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No645万田監督を迎え『UNloved』をめぐるフリーディスカッション(後半)

ディスカッション中、
とても自然体で、わかりやすく答えてくれる万田監督。
知的なたたずまいが、とても魅力的で、
ときに、監督自身くすりと笑ったり、
会場からも笑いがあふれたりもしました。
とても興味深い内容で、居心地もよく、落ち着きました。

さて、後半です。

Q:ファーストシーンでは、
光子が外に手を差し出して雨の降り具合を確かめる。
映画のラスト、光子と下川の手が組み合わせられる。

A:外に手を出して雨を確かめるのは僕自身の日常的な動作。
ファーストシーンをどうしようかという時に、
脚本では、光子が合羽を着て仕事しに出て行くとなっていたので、
最初を雨を確かめるショットにしようと思いついた。
映画のいろんな箇所で手が出てくるし、
現場でも手を撮っていった。
ラストシーンについても、撮りながらイメージが決まっていった。

できあがってみると、
雨の降り具合をみている手が、
誰か握ってくれる相手を探している手、待っている手として示され、
最後に、パートナーの手と結ばれるというイメージになった。

Q:監督は「物語が停滞すること」を恐れていないように思う。
停滞についての考えは?

A:停滞が必然なら問題ないが、
停滞のための停滞、
停滞そのものだけをみせるのは避けたい。
ドラマが進まずに座り込んでしまい次の言葉も出てこないというのが
必要で、効果的な場合ならいいと思う。

もう一つは、停滞はつくり手にとっては怖いこと。
『UNloved』では、僕自身は、特に停滞は意識していない。
もし停滞を感じるなら、
僕のやりたいことと出来上がったものとの間に
まだまだ落差があるということ。

ただ、つくり手がやりたいことを100%できたら
映画もおもしろくなる、というわけでもない。
つくり手が思ってもみないことが無意識のうちに出ていて、
それを観客に指摘されることもあるし、
僕自身にそういう志向性があるのかもしれない。
Q:停滞するシーンをあえて入れているじゃないですか?
A:あえて入れているわけじゃない。
Q:ただ、僕はそのシーンが好きなんですが。
A:僕の意図とは全く別のところで、
映画というのは「観る人自身が同時に映画をつくっていく」ということ。

Q:この映画が撮られた2001年は
仲村トオルの黄金期の第一歩と思う。彼の魅力について?

A:当初キャストとして45歳前後を想定していたが、
予算・スケジュールの都合がつく役者がみつからず、
年齢を下げて、当時33歳くらいだった仲村さんの写真をみて、
妻がこの人がいいと言った。
シナリオを読んでもらって
「ご本人もやりたい」と言ってくれて、顔合わせをした。

仲村さんは無精ひげをはやし、ラフな格好で、
めちゃくちゃかっこよかった。
最初に会って、一発で決めたし、仲村さんのファンになった。
そのとき仲村さんが持ってきていた台本に
付箋がすごくたくさん貼ってあって、
「こんなに聞かれるのか」と驚いたが、
話をしていてもなかなか台本のことを聞いてこない。
ただ最初に、
「今回の脚本を不思議に思われたかもしれない。
通常の台本とは違って、セリフも多く、
情感の一切ないセリフのかけあいに危惧されたかもしれないが、
それこそが僕のやりたいことで、
今まで日本映画でなかったことをやりたい」と
話してはいた。
だから、最後に、仲村さんに
「付箋のあるところについて聞かなくてよかったですか?」
と尋ねたら
「最初のお話を聞いて、すべてわかったので大丈夫です」
と答えて帰っていった。
こちらに信頼感を持ってくれたと思ったし、
そのときの出会いがよかった。
現場でも、すごくおもしろがってやってくれたし、
こちらが望む以上にやってくれた。
僕のイメージに沿って、さらに膨らませて芝居する、
ぐらいに乗ってやってくれた。

質疑は以上です。
私も質問したかったんですが、
勇気がなく、具体的な場面に即した質問を組み立てられず、
次回チャンスがあれば、ぜひ頑張りたいです。
私の理解不足の箇所もあると思いますが
どうぞご容赦ください。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (ゆるり)
2010-11-25 15:01:36
こんにちは。久しぶりにお邪魔いたします。

万田邦敏監督の作品は初めて観たのですが、
色々と面白かったです。
上映後、どんな質疑応答が行われたのかすごく気になっていたので、
こちらで拝見させていただき、嬉しく思います。

個人的には、女性が主体で書いた脚本という印象が強かったです。ちょっと理屈っぽいところなんかが(それが結構好きなんですけど)。
機会があれが「接吻」も見てみたいなと思います。
 
 
 
ゆるりさんへ (パラパラ)
2010-11-26 00:58:41
お久しぶりです。コメントありがとうございます。
監督がディスカッションで言われていたとおり、『接吻』のほうが、とっつきやすい作品になっていますので、ぜひご覧ください!ますます万田監督ワールドに引き込まれるかもしれません。
 
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