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No789『大鹿村騒動記』~原田さん、歌舞伎舞台に立つ~

原田さんの遺作をスクリーンで観ようと中高年齢の方々が駆けつけ、
杖をついたおばあちゃんが結構、目についた。
きっと映画館で映画を観るのも久々なのだろう。
隣のおばちゃんたち3人は、結構、これは、というシーンのたびに
しゃべったりしてたのだが、
それも、大鹿村の歌舞伎のノリ。

原田さんは、やっぱり、あの独特なしゃがれ声といい、
アウトローが似合う。
『奇跡』でもそうだったけど、
定年退職して自転車置場で監視の仕事しながら、
おっちゃん(おじいちゃん)ばかりで集まって、
だべっていても、どこか、この人は、平凡でない人生を送ってきたような
貫禄を感じさせる。
こうい人をツワモノというのだろう。
それでいて、冷たい感じがなく、暖かい。そこはかとない人間味…。

本作でも、奥さんに駆け落ちされた後も
何十年も山奥で、淡々と、ひとり生きてきた重みが感じられ、味がある。
舞台の立ち姿、声のすてきなこと。
前半の、どたばた具合やら、照れ具合、シャイな感じも楽しいが
歌舞伎のシーンがすてきだ。
石橋蓮司もいい。

そういえば、昨日NHKで追悼放映された「火の魚」というTVドラマ。
室生犀星原作を
ジョゼの渡辺あやさんが脚本
原田さんは、老齢で、故郷の島に戻った流行小説家の役。
訪ねてくる編集者に、尾野真千子。

尾野の、およそ愛想のない、つっけんどんなもの言いや態度が
心に残り、すごくいいドラマだった。

不器用で、身勝手で、照れ屋で、プライドが高く、へんくつで
でも、とても優しくて、孤独で、
そういう役が、すごく原田さんに似合っていた。
というか、原田さんだから、心に入ってくるのだろう。

味があって、一筋縄ではいかない。
すごくハートフルな、あたたかいものを内に秘めていて
ユーモアもあって、でも、
背中にすごい孤独というか、寂しさを背負ってる。
それが、実人生に裏打ちされてるから、心の奥深くまで入ってくる。
多分、原田さんだから、という作品が、どれだけあるだろう。
明日からは、シネ・ヌーヴォで、
反原発×映画特集がモーニングショーで始まり
『原子力戦争』『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』で
原田さんが大活躍。
きっと、週末は、いっぱいのお客さんで埋まるような気がする。
皆で一緒に、原田さんの勇姿を見つめ、偲びたい。

ちなみに「火の魚」は、
講談社文芸文庫『蜜のあわれ われはうたえどもやぶれかぶれ』に
収録されているそうです。ちょっと読みたくなりました。

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