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キングコング: 髑髏島の巨神 【感想】

2017-04-01 08:00:00 | 映画


ザ・映画館ムービー。キングコングのスケールが素晴らしい。デカい、激しくデカい。夕日、炎、月光をバックにした巨体シルエットがカッコイイのなんの。なのに動きは俊敏で、ダイナミックな暴れっぷりがスクリーンに映える。「いかにキングコングを魅力的に見せるか」に賭け、オタク系と容易に想像できる監督の趣味が発揮されている。予想通りの大迫力なB級映画だったが、同臭の「パシフィック・リム」ほど振り切れたレベルには至らず。「大怪獣バトル」という触れ込みだったが、怪獣たちの対戦構図はピーター・ジャクソン版とあまり変わらなかった。製作費1.9億ドルであれば、もっといろんなことができたかも。サミュエル・L・ジャクソンは第二のキング・コングか。

1973年、新たなエネルギー資源を求めて未知の孤島に降り立った探検隊と、そこに住むキングコングとの出会いを描く。

のっけから出し惜しみなく、キングコングが登場。映画の主人公は、他ならぬキングコングであることを明示する。その全長はゴジラなみの巨大さで、猿人類の進化形ではなく、ゴリラの形をした「怪獣」である。

「巨神」と邦題にあるとおり、本作で登場するキングコングは島の守護神として登場する。人間たちがバカ丸出しで豊かな自然を爆破しまくると、キングコングが怒りの鉄拳をお見舞いする。その巨大さゆえに全貌が見えず、人間目線でキングコングの暴走を追いかけたショットが面白い。まるで遊園地のアトラクションのようだ。その後、キングコングの全景を捉え、小さなヘリコプターと大怪獣の空中バトルが繰り広げられる。キングコングは圧倒的な強さを見せ、ヘリコプターを全墜させた地上戦でも、容赦なく人間たちを踏みつぶしていく。なるほど怪獣映画だ。

キングコングは無作為に攻撃を仕掛けるわけでなく、島を破壊する者への戒めとして、または自身を攻撃する者への反撃として、攻撃を加える。キングコングが正義の味方であることはすぐに理解できる。

一方の人間側。探検隊を護衛する部隊はベトナム戦争の帰還兵で、それを率いる大佐はベトナム戦争の燃え尽き症候群になっている模様。新たに課せられたこの任務で虚無感を埋めようとしている。そこで起きたキングコングによる大量殺戮は、大佐の闘志に再び火を付けることになる。サミュエル・L・ジャクソンVSキング・コング。奇しくもゴリラ顔同士である、2人のメンチの斬り合いシーンが本作屈指の名シーン。その熱量と比べると、トム・ヒドルストンやブリー・ラーソンは重要な役割を担っているものの、本作における存在感はとても薄く、彼らの出演ギャラをキングコング側にもっと投入してほしいと思った。

キングコングの過去作は、ピーター・ジャクソン版しか見たことがないが、オリジナルに近い映画だったと聞く。そんな過去作と比べると、キングコングのスケールからして、全く別物の映画に仕上がっている。キングコングのモチベーションが、過去作ではヒロインに対するロマンスであったのに対して、本作ではストイックな島の守り神。本作のキングコングの方が男前である。しかし、内容は探検隊が未知の島で様々な生物と遭遇したり、キングコングは爬虫類系の巨大生物と戦うというもので、これはピータージャクソン版とあまり変わらない。もう1種類くらい新たな巨大怪獣を参戦させるなど、想定外の味付けが欲しかった。

本作で面白かったのはもう1つ。登場する巨大生物が「UMA発見!」な視点で描かれていること。何が出てもおかしくない手つかずの大自然のなかで、突如として巨大生物が出現する姿が壮観だ。水辺でキングコングの知られざる生体を陰ながら観察するシーンに、驚きと興奮を覚える(蛸!!)。劇中の探検隊が用いるカメラのファインダー越しに見えるキングコングがオツだ。昔、イエティを撮影したフィルムっぽい。

子どもと一緒に見たため泣く泣く吹替で鑑賞。わかっていたけど、トム・ヒドルストンの吹き替えやったガクトが酷すぎる。第一声で凍り付いた。セリフ量が少なかったことが不幸中の幸い。あと、もはや大規模映画は中国に頼らざるを得ないのか。本作でもしっかり中国資本が入っていて、いま流行の「そんたく(!?)」により中国人キャストが探検隊の中に入っている。

監督のジョーダン・ヴォート=ロバーツは若干32歳。いまいち、本作のどこに1.9億ドルものお金がかけられているのかわからないけど、誰もが無条件に楽しめる娯楽映画を作り出したのは確かなこと。デミアン・チャゼルと同い年のようであり、卓越した才能を持つ若手の台頭と、彼らにチャンスを与えるアメリカってやっぱりスゴいわ。

【65点】