昨年、我が家も地デジ化した。
アンテナ工事費に45000円もかかり、いささか頭にきた。
しかし、今まで見れなかったチャンネルも映るようになったり、その恩恵は少なくない。
MXテレビが映るようになり、オセロの松嶋が出ている「未公開映画を観るTV」という番組を
たまたま観て、その中で紹介されていた一本、ドキュメンタリー映画「ビン・ラディンを探せ」
をTSUTAYAの新作レンタルで見つけ、観ることにした。
監督、出演は、モーガン・スパーロック。以前「スーパーサイズ・ミー」というドキュメンタリー映画で、
30日間、朝昼晩3食、ファーストフードを食い続けたら、人間の体はどうなるかという企画において、
自らが実験台となった男だ。
当時、私も公開時観に行ったが、そのガチンコぶりに驚いた。
本作は、その監督の新作であるが、意外や意外。
観終わって一つのヒューマンドラマを観たような感じだ。
本作はタイトルのとおり、監督であるスパーロックが同時多発テロの首謀者ビン・ラディンを探す話。
スパーロックの妻が妊娠し、新しい家族を迎えるにあたり、彼は子どもの安全を考えるようになる。
その中で大きな脅威となるのがテロ。世界の危険分子であるビン・ラディンを捕まえないことには、
テロの恐怖から逃れることはできない。「アメリカが捕まえられないのなら、俺が捕まえるのだ!」
ということで、スパーロックがエジプトを皮切りに、モロッコ、イスラエル、ヨルダン、サウジ、
そしてアフガニスタンとビン・ラディンが潜伏していそうな国々を駆け回る。
まあ、当たり前なのだが、ビン・ラディンを探すといっても見つかるわけもなく、
本作鼻っからビン・ラディンに近づくことを目的としているのではなく、ビン・ラディンの足跡を
追うことで見えてくる様々な実態を明らかにしていくというものだ。
知られざるアラブ諸国の貧富の差や、アラブ諸国の中でも異なる、宗教(イスラム教)と
政治の関わり方について。また特に興味深かったのは、独裁政権による人々の不満。
これは今まさにタイムリーである、エジプトのムバラク政権への暴動につながってたりする。
イスラム圏各国の社会情勢を知る上での、わかりやすい教科書だったりする。
しかし本作の魅力は、それらの事実を知る以上に実のあることだと私は感じた。
我々がニュースでよく見るイスラム圏では、「アメリカ地獄に堕ちろ!」と
ブッシュの写真を焼いて叫ぶ人や、9.11に対して「よくやった!」とテロを応援する人が
映像を通してクローズアップされる。
「アラーの名のもとに我々は聖戦に挑む」といったイスラム教を振りかざし、
自分たちを肯定するテロリストたち。
ある程度メディアが作り出した偶像なんだろうな。。。と思いながらも、
私も少なからず、イスラム教信者に対してあまり良い印象を持っていなかった。
しかし、本作を観ると、それは一方的な先入観であったことに気づかされる。
まず、どの国も穏やかな人たちばかりだ(ユダヤ人地区を除いて。。。)。
「アメリカは平和を愛する国だよ」とモーガン。
「じゃ、なぜ戦車でこの国に入ってくるの?」と現地の人。
「ビン・ラディンのことどう思う?」とモーガン。
「ビン・ラディン!?くたばっちまえ。いい迷惑だ。」と現地の人。
「自爆はイスラム教の教えに反すること。なので自爆テロ自体もイスラム教に反すること」
「(パレスチナ問題にふれ)我々はユダヤ教が憎いのではない。
ユダヤ人が我々アラブ人の土地も奪ったことが憎い」
「テロリストの多くは、天国に行くこと(宗教上の話)を目的としているが、
それ以上に貧しさから逃れるため、金目当てにやっている」
等々。。。。、
現地の人の生の声は、実にストレートで説得力と新たな発見に満ちている。
イスラム教に対して偏見を持っていた自分が少し恥ずかしくなった。
ドキュメンタリーは当然ながら作り手の意図によっていかようにでも脚色できるので、
実際のところ、ホントにそんな人たちだらけなのかはわからないが、どっちが多いか、
少ないかは本作では大きな問題ではなく、何よりお互いを知ることがまず大事なのだ、
ということが本作の最大のメッセージとしてあるのだ。
同じような突撃系のドキュメンタリー監督だと、マイケル・ムーアも有名だが、
スパーロックのよいところは、作り方がシンプルでわかりやすいこと。
そして彼自身が常識人であり、何より人が良いことだ。本作においても、
その人柄の良さが発揮され、人の区別なく小さな子どもからお爺ちゃんまで、
まさにその言葉とおり膝を突き合わせて話を聞いていく。
そこから、見えてきた一つの答えが万国共通の「家族愛」、
そして誰しも「子どもの明るい未来を願っていること」。
最後にスパーロックは帰国し、奥さんの出産に立ち会う。
スパーロックがアラブ諸国の旅を終え、そこから見えた希望と、新たな生命の誕生は、
明るい未来へと繋がっていくようで実に感動的だ。
エンドロールで、出会った各国の人たちの笑顔が印象的。
心地よい余韻に浸ることができた映画だった。
【70点】
アンテナ工事費に45000円もかかり、いささか頭にきた。
しかし、今まで見れなかったチャンネルも映るようになったり、その恩恵は少なくない。
MXテレビが映るようになり、オセロの松嶋が出ている「未公開映画を観るTV」という番組を
たまたま観て、その中で紹介されていた一本、ドキュメンタリー映画「ビン・ラディンを探せ」
をTSUTAYAの新作レンタルで見つけ、観ることにした。
監督、出演は、モーガン・スパーロック。以前「スーパーサイズ・ミー」というドキュメンタリー映画で、
30日間、朝昼晩3食、ファーストフードを食い続けたら、人間の体はどうなるかという企画において、
自らが実験台となった男だ。
当時、私も公開時観に行ったが、そのガチンコぶりに驚いた。
本作は、その監督の新作であるが、意外や意外。
観終わって一つのヒューマンドラマを観たような感じだ。
本作はタイトルのとおり、監督であるスパーロックが同時多発テロの首謀者ビン・ラディンを探す話。
スパーロックの妻が妊娠し、新しい家族を迎えるにあたり、彼は子どもの安全を考えるようになる。
その中で大きな脅威となるのがテロ。世界の危険分子であるビン・ラディンを捕まえないことには、
テロの恐怖から逃れることはできない。「アメリカが捕まえられないのなら、俺が捕まえるのだ!」
ということで、スパーロックがエジプトを皮切りに、モロッコ、イスラエル、ヨルダン、サウジ、
そしてアフガニスタンとビン・ラディンが潜伏していそうな国々を駆け回る。
まあ、当たり前なのだが、ビン・ラディンを探すといっても見つかるわけもなく、
本作鼻っからビン・ラディンに近づくことを目的としているのではなく、ビン・ラディンの足跡を
追うことで見えてくる様々な実態を明らかにしていくというものだ。
知られざるアラブ諸国の貧富の差や、アラブ諸国の中でも異なる、宗教(イスラム教)と
政治の関わり方について。また特に興味深かったのは、独裁政権による人々の不満。
これは今まさにタイムリーである、エジプトのムバラク政権への暴動につながってたりする。
イスラム圏各国の社会情勢を知る上での、わかりやすい教科書だったりする。
しかし本作の魅力は、それらの事実を知る以上に実のあることだと私は感じた。
我々がニュースでよく見るイスラム圏では、「アメリカ地獄に堕ちろ!」と
ブッシュの写真を焼いて叫ぶ人や、9.11に対して「よくやった!」とテロを応援する人が
映像を通してクローズアップされる。
「アラーの名のもとに我々は聖戦に挑む」といったイスラム教を振りかざし、
自分たちを肯定するテロリストたち。
ある程度メディアが作り出した偶像なんだろうな。。。と思いながらも、
私も少なからず、イスラム教信者に対してあまり良い印象を持っていなかった。
しかし、本作を観ると、それは一方的な先入観であったことに気づかされる。
まず、どの国も穏やかな人たちばかりだ(ユダヤ人地区を除いて。。。)。
「アメリカは平和を愛する国だよ」とモーガン。
「じゃ、なぜ戦車でこの国に入ってくるの?」と現地の人。
「ビン・ラディンのことどう思う?」とモーガン。
「ビン・ラディン!?くたばっちまえ。いい迷惑だ。」と現地の人。
「自爆はイスラム教の教えに反すること。なので自爆テロ自体もイスラム教に反すること」
「(パレスチナ問題にふれ)我々はユダヤ教が憎いのではない。
ユダヤ人が我々アラブ人の土地も奪ったことが憎い」
「テロリストの多くは、天国に行くこと(宗教上の話)を目的としているが、
それ以上に貧しさから逃れるため、金目当てにやっている」
等々。。。。、
現地の人の生の声は、実にストレートで説得力と新たな発見に満ちている。
イスラム教に対して偏見を持っていた自分が少し恥ずかしくなった。
ドキュメンタリーは当然ながら作り手の意図によっていかようにでも脚色できるので、
実際のところ、ホントにそんな人たちだらけなのかはわからないが、どっちが多いか、
少ないかは本作では大きな問題ではなく、何よりお互いを知ることがまず大事なのだ、
ということが本作の最大のメッセージとしてあるのだ。
同じような突撃系のドキュメンタリー監督だと、マイケル・ムーアも有名だが、
スパーロックのよいところは、作り方がシンプルでわかりやすいこと。
そして彼自身が常識人であり、何より人が良いことだ。本作においても、
その人柄の良さが発揮され、人の区別なく小さな子どもからお爺ちゃんまで、
まさにその言葉とおり膝を突き合わせて話を聞いていく。
そこから、見えてきた一つの答えが万国共通の「家族愛」、
そして誰しも「子どもの明るい未来を願っていること」。
最後にスパーロックは帰国し、奥さんの出産に立ち会う。
スパーロックがアラブ諸国の旅を終え、そこから見えた希望と、新たな生命の誕生は、
明るい未来へと繋がっていくようで実に感動的だ。
エンドロールで、出会った各国の人たちの笑顔が印象的。
心地よい余韻に浸ることができた映画だった。
【70点】
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