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ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 【感想】

2018-09-17 08:00:00 | 映画


DVDスルーにならず安堵。ラストに胸が熱くなる。
ボルグとマッケンロー、1980年代、テニス界の人気をけん引した2人のスタープレイヤーが、グランドスラムの決勝で初めて対峙した試合を描く。リアルタイムで2人の試合を見たことはないけれど、テニスをかじっていたので、名前だけは何度も聞いたことがある。後で知ったことだが、本作で描かれるウィンブルドンの決勝戦は伝説的な熱戦として語り継がれているらしい。

「北欧の冷血とNYの悪童」。3歳違いでほぼ同世代だが、何もかもが対照的な2人だ。ストローク戦を得意とし、試合中どんな局面でも冷静沈着なボルグに対し、ボレーを得意とし、試合中、調子が悪くなると審判を批判し、周りに悪態を吐き散らかすマッケンロー。端正なルックスと垢ぬけないブサメン。コートの外に出ても紳士であるボルグは、ファンに対して神対応をみせる。好かれ者と嫌われ者であり、スポーツにおいてドラマになりやすい2人の個性だ。

映画も対極にある2人の構図を明確に打ち出しており、静寂と喧噪のシーンを2人のパートで出し分けている。邦題の「氷の男と炎の男」から、素直に「氷→ボルグ」「炎→マッケンロー」と位置付けるが、次第にその逆の風景が見えてくるのが、本作の面白いところだ。

明らかになるボルグの知られざる過去。彼がどのようにして現在(当時)のプレイスタイルに行き着いたのか。驚かされたと同時に、2人の巡り合わせに運命的なもの感じる。ボルグは「休火山」であり、内側にマグマのような感情を秘めている。恐れや怒りを体内にため込み、試合中の一打にそれを放出する。一方のマッケンローは、内側にたまった感情を外にそのまま吐き出すことで集中力に転換させている。ボルグはそんなマッケンローの稀有な才能を早々に見抜く。試合前の様子は逆であり、神経質になり周りの人間に当たるボルグに対し、1人静かに部屋に籠ってイメトレをするマッケンロー。互いの2面性をそれぞれが持ち合わす。

もう1つ印象的だったのは、頂点に立つ人間の孤独だ。舞台となる試合は、ボルグの5連覇がかかった試合でもあった。圧倒的王者であるボルグに対して、まだタイトルを獲ったことのない挑戦者のマッケンローである。追う者と追われる者。世界中のトップ選手が一同に集まるグランドスラムで勝ち続けることがどれだけの離れ業か。上には誰もいなく、空を掴む思いで試合に挑み、勝利しなければならない王者の使命は、計り知れないプレッシャーを伴う。ボルグがそうであるように「何も変えない」ルーティンに囚われるスポーツマンの動機を垣間見る。

試合は白熱する。なるほど、伝説といわれるワケである。テニスは肉体と精神の競技であることをまざまざと見せつける迫力の描写だ。負けたら終わりのトーナメントで優勝は奇跡に近いものだ。テニスのアクションシーンよりも2人の表情を追うショットが続く。個人的には、もっと俯瞰のショットでテニスのダイナミズムを感じたかったが、これは監督の明らかな狙いだろう。

マッケンローの動と静を見事に表現した、シャイア・ラブーフの熱演が素晴らしい。彼自身、ハリウッドのトラブルメーカーとして恥ずかしい過去をもっているだけに、本作のマッケンローとシンクロする場面があったと想像する。ラストの2人の再会シーン、生涯の友情の始まりを見届け、熱いものがこみ上げてきた。

劇場公開してくれた配給会社と興行会社に感謝。

【70点】


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