズもそうだが、男子グループのトレブルメーカーズが良い例だ。イケメンじゃないのにパフォーマンスすれば、最高にクールだ。個人的に本作の一番のお気に入りは序盤のトレブルメーカーズのパフォーマンスだったりする。前作では、小さなキャンパスライフの中にアカペラ音楽が密着していたため、学生同士のアカペラ合戦が起こりやすく楽しかった。本作でも、別の形でアカペラ合戦が見られるわけだが、勝敗の付け方にキレがなく、高まる期待を超えることはなかった。あと、まったく別の話だが、ファットエイミーのボートのクダリは無駄に長すぎじゃないか(笑)。
おそらくストーリーの内容・構成が、ほとんど前作と変わらないのでパフォーマンス単体で比較をしてしまうのだと思う。いろいろと不足感はあったものの、迫力のパフォーマンスと、その魅せ方はさすがだ。前作では叶わなかった劇場鑑賞を、本作で堪能することができたし。やっぱミュージカルと劇場鑑賞の相性は良い。
後半に向けて笑いがやや失速していったが、エンドロールで嬉しいおまけ付き。アダム・デヴァイン演じるバンパーの大御所アーティストを巻き込んだ、はっちゃけぶりが楽しくニヤニヤしてしまった。
【65点】
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