イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝34

2012年05月08日 | 預言者伝関連

ヒジュラ暦5年シャウワール月
115.塹壕(ざんごう / ハンダク)※、あるいは部族連合軍(アル=アハザーブ)の戦:

  ヒジュラ暦5年のシャウワール月にハンダクの戦は起きました。この戦は、イスラームとムスリムたちの歴史に大きな影響を残し、イスラーム宣教の行方を決定する重要な出来事の一つでありました。またこの激戦は、信徒たちにとって今までに受けたことのないほどの厳しい試練でもありました。
  「おまえ達の上から、そして、おまえ達の下から彼らがおまえ達の元にやって来た時。そして目は逸れ(正視できず)、また心は喉許に達し、おまえたちがアッラーについてさまざまな思いで邪推した時。そこで信仰者たちは試みられ、また激しい揺れで揺さぶられた。」(クルアーン33章10-11節)

  戦が起きたきっかけはユダヤ教徒たちでした。アン=ナディール族の一部とワーイル族の一部が、マッカのクライシュのところにやって来て、アッラーの使徒(平安と祝福あれ)との戦いを提案したのです。しかしクライシュはアッラーの使徒(平安と祝福あれ)たちとの戦いで受けた苦しみを既に味わっていたため、あらたにムスリムたちと戦いを交える機会を出来るだけ避けたがるのでした。それでもユダヤ教徒の使節は、クライシュにムスリムたちと戦うよう説得し、言いました:ムハンマドが滅んでしまうまで、私たちもあなたたちと一緒に戦いましょう。この言葉を聞いて喜んだクライシュは、戦うことを受け入れ、乗り気になりました。提案に合意した後に、使節は帰っていきました。次に使節達はガタファーン族を訪れ、同じくムスリムたちとの戦いに誘い、他の部族にも、クライシュの同意を得たマディーナを襲う計画に賛同しないかと声をかけて行きました。

  そして最終的に、軍事における合意が成立しました。その主要なメンバーは、クライシュとユダヤ教徒たちとガタファーンで、諸条件において合意していました。その一つが:連合軍にガタファーンから6000人の戦士を参加させる代わりに、ユダヤ教徒たちはガタファーンの人々に、ハイバルで収穫されるナツメヤシを一年分支給する、というものでした。クライシュからは4000人の戦士を、ガタファーンからは6000人の戦士を、合計で10000人の戦士が準備されました。そして軍の指揮はアブー・スフヤーンに委ねられました。

116.英知とは信者が常に探し求めているもの:
  アッラーの使徒(平安と祝福あれ)は、敵たちが連合軍となってマディーナに向かって来ていることを知ると、すぐに戦うための準備を始め、マディーナに残りマディーナを守ることを決めました。この時、ムスリム軍側には、3000人程度の戦士しかいませんでした。

  そこで教友の一人であるペルシャ人、サルマーンが、マディーナの周りに塹壕(ざんごう:戦いにおいて敵から身を守るために陣地の周りに掘る穴または溝)を掘ることを提案しました。これはペルシャでは頻繁に使われていた戦術だったのです。サルマーンは言いました。:アッラーの使徒さま!ペルシャの地では、敵軍を恐れる時に塹壕を掘ります。

アッラーの使徒(平安と祝福あれ)はサルマーンのアイディアを採り、マディーナ北西部の、敵が侵入しやすい露わになった部分に塹壕を掘るよう命じました。アッラーの使徒(平安と祝福あれ)は、塹壕作りを教友らに割り当てて、各10人毎に20mほど掘らせました。完成した塹壕の全長は約2.5km、深さは約3.5mから5m、幅は約4.5mかそれ以上ありました。

117.ムスリム間における公平と励まし合いの精神:
  アッラーの使徒(平安と祝福あれ)も塹壕作りに参加しました。そうすることで信徒たちにやる気を起こすためです。当時とても寒く、食料は少なく、やっと飢えをしのげる程度の物しかないか、何もないこともありました。

  アブー・タルハは言っています:私たちはアッラーの使徒様(平安と祝福あれ)に空腹を訴えました。服をめくると、私たちそれぞれの腹の上には(空腹の胃痛を和らげるための)石が一つ置かれていましたが、アッラーの使徒様(平安と祝福あれ)が服をめくられると、石が二つも置かれていました。

  皆、幸せを感じ、アッラーを讃え、文句ひとつ言わずに作業に専念しました。アナスは言っています:アッラーの使徒様(平安と祝福あれ)が塹壕に出かけられると、ムハージルーンとアンサールが寒さの厳しい早朝から、塹壕を掘っていました。彼らには彼らの代わりに掘ってくれる奴隷などおりませんでした。アッラーの使徒様(平安と祝福あれ)が教友たちの喉の渇きと空腹をご覧になると、次のように言われました:
  アッラーよ、本当の生活は来世の生活。それゆえアンサールとムハージルを赦し給え。
  人々は彼に応えて言いました。:
  我らこそ、命ある限り聖戦に参加すると、ムハンマドに宣誓した者たち。

(参考文献:「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P247~250など)