イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝54

2013年11月07日 | 預言者伝関連
166.英知あるハーリドの指揮:
  アブドゥッラー・イブン・ラワーハの殉教後、人々はハーリドをリーダーに選びました。ハーリドは旗を手に取り、軍勢の中に突っ込んでいきました。彼は勇敢で英知のある人物で、戦術にも長けていました。戦いは続き、イスラーム軍は南方へ寄り、敵軍は北方へ引き下がっていきました。夜が更けて人々が散っていくことで、両軍ともに安全を得られたことから、戦いを続けないことに利益があると両方が考えました。

  マハムード・シート・ハッターブ少将(محمود شيت خطاب)が言った通り、撤退作戦は、軍事作戦の中でも最も困難なものの一つです。なぜなら撤退することが敗北につながる可能性があるからです。また敗北は、敗北側に莫大な損失をもたらす災難となります。しかし、ローマ勢力に与えることのできた軍事効果や、後にムスリムたちが参加する数ある戦いにおいて現れた敵に対する影響力を見れば、ムスリムたちの微々たる損失など無かったにも等しいと言えるでしょう。

  ハーリドは少ないとはいえない数の男を軍の後尾に配置し、彼らは人々が朝を迎えたときに大きな騒ぎを起こしました。そうすることで敵たちの心の中に、マディーナから援軍がやって来たとの恐れの気持ちを投げ込んだのです。ローマ軍はムスリムたちを恐れ、言いました:たったの3000人が自分らにこんなことをしでかしたのだから、彼らに数もその強さも分からない援軍などでも来たらいったいどうなるのか、と。そのためローマ軍はムスリム軍を襲うことをためらう結果となりました。このような形でアッラーは信徒たちに戦いを停止し給うたのでした。

167.不可視の知らせを得る預言者(祝福と平安あれ):
  ムスリムたちが戦っていた最中、マディーナにいたアッラーの使徒(祝福と平安あれ)はムウタの戦いで起きていることを教友たちに知らせていました。アナス・イブン・マーリクは次のように言いました:アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はザイドとジャアファルとイブン・ラワーハの死の知らせが届く前に人々に知らせました。彼は言われました:ザイドが旗を取って、殉教し、次にジャアファルがそれを取って殉教し、次にイブン・ラワーハがそれを取って殉教した、と。彼の両目からは、アッラーの刀のうちの刀(つまりハーリド)が旗を取るまで、そしてアッラーが勝利を与え給うたまで涙が溢れ続けました。

  他の伝承では彼が説教壇の上で次のように言われたとあります:《(殉教した)彼らはわれわれと共にいることを幸せに思わない》。(つまり、殉教して楽園に行けて彼らは幸せである、という意味)

168.翼を持つ飛ぶ人:
  またアッラーの使徒(祝福と平安あれ)はジャアファルに関して言われました:アッラーは彼の両手を翼に変え給い、彼はそれで楽園の中を望むままに飛ぶ、と。そのため、「飛ぶ人・ジャアファル」や「翼の主」というニックネームが付けられました。

169.預言者の愛と人間的感情:
  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はジャアファルの妻に言われました:ジャアファルの二人の息子を連れて来てください。彼らが連れて来られると、抱き寄せてその香りをかぎました。すると彼の両目から涙が溢れました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はそのときにジャアファルの死を知らせを受けました。ジャアファルの親族に悲報が訪れると、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はご自身の家族に言われました:ジャアファルの家族に食事を作りなさい。彼らのもとに、彼らを忙しくさせる出来事が起きたためです、と。その時のアッラーの使徒(祝福と平安あれ)のお顔からは、悲しみが表れていました。

170.繰り返す者たちであり、逃げる者たちではない:
  イスラーム軍がマディーナ周辺に近付くと、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)と信徒たちが出迎え、子供たちも一緒に出迎えました。アッラーの使徒は人々とともに乗り物に乗っていました。彼は人々に言われました:子供たちを抱いて連れて行くように。そして私にはジャアファルの息子を連れて来てください。ジャアファルの息子、アブドゥッラーが連れて来られると彼は子供をその両手で抱きあげました。

  出迎えた人々は、戻って来たイスラーム軍に土を放り投げながら、逃げて来たのか!おまえたちはアッラーの道から逃げてきたのだ、と彼らを責めました。しかしアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は言われました:彼らは逃げる者たちではない。至高なるアッラーが御望みであれば、彼らは繰り返す者たちである。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P326~328)
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