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No1035-2『真昼の暴動』~権力に決して屈しない男たちの熱い闘い~

脱獄ものの映画には、はずれがないという。
監視、管理する所長や看守といった権力者を相手に、
知恵と経験と、不屈の根性、仲間同士の信頼を武器に、
圧倒的に不利な戦に、あえて挑戦する。
そんな囚人たちの勇気と闘志に、限りなく共感する。

脱獄も、成功することもあれば、失敗することだってある。
逃げのびた仲間の中にも、とらえられたり、だましうちにあう者もいる。
映画はいろいろな結末を用意する。
たとえ失敗したとしても、脱獄ものの映画は、自由を求める男たちの魂を伝え、
勇気とプライドと、決して屈しない根性を教えてくれる。

本作も、そんな脱獄ものの1本。
結末は観てのお楽しみに。

以下内容に少し踏み込んでいますので、
未見の方は、映画をご覧の上、お読みください。

 

**************

 

冒頭の導入がすばらしいことは、
前回のブログNo1035-1ですでに書いた。
刑務所の全景がうつり、カメラが建物の中に入ると、
メインのキャストが入っている房がうつる。
彼らはみな、窓から外を眺めている。
下水道で働かされて体を壊し、
病で命を落とした囚人仲間が遺体となって、雨の中、刑務所を出ていく。
囚人たちの会話から、いかに厳しいしごきがあるのか、
裏切者がいたことがわかってくる。

脱獄しようとする者たちは、いかに計画の秘密を守るか、
看守長の側は、いかに囚人の中にスパイを仕立てて、秘密をききだすか、
その戦いになる。
看守長に脱獄の計画が漏れることなく、無事に実行に移せるのか、
予期せぬ展開に、ますます、のめりこむ。

締め付けをどんどん厳しくしていく看守長の仕打ちに、
囚人たちは、怒りを募らせていく。そして、我慢の限界に達する…。
看守長を演じるのが、ヒューム・クローニンで、本当に憎らしい、残忍な役柄で、適役。

主人公ジョーたちは、
房がちがい、考え方も異なる、刑務所の古株のギャグニーと手を結ぶ。
このあたりから、がぜん、盛り上がってくる。
双方をいったりきたりして、連絡役をするのは、
なんと刑務所内で新聞を発行しているルイ。
記事の取材のためと称して、あちこちへ出入りする。
彼は、ギャグニーの片腕的な存在で、双方をとりもつ。
私は、サム・レヴィーン演じるルイに涙した。
いつも、にこにこして、身も軽く、あちこちを駆けまわっている。
チャールス・ビックフォード演じるギャグニーもいい。

拷問も、痛めつける場面そのものをほとんど見せないと、よけいに怖い。
看守長が、美しいクラシックが鳴り響く中、窓のブラインドを閉めて、
不気味な笑顔で近寄ってくる、
それだけで十分。
少しの間のあと、「これで、帰してやる」と、しばりつけた縄が解かれる…、
ああ、よかった、命が助かった、と心底ほっとした。

しかし、彼のその後を、医者がジョーにささやく声で、聞かされた時、
悲しみでいっぱいになり、看守長への驚きと怒りは倍増した。

逆転満塁ホームランでも打たないかぎり、絶対負けとわかっていても、
試合を続けるのか、
あるいは、圧倒的に不利な状況に屈するのか。
決断を迫られるジョー演じる、バート・ランカスターの
見事な判断力、推理力もみどころ。

ジョーたちが看守塔の裏側から、下水道を上がって襲いかかる試みと
ギャグニーたちが、看守塔の正面側の広場から襲う試み、
双方からのはさみうちが計画される。
でも、ジョーもギャグニーも、お互いに状況の連絡ができないまま、
不安を抱きながらも、互いを信頼して、計画どおりにつっこむ。
このあたりの心理描写もいい。
おもわず前のめりになるような、手に汗にぎる展開。

映画の冒頭で、刑務所の門の上につくられた看守塔が
映像にとらえられる。
機関銃がしつらえられ、決して脱獄をさせまいと威容を誇っているかのよう。

まさにタイトルどおり、脱獄計画は、真昼に計画される。

脱獄の試みに、
何百人もの囚人たちの看守長へのブーイングが重なる。
その迫力のまま、ドラマは、クライマックスへとつっぱしる。
負けを覚悟で一発に賭け、命を捨てて飛び込むギャグニー親父。

連絡もできない相手側が奮闘する姿を粋に感じて、自らも奮闘する囚人同士の熱い信頼。
スパイという裏切りの行為と対照的に、仲間の絆が浮かび上がる。

看守相手に、必死で戦う姿は、そのまま彼らの生き様として、画面からあふれだし、
観る者を圧倒する。
脱獄もののおもしろさを超えて、ただ、男たちの戦う姿に涙する。

アート・スミス演じる、ウォルターズ老医師がいい味を出している。 
生きてなきゃだめだ、でも、脱獄し自由を求める思いは決して消え去ることはない。
本当に“熱い映画”。

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