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デッドプール 【感想】

2016-06-11 09:00:00 | 映画


デップー旋風がいよいよ日本に上陸。北米での絶賛評に胸を高鳴らせていたが、さすがに面白い。但し、予告編で観たまんまの映画だった(笑)。チャレンジングな破天荒キャラをミニマムな世界で自由に泳がせる。とても新鮮な作りだが、少々期待が大き過ぎたみたいだ。ヒーロー映画というよりは新ジャンルであるデップー映画だろう。

ストーリーは想像以上にシンプルだった。癌に侵された男がその命と引き換えに人体実験の対象になる。それはミュータントのDNAを普通の人間の体に注入するというもので、その過程で男は見るも無残な醜い姿に変えられてしまう。結果、超人的な能力(再生能力)を身に付けるが、自分を実験台にした男に復讐のため、そして愛する恋人を助けるために大暴れするという話だ。

オープニングのテロップで、いきなり「おバカ映画の始まりです」と来る。狙いは明白だ。その後も「役立たずの○○」など、製作者クレジットをいじり倒すジョークが矢継ぎ早に流れる。最初はニヤニヤするが、あまりの連打に「笑いを欲しがってるな~」といささか冷める。その調子は最後まで貫かれる。ノー天気で下品で過激。本作は主人公デッドプールの個性にそれが集約される。

デッドプールの動機はすべてパーソナルなものだ。人体実験による展開は「聞いてないよ~」であったが、元はといえば自分から飛びこんでいったことだ。想定していたであろう多少のリスクが、醜い姿に変えられたということで激しい怒りに変わる。元のハンサムな自分に戻してほしいために敵を追いかけまわし、それを嫌がった敵が主人公の恋人を誘拐すると、今度は誘拐された恋人を救出しようとする。恋人との恋愛関係含め、結局は自分のためにしたことであり、他のヒーロー映画とはキャラの位置づけがそもそも違う。なので「ヒーロー像を破壊した」という前評判にあった表現には違和感がある。

それにしてもデッドプールのマシンガントークが止まらない。普段より、ジョークを飛ばしまくっている人にノレない自分は仲良くなれそうにないタイプだ。タクシーの運転手とのクダリも、デップーの無責任な個性を何度も上塗りしているだけのようであまり笑えない。デッドプールの口から直接発せられるジョークの中身よりも、そこかしこに潜んでいる、これまでのヒーロー映画へのツッコミや、映画ネタのイジリがツボに入る。ステレオタイプのヒーローとして登場するコロッサスの存在がデッドプールの個性を一層際立たせる。「赦すことが正義」とデッドプールを諭すコロッサスの配置に、監督の悪意が見えて面白い。

また、デップーと恋人とのラブストーリーがシンプルかつストレートで良い。激しい恋に落ちて、激しい肉体関係で結ばれる。不治の病によって男は去り、女は男を想う。そして救出劇をもって再会し、再び結ばれる。お下劣な作風のなかに純度の高いラブロマンスが展開し、意外にもクラシカルな匂いがする物語だった。「ホームランド」で知的な人妻だったモリーナ・バッカリンがデップーの恋人役を演じていたが、ほどよいビッチ臭が堪らなかった。

アクションシーンは、製作予算の少なさを特殊効果と演出面でカバーしている。アクロバティックでサディスティックなデップーアクションはなかなか新鮮であったが、ドラゴンボール並みのアクションを見せるコロッサスとネガソニックを目の前にしてはスケール感の落差が否めない。デップーと雌雄を決する敵役の個性も、もう少し遊ばせてくれても良かったかも。

普通に面白い映画だったが、小ネタ以外は想像していた通りの映画だった。世界で大ヒットしてくれたので、続編では潤沢な製作費のもと、自由度はそのままに、もっといろんな表情を見せてほしいと思う。

【65点】
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