goo

No1018-2『白夜』~恋する者の切なさが夜の街をさまよう~

「誰よりも自分よりも愛しているんだね」
 1年前に再会する約束をした恋人を忘れられないでいるマルトに
ジャックが言うセリフ。

日曜日の最終回、ガーデンで2回目の鑑賞。

マルトとジャックが二人で並んで歩いていくと、
音楽が聴こえてくる。
セーヌ川をゆっくりと進んでくる夜の遊覧船が映り、
その上で、演奏している若者たち。
ラテン調の哀しげな調べ。
ライトアップした美しい船が進んでいく。
音楽のテンポと、船がゆっくりと進むスピードとが、
ぴたりと合っているようで、それも、このシーンの
美しさを際立たせているような気がした。

映画の中で、音楽を演奏しているグループが4つほど映るが、
どれも、まず、二人の耳にその音楽が聴こえてくるシーンを
映してから、演奏している若者たちへとカメラが変わる。
二人がパリの街を歩いている寂しさ、こころもとなさと
音楽の寂しさが重なりあう。

マルトは、約束の時間になっても現れない恋人に
ふられてしまったと悲しむ。

鼻筋のきりりと整った美しいマルト。
はかなげできゃしゃな姿に、ジャックが惚れないはずがない。
傷心のマルトを慰め、恋人が現れるまで毎晩会おうと約束する。
映画はこのわずか4つの夜を描く。

この4夜が、観ていてかぎりなく心地よく思えるのは、
マルトの美しい存在感のせいだけではない。
夜のパリの街の空気が伝わる見事なカメラ。

ジャックはマルトに恋し
でも、マルトは、昔の恋人のことをずっと想っている。
二人がささやく言葉は、どれも、
その一瞬においては、真実。

マルトに夢中になるジャック。
ひとりで、夢想するジャックが、切なくも、愛らしくもあり、
多分、恋する者は、みな、声にだすかどうかは別として、
夢みるところは、同じなのだろう。
ジャックは、かなり変な青年だけれど、限りなく共感してしまう。

最初、ジャックのことが描かれるが、
街で美しい女性をみかけては、
すぐ恋をしてしまい、
美人をみつけては、その後ろを追いかけ、
また別の美人をみつけては、後を追う、という場面は
思わず、苦笑してしまった。
でも、きれいな女性が好きという、
男の子の本音に正直な行動かもしれない。

まるで夢のような4夜だからこそ、
はかなく切なくも、きっとジャックの胸に強く残るように
観客の胸にも、忘れられない作品になるにちがいない。

前回観たときの感想No1018

 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« No1035-1『真... No1035-2『真... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。