
マーベルはズルい(笑)。アベンジャーズにアントマンもスパイダーマンも加えたら、面白いに決まってるじゃないか!
異種ヒーローの「共闘」から「対立」へと新たな機軸を打ち出した本作は、「キャプテン・アメリカ」の続編というよりも、良くも悪くも次作の「アベンジャーズ3(インフィニティ・ウォー)」に繋げる1本だった。全員参加の「お祭り」まではパーフェクト。クライマックスからラストの締め方にはいろんなモヤモヤが残って消化不良。トム・ホランド演じるスパイダーマンが期待以上の仕上がり。ヴィジョンがいつ間にか癒し系キャラになってる(笑)。
キャプテンアメリカ(キャップ)ことスティーブ・ロジャースと、アイアンマンことトニー・スタークは当初からアベンジャーズの中心人物だった。スポーツチームで例えれば、キャップがチームを先導するリーダーであり、アイアンマンが点取り屋のエースといったところか(ハルクも点取り屋だけど)。アベンジャーズにとってはどちらも欠けてはならない存在であるが、その個性は対照的であり、これまでもチームの方向性を巡って何度か摩擦が起きていた。で、本作はその2人の関係が埋められない溝として顕在化する。
これまでのアベンジャーズの戦いによって破壊された各国の都市では、その巻き添えによって一般市民が犠牲になっていたという事実が持ち上がる。先に公開されたDC映画と丸カブりの設定であり、現実感をもたせないことがマーベル映画の魅力でもあったので、やや違和感があったが一旦スルーすることに。本作でも一般市民の被害という問題をグッと引き寄せるために、過去作の振り返りだけでなく冒頭のアクションに事実として織り込ませたことで、コトの重大性を提示する。その結果「アベンジャーズに好き勝手やらせてよいのか?」という見直しの機運が高まり、アベンジャーズがこれまで通り独立性を保つか、それとも、アベンジャーズの活動を国連の管理下に置くか、の2択が迫られる。
そして、ロジャースは前者、スタークは後者を支持する。正しいと信じた組織の裏切りに見舞われてきた経験から、己の意思決定を信じているロジャースに対して、武器商人であった自身の過ちによってアイアンマンとなり、ウルトロンという怪物を生み出した過去を持つスタークだ。2人の判断の分裂は説得力があり、どちらの判断にも正義があるように見える。本作もそこは承知しているようで、最後までどっちが正しいという回答は出さない。2人の方向性の違いは、2人が対決するきっかけに留まる。2人の対決は観客を楽しませる最大の見せ場として用意された印象が強い。チームのメンバー配置はやや強引な部分もあるが、わざわざ綺麗に両チームを一列に並ばせるなど、「このお祭りを楽しんでくれ!」と言わんばかりの誘引にまんまと引っ掛かる。その祭りが最高に面白いもんだから仕方ない。
アクションシーンに関してはマーベル映画史上最高だ。前作「ウィンター・ソルジャー」に続いてのルッソ兄弟によるアクション演出は、引き続きパワフルかつ凄まじいキレ味をみせる。空中戦のみならず、地上戦においても空間を3次元に活用するカットが素晴らしく何度も唸される。「そこで終わり」と思ったら、まだ先があるという二重三重の仕掛けも堪らない。何という想像力か。前作でも圧巻だったアクションは本作ではさらなる進化を見せていて、両者の対決シーンで堪能することができる。目まぐるしく変化するアクションシーンの中にそれぞれのキャラの個性を活かしきることに成功。チーム内の流れるような連携プレーも鮮やかで、壮絶な戦いのなかにもユーモアを挟むことも忘れない。発奮して笑って驚いての波状攻撃に、ヨダレが止まらない。この対決シーンだけでも本作を観る価値があるというものだ。絶品。
対決要員として登場するアントマンとスパイダーマンが予想を大きく上回る活躍を見せてくれる。そのサービス精神に感謝である。アントマン最強説が浮上!?アベンジャーズに加入しても活躍してくれそうな気配がする。そしてディズニー資本のマーベル映画では初登場となるスパイダーマンも存在感を発揮する。「インポッシブル」以降、ファンとなっているトム・ホランドが見事にスパイダーマンの後継としてキマっている。未熟さゆえの楽観さがとてもチャーミングなキャラクターだ。兄貴分のアイアンマンと馬が合いそうな感じもする。また、アベンジャーズのどのメンバーにもない個性なので、チームのスパイスとして理想的な役割を担ってくれそうだ。単独作として製作されるスパイダーマンの新作にも期待がかかる。「美人過ぎる叔母さん」(笑)。
対決シーンまではノリノリで見ていたが、その後のクライマックスで持ち出される「復讐」で足止めをくらう。本作では正義と復讐は密着の関係にあり、本作のキーパーソンとなるブラックパンサーのモチベーションであったことからも、物語の終着点に復讐の連鎖を描くことは必然的にも思える。しかし、そのきっかけとなったスタークの両親の描き方が雑なため、憎しみの感情が湧いてこない。布石として最初の仮想映像でスタークの両親が紹介されるが、CGで作られた若い頃のスタークの気持ち悪さも手伝って、両親の存在が現実感のあるものとして落ちてこない。父ハワードはアイアンマン2で登場したジョン・スラッテリーのようだが、キャプテンアメリカの過去2作で登場したハワード(ドミニク・クーパー)の印象が強かったため違和感があった。両親とスタークの絆はもう少しきちんと観客に伝えるべきではなかったか。
また、「アベンジャーズ3」の監督をルッソ兄弟が続投するからか、解決されない事態を次作へ持ち越したことも不満。次作のサノス(たぶん)との最終決戦に向けて、助走から始めなければならないようだ。それが理由で2部作にするのであればガッカリ。
鑑賞後、自宅に戻り「ウィンター・ソルジャー」を再見する。キャップとバッキーの友情に再び感涙。この感覚を本作でも感じられたら良かったのにーと呟く。キャップの古風で情に厚い人柄がとても魅力的だ。キャップ演じるクリス・エヴァンスの顔立ちも美しく、美女とのキスシーンが絵になってしまう。齢90オーバーの男に訪れた久々の春に、バッキーとサムがとったリアクションにルッソ兄弟のセンスをみる。後半部分については不満が残ったものの、ルッソ兄弟に対する信頼は厚いままだ。
【70点】
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